生まれたけど何か変なんですが41
かまいたちのように不可視な攻撃、恐らく低レベルの魔法を見えないようにしてるんだと思うんだけど、思いついた対処法をとりあえず試してみることにした
ひとつは風自体を結界で防いでしまうやり方
幸いにもそこまで威力がないこの攻撃、目には見えないけど結界を張りっぱなしにして防げば呪いも関係ないんじゃないかな?
それからこちらも風魔法を放って打ち消す方法
これなら攻防一体で相手もそう簡単に次の攻撃へ繋げれなくなる
他にも一気に接近して魔法を使わせないとか、風の届かない遠距離からこちらの魔法で応戦とか
でも問題なのは何でこんな威力のない攻撃しかしてこないのかってことなのよね
普通に倒すなら一番低レベルの魔法なんて使わないはずじゃない?
いったいあの銀色の子は何を考えているのかしら?
表情は無表情で本当に何を考えてるのか分からないし、こっちが結界を張ってるって言うのに相変わらずかまいたちのように見えない風をこちらに撃ち続けている
「だ、大丈夫なのアスティラ!?」
「ええ、数は多いですがそこまで大した魔法を使ってきていないのが幸いです」
「とにかくあの怒涛の魔法をどうやって止めるか考えないと」
ソル君が私の結界内から火魔法を撃ち、それに続いてフレアも火魔法を撃った
二人の息はぴったり合っていてその勢いもあの銀色の子に負けていない
これなら押し返せる
私もその攻撃に加わってさらに激しく反撃すると、だんだん風魔法による攻撃は押されていって彼女に火魔法が当たり始めた
驚いたことに彼女は火魔法が当たっているにも関わらず、火傷も気にせずまだ攻撃を続けていた
そのせいか、可愛い顔がただれ始めていた
「あの子、何かおかしい。顔なんて火傷したらひるんだり一旦魔法をやめるのが普通じゃない?」
「確かにおかしいですね。フレア、ソル、少し攻撃を任せてもいいですか?」
「う、うん、でもアスティラはどうす…。まさかあの中に向かっていく気じゃ?」
「私一人ならあの風魔法もどうとでも出来ます」
「そりゃそうかもしれないけど…」
「大丈夫です」
「分かったわ。気を付けて」
フレアとソル君にこの場を任せて私は風魔法吹き荒れる中を飛び出した
途端に皮膚を切り裂かれて血が流れるけど、切られた直後から再生のスキルであっという間に回復させていく
これならいくら傷つこうとも問題ない
走って銀色の子と一気に間合いを詰めると彼女の胸ぐらをつかんで地面に引き倒した
背中をしこたま打ち付けたので息ができなくなり、さすがに呪文を唱えれずに魔法が中断される
そして彼女の眼を見て気が付いた
彼女は恐らく操られている
多分洗脳系スキルで操作されてるから、私のスキルで彼女の洗脳を相殺してみた
すると目に生気が戻り、私を見てぎょっとしたあと顔の火傷に気づいてのたうち回り始めた
「痛い! 痛い痛い痛いよぉおおお!! 助けてぇお母さああん!! アアアアアア!!」
「じっとして、すぐに治してあげるから」
彼女にそう告げると回復魔法で彼女の火傷を治療した
あっという間にケロイドは回復して元通りの綺麗な顔立ちに戻る
かなり混乱しているみたいで、自分の体と私の顔を交互に見ていた
「私、私、ここ、なんで…。アルヴェスラにいたはずなのに。お母さん! お母さんはどこなの?」
スンスンと泣き始めた彼女を私は抱きしめる
「大丈夫、この戦いが終わったらお家に返してあげるから、ね? それまでこっちで待ってて」
「う、うん、お姉ちゃんは誰? 魔族、なの?」
「ええ、大丈夫よ。絶対守ってあげるから」
「う、うん」
ひとまず彼女を抱えて結界まで戻るとソル君とフレアに彼女を任せた
「この子をお願い。どうやら操られてたみたいで混乱してるの。これをあげて」
「飴? 分かったわ。この子は任せて。お名前、言えるかな?」
「うん、私イヴェナ。東の森のフェノンナの娘で、木の実を取りに行ってたら、急に眠たくなってそれで」
また泣き始めたので飴をあげて私は後を二人に託して私は別の戦闘へと向かった
次に来たのは幹部でありアルタイルのお父さんのベガさん、それからミュゼさんが戦っている場所へ来た
ミュゼさんというのは私達三大公爵家の一つ、バララシフタ家の一人娘で、私とアルタイルの十歳上のお姉さん
双剣で戦う武闘派でありながら非常におっとりとした性格なので、普段と戦うときとであまりにも性格に差がある人
で、そんな二人が戦っているのはまるでゾンビのような姿の男
見たところ二人がいくら攻撃してもまるで関していないかのように、ただ周囲を破壊するように暴れているだけに見える
二人もあまりにひるまない男に苦戦してるみたい
「くそ、ミュゼ、首を落とすから援護を!」
「はい~」
ミュゼさんは素早くゾンビ男に近づくと双剣で素早く優雅に斬りつけ始めた
普段のあのおっとりさからは想像もつかないほどの速さね
相手の方は腕と足の健を切り裂かれて思うように動けなくなってる
そこをベガさんが剣で首を落とした
「よし、得体の知れん相手だったがこうなれば動けまい。ミュゼ、生徒を守るぞ」
「ええ~、わたくしは~あちらに…。ベガさん、あ、あれ?」
私とベガさんは目を見開いて驚いた
ミュゼさんの上半身と下半身が分かれ、臓腑が飛び出して倒れた
「ミュゼ!」
「ミュゼさん!」
私はすぐに駆け寄って最大限の回復魔法をかけた
生きてさえいれば復活させれる最高位の回復魔法を
「ウルティモリザレクション!」
損傷がすごいため少し時間がかかるだろうけど何とか間に合ったみたい
「う、グブッ、ど、どうして、何が起こって」
「ミュゼさん、話さないで下さい。ベガさん、彼女の治療が終わるまでの間守ってください!」
「ああ、そのつもりだ。ミュゼを頼んだぞアスティラ」
首を落としたはずのゾンビ男は自分の首を持ち上げると何事もなかったかのように付けなおして立ち上がった




