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生まれたけど何か変なんですが38

 離れた直後にクレアさんが槍をこちらに投擲してきた

 ヒュッという風を切る音がしなかったら反応に送れたかもしれない

 横へ転がって何とか交わしたら私のいた場所に爆撃のような衝撃が起きて、土煙が上がる

 槍は深々と地面に突き刺さっていて、その横にいつの間にかクレアさんが立って槍を掴んでいた

 投擲してすぐに走ったんだと思う

 槍を引き抜くと構えて私に切っ先を向けた

「まず、あなたから」

「そう簡単にはうたれませんよ」

「槍術奥義、一天突刃(いってんとっぱ)啄木鳥(きつつき)

 槍を突き出し、引く、その単純な動きを目に見えないほどの速さで行なうことで、まるでレーザーのような一つの線となってこちらの動きに合わせて突いて来る

 どこに動こうともぴったりとついてきて全く同じみぞおち辺りに槍先が迫って厄介

 剣で防ごうにも簡単に弾かれて後ろに下がるしか手がない

 そのまま下がり続けるととうとう壁際まで追い詰められてしまった

「まずっ」

 槍がみぞおちに差し込まれた

 ものすごい衝撃がみぞおちに走って息ができなくなる

「う、はっぐぅ」

 膝をついたところに槍の振り下ろしが来た

 何とか反応して剣で受けると、地面が凹むほどの威力で腕がビリビリと痺れる

「はっはっ、ふぅーーー」

 次第に息ができるようになって息を思いっきり吐きだすと、再び吸い込んで力を解放した

「スキル、明鏡止水」

 自身に大幅な精神力向上と魔力の向上と筋力の向上、そして大幅な回復を促すスキル

 それによって彼女の槍を押し返して弾き飛ばすことに成功した

「ぐっ」

「剣術、八式連爪」

 八方向から襲い掛かる剣は先ほどの彼女の槍よりも速い

 彼女は対応しきれずに剣を受けてしまい、鎧兜を弾き飛ばしてしまった

 あらわになる美しすぎる顔

 会場から歓声が上がるけど、彼女は気絶してしまったため立ち上がって逃げることもできない

 だから私が急いで兜を付けておいた

 それからクレアさんは運ばれて行って残りは私を含めて三人

 で、私以外の二人は剣を打ち合い続けていた

 ヴェナさんの剣をアルタイルは盾でうまく防いでる

 今この二人の間に割って入るのは無粋だと思って決着がつくのを待った

「ここまでやる子がいるなんてね」

「フヒャ、フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァアアアアア!!」

 彼女の剣がよりいっそう速さと重さを増していくのが分かる

 でもアルタイルもその動きを読み切って見事に盾で逸らし、いなしきっていた

 その後決着は驚くほどあっさりつく

 一瞬の隙をついてしっかり踏み込んで懐に潜り込むと、思いっきり胴を剣の腹で殴った

「フヒャヘェエエエ!!」

 鎧が砕けながら彼女は転がって行って動かなくなった

「フヒャ、フ、ヒャ、フフフ」

 気絶しながらも笑いが止まらないヴェナさん

 あとで本当に治療してみよう。何とかして治してあげたい

 

 私とアルタイルは改めて向き直った

「さっきよりも本気を出せるよ。僕はこっちの方が得意だからね」

「そうですね。でもアルタイル、私だって日々成長しているんです、よ!」

 地面がボコッと凹むほど踏み込んでアルタイルに剣を打ち付けた

 ガコッと音が響いて盾で防がれたことが分かる

「そう簡単に取れるとは思わないことだね」

「ええ、思っていませんよ」

 二人による剣の打ち合いは激しさを増していく

 お互い恐らく素人では目で追えないほどの剣速で撃ち合っているため、多分音だけが会場に響いてるような状態

 時折剣で押し合うときは姿が見えてると思うけどね

 二人の実力は拮抗していて、長期戦になっている

 およそ20分ほど経過したころ、私が先に体力に限界が来てしまう

「やっぱりね。アスティラ、今回は僕が勝たせてもらうよ」

「そうはいきません! スキル、明鏡止」

「させないよ!」

 明鏡止水を発動しようとしたところを邪魔されて、体力回復ができなかった

 くぅ、これは厳しい

「ス、スキル、真分身」

 私はまったく同じ能力を持った分身を二体作り出す

「げっ! そんなことできるなんて聞いてない!」

「秘策ですからね。奥の手は取っておくものです」

「ちょ、こんなの無理無理無理!」

 まぁ私を三人相手にしてるようなものだもの

 形成は逆転、今度はアルタイルが追い詰められる結果となった

 分身二人に主攻撃を任せ、私は体力の回復を図った

「スキル、明鏡止水」

 これで無事体力を回復、一方のアルタイルは額に汗を浮かべて二人の猛攻を何と防ぎきっている

 やっぱり勇者、一筋縄じゃ行かない

 私もこの猛攻に加わると、さすがに彼も防げなくなってきた

「奥の手は最後まで取っておく、同感だよ」

「え?」

「フラッシュ!」

 突然のまばゆい光、光魔法のフラッシュ

 これは目くらましの魔法ね

 でも私には効かない

 そう思って彼を見ると、彼の姿は消えていた

「ど、どこ!?」

「剣術奥義、四影輪(しえいりん)!」

 私の影から出てきたアルタイル

 これは影移動!? 影の中を移動するスキルじゃない!

 不意を突かれた私はこの攻撃をまともに受けてしまった

 とっさに防御系スキル(いきなりだったから最低限の防御しかできなかった)を展開したけど、案の定あっさりと破壊されて私は右腕でそれを防いだ

 右腕はゴキリと折れた音がして、私は地面を転がる

 痛みに耐えてすぐに立ち上がると片手で剣を構え直した

「剣術奥義、赤燕(せきえん)!」

 左手で剣を拾い上げてそれを受けた

 つばぜり合いのように押し合うけど、強化した私の筋力よりも彼の筋力の方が上

 分身もさっきの攻撃で消えちゃってるし八方塞がり

 このままじゃ、勝てない…。でも勝ちたい!

 気持ちだけで何とか耐えてたけど、それもむなしく私は剣を弾かれて切っ先を喉元に突きつけられた

「ようやく、僕の一勝かな?」

「ええ、さすがですアルタイル。私ももっと研鑽しないとですね」

 私は負けを認めて折れた右腕を回復させた

 倒れ込んでいた私を彼は優しく起こしてくれる

 会場が歓声に包まれて、試合は終わった

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