生まれたけど何か変なんですが39
結果として、ウェイドーナが100点、インセントが116点、ファルマが128点、ベイクルンバルが150点、そしてコープラストが232点
今年の優勝校はコープラストになった
大歓声が上がった後に魔王様が閉会のあいさつのため壇上に立った
「皆の者よく頑張った。代表以外は活躍できなかった者もおるだろうが、努力は裏切らぬ、今後もよりいっそう精進し、日々勉学に励むがよい。して今回の優勝校はコープラストとなった。我がひざ元の学園だが、決してひいきしているわけではなくてな。その努力はよく見ておるぞ。それに我は全ての学園を見ておる。我が国の子供達は非常に充実して育っておるからして、我も安心じゃ。これからもその頑張りをっグブッ!」
突如魔王様の言葉を遮って何かが飛んできて、その何かが魔王様の胸を貫いた
「魔王様!」
「マナちゃん!」
父様とエイリアスさんが慌てて駆け寄ってる
あまりのことに会場は静寂に包まれて、その安否を心配する声が上がり始めた
壇上からは血が滴り落ちている
私とアルタイルも急いで壇上に上がると、目から生気が失われた魔王様の姿があった
辛うじて息はあるようだけど、正確に心臓を射抜かれている
刺さっているのは真っ黒な槍で、魔王様の小さな体にはそぐわないほどの大きさ
魔王様はごぷっと血を吐き出した
「エイリアス、エイ、リ…」
「マナちゃん! お姉ちゃん! だめ! しっかりして!」
「ごめ、あと、任せ」
ゆっくりと目を閉じようとする魔王様にエイリアスさんが縋り付いて泣き始めた
私なら、なんとかできるかも
死の間近にいる魔王様の上半身の服を脱がせて傷口を見る
多分槍を抜けば死ぬ
それにこの槍、呪いがかかっているようで、魔王様の魔力を輩出させているみたい
私はまず槍の呪いを呪い解除のスキルで壊した
それにより槍は黒色が消えて行って普通の槍に戻る
その時突如後ろ、生徒たちがいる方向から悲鳴が上がった
「アスティラ! 君は魔王様の治療を! 僕はあれを片付ける!」
後ろを見ると真っ黒に染まった人間が数人、笑いながら生徒たちを襲っていた
「魔族はまったく、このような危険な行為を祭りとして楽しんでいるとは」
「フフ、全員殺せばいいのよ」
「俺はあっちの幹部っぽいやつらをやらせてもらうぜ」
「まぁ待て、一人一匹だ」
「・・・」
「わたくしは今向かってきてる色男でもいただきましょうか。うふふふ」
数は7人、恐らくあれは偽勇者の仲間だと思う
陰険に笑うやつらは、生徒たちを傷つけ楽しんでる
頭が怒りで白くなってきたけど、アルタイルに手で制されて少し落ち着いた
今私がすべきことは魔王様の回復
槍をゆっくり引き抜きながら傷口を同時に回復させつつ、血液が吹き出ないよう大きな血管を塞いでいった
完全に致命傷で、心臓が潰れているにもかかわらずまだ生きていられるのは、魔王様の膨大な魔力の賜物だと思う
魔力が潰れた心臓の代わりになって血液を脳に送ってるみたい
槍を引き抜き終わったころにアルタイルと黒い女との戦闘が始まった
その女はハーフエルフのようで、妖艶な雰囲気がある
彼女はマントから杖を取り出すとアルタイルに向ける
そんな彼らの後ろでは私の友人たちやアルタイルの友人、ファルセポナちゃんやクレアさんたちがすでに戦いを始めていた
「アスティラ! ここは任せる! 魔王様を頼んだぞ」
「はい父様!」
父様も侵入者から生徒たちを守ろうと黒い人族たちに向かっていった
魔王様の傷口も少しずつ塞がってきている
私は泣きじゃくるエイリアスさんをなだめつつも治療を続けた
アルタイルは女との戦いを開始した
「うふふ、中々いい男、魔族じゃなかったら惚れてたかもね」
「こんなことをして…。お前たちは、お前たち人間はなぜ魔族をそこまで毛嫌いするんだ!」
「あら、私は別に毛嫌いなんてしていないわ。恨みもないしね。ただ楽しいからやっているの、魔族って死ぬ瞬間膨大な魔力を一気に排出するの、知ってた? それを体に取り込むとね、その魔族の悲鳴がいつまでも体に残って、最高に気持ちいいの。うふふふ、あなたはどんな悲鳴かしら?」
女は本当に嬉しそうに笑い、アルタイルを真っ直ぐ見つめた
「そうか、快楽のために魔族を…。もう、許せない。アスティラ、魔王様を連れて少し下がっててくれないか? 力を解放する」
「わ、分かった」
私は魔王様の傷を塞ぎつつエイリアスさんも連れて壇から降りた
「あなたの名前は?」
「僕はアルタイル、僕はお前たちを許さない。初めて本来の力を発揮できそうだ。逃げるなら今の内だよ」
「私は赤の魔導士フェノン・アベイリ。貴方を殺す者の名よ」
「向こうは、任せても大丈夫そうだね。幹部が何とかしてくれそうだ」
「あら、あなた一人で私を倒せると?」
「ああ」
「子供ねやっぱり、実力差も分からないなんて」
魔王様を安全な場所に運び終えて再び治療を始めたところで、後ろから膨大な魔力の本流を感じた
恐らくあの女が魔法の準備を始めたんだと思う
「赤の魔導士と呼ばれる所以、教えてあげるわ」
「僕の大切なものは誰一人傷つけさせない」
二人の戦いが、始まった




