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生まれたけど何か変なんですが4

 一日で魔力操作を完璧なものにした私は、カルテア先生に褒められて舞い上がっていた

 その様子をカルテア先生は優しい目で見守ってくれる

「アスティラ、喜ぶのはまだ早いよ。魔力操作は魔法や一部のスキルを使う上での初歩、正しく魔法を使えるようになって初めて成功なんだ」

「はいお姉ちゃん!」

「くぅ、可愛いなぁもう」

 私はカルテア先生をお姉ちゃんと呼び、先生は私を名前で呼んでくれる

 本当の姉妹のように私達は幸せな時を過ごしていた


 それから数ヵ月後、とうとう魔族の学園に通う日がやって来た

 魔法はほとんど完璧と言ってもいいし、剣術もある程度はその動きを理解できた

 この国には魔族が通うための学園が大都市ごとにあり、魔王都には一番大きなコープラスト魔導学園というものがあるらしい

 そこに通うのはエリート中のエリートで、私もそこの寮に入るはずだったのだけれど、父様と母様が目を話したくないという理由でここ副都ベイクルンバル国立学園に通うことになった

 ここなら家からも近いので歩いて通えるし、なんとお姉ちゃん、カルテア先生もここで客員教諭を務めているというのだ

 今までは客員教諭として一か月に二~三回ほどしか授業をしていなかったそうだけど、これからは私が通うということで一週間に三回もの授業回数に増やすと言っていた

 それもどうかとは思うけど、お姉ちゃんの部下は優秀らしいので魔導兵団の方もちゃんと回っているらしい

「僕の右腕はかなり出来るやつでね。ついつい頼ってしまうんだよ」

 その人は男性で、少し弱気な点があるのが玉に傷らしいけど、率先してお姉ちゃんを手伝ってくれたりいち早く仕事を済ませてくれたりと、お姉ちゃん曰くいい男なんだそうだ

「あれあれ、もしかしてお姉ちゃんその人のことを」

「ば、馬鹿を言うんじゃないよアスティラ、あいつは優秀な部下で私は上司、それ以上でもそれ以下でもないよ」

 顔を真っ赤にしている辺りまんざらでもない気がする

 よかった、あまりにも男っ気が無いからそういうのには興味がないものだと思ってたけど、お姉ちゃんもちゃんと女の子だった

「なんだそのニヤニヤ顔は、このぉ」

 痛くないよう優しくほっぺをムニムニと引っ張られる

 ちなみにお姉ちゃんが本気で引っ張れば私のほっぺはちぎれます


 学校へ行くためのフリフリのついた衣服に身を包み(この学園には制服はなくて服装は自由みたい)高級な魔獣皮のバッグを背負って意気揚々と家を出た

「行ってらっしゃいアスティラ、頑張ってくるのよ」

「はい母様! 行ってまいります!」

「それとカルテア、アスティラのことを守ってあげてね」

「はい奥様、もちろんですとも」

 お姉ちゃんは今日から私の護衛兼教師として一緒に学園に通う

 一緒に行けるのは嬉しいかも

 でもお姉ちゃんはなんだか満面の笑みでずっとこっちを見ているだけで何も話さない

 これはあれだ、自分の娘が成長して学校に行くようになったのを感慨深く眺める親の目線だ

「お姉ちゃん?」

「ハッ! ごめんよアスティラ、あまりにも可愛くて見とれてしまったよ」

 お姉ちゃんの言うように私は自分でも相当だと思えるほどに可愛いと自負している

 成長するごとにその可愛さを増しているんじゃないかな?

 母様譲りの燃えるようなストレートの赤毛に父様と同じ黒く輝く黒曜石のような角、顔立ちは母様と同じく切れ長の涼し気な美少女と言った感じかな

 背は低く、子供だから胸もないけど、将来的には母様と同じくモデルのような体型になると信じている

 お姉ちゃんに手を繋いでもらって学園までの道のりをゆっくりと歩いた

 入学式もあるみたいで、すでに今年学園に入る生徒と思われる子供達が母親、もしくは父親に手を繋がれて歩いているのが見えた

 その中には一緒に洗礼を受けたフレアちゃんとソル君の姿も見える

 二人は手を繋いで歩いているので私はニヤニヤしながら後ろから声をかけた

 実は洗礼の日に二人と仲良くなって友達になっていたんだ

「ソル君、フレアちゃん!」

「「わっ!」」

「えへへ~」

「アスティラちゃん! 君も一緒の学園なの? てっきり君は魔王都に行くものだと思ってたよ」

「うんうん、何でこっちに?」

「う~ん、家が近いからかな」

 二人はキョトンとしている

 そりゃあコープラスト魔導学園はエリートだけど、両親はエリートになるかどうかではなく、私が一番楽しめるようにと気遣ってくれる

 競争激しいコープラストよりもこちらなら友人もたくさん作れるからとこっちに入れてくれたって言うのもあるんだよね

 それにこの二人が通っているなら気も楽だし

「でもよかった、知ってる子がソルしかいないと思ってたからアスティラちゃんがいてくれて安心」

「私も。二人がいてくれて安心したよ」

「で、アスティラちゃん、そっちの怖い顔のお姉さんは一体…」

 ソル君に言われて思い出した。お姉ちゃんを放っておいてしまっていたことに

「いいんだよアスティラ、アスティラが幸せならそれで…」

 寂しそうな顔

「ご、ごめんねお姉ちゃん」

「その人アスティラちゃんのお姉ちゃんなの!? すっごくかっこいい!」

「そ、そうかな? いやあ君らは見る目があるね。僕はカルテア、魔導兵団団長にしてこの学園の客員教諭さ」

「先生なの!? すごい!」

 二人に尊敬のまなざしで見られてお姉ちゃんもテレテレだ

 その時朝八時を知らせる街の鐘が鳴り始めた

「あ、もうすぐ時間だよ! 急ごう!」

「そうだね、僕も先生として遅れるわけにはいかないからね」

 私達は走って学園の門をくぐって、学園集会の行われる建物へとお姉ちゃんの案内で入って行った

 入学式まであと30分ほどかな

 今年入学する子供の数は20人ほど

 やっぱり魔族は子供が少ないんだね

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