生まれたけど何か変なんですが27
普通に父様にばれた
私の気配消去は完璧だったはずなのに、父様は感覚だけで私が来ていることを見透かしたんだと思う
その父様に拳骨を喰らったけど、私はアルタイルについて行っていいことになった
勇者には必ず仲間がいるものなんだけど、私が恐らくその一人ってことでいいんだろうね
それに大好きな彼といっしょなら、何でも出来そう
私はアルタイルと二人でドロドロに溶けた魔物の死体を辿る
この先はエルフ族の領域になるけど、入ったばかりの辺りなら交流のあるダークエルフたちが住んでいる
彼らならまだこちらの話を聞いてくれるだろう
そう思っていたけど、甘かった
ダークエルフたちの住む領域に入ったとたん弓が雨あられと降り注ぐ
そのいくつかが私の腕に刺さったためアルタイルが怒り、大地を揺るがすほどの衝撃とぱっくりと口を開ける地面
どうやらアルタイルが力を使ったみたい
点と線と言うのが彼の力で、点は弾丸のように飛ばしたり、その上に乗ったりできて、線は切り裂いたり、空間を裂いたり、足場として使ったりとかなり使い勝手のいい能力みたい
その大きな力が大地を切り裂いた結果、ダークエルフたちが慌てふためいて出て来た
私は矢を抜いてからそこを回復魔法で治療する
でもなんだか、矢が刺さったところが熱くて、体がだるいな
「なぜ攻撃をしてきたんですか!」
アルタイルが怒りながら捕らえたダークエルフのお姉さんを問いただす
「貴様ら魔族が放った魔物のせいで、他エルフの迫害から逃れ細々と暮らしていた我らは壊滅状態だ…。私の妹も…、あの化け物に…。我らは魔族を決して許さない!」
涙を流しながら彼女はそう言うけど、私達魔族には全く身に覚えのないことだった
この辺りに来る魔族は商隊くらいだし…
「その化け物と言うのは一体どういうもの、なのですか?」
私は気分が悪くなっているのも構わずそう聞いた
なんだろう、体が熱くて、クラクラする
「ふん! 貴様らが放った魔物だろうが! 知らぬわけがない! 我らの同胞が一瞬でドロドロに溶けたのだぞ!」
彼女、ウルミナさんの話を聞くに、見た目は人間のようだったけど、蜘蛛の脚が背中から生えた少女で、ダークエルフよりも黒い肌をしていたそうだ
そいつは指から棘のような物を飛ばすと、それに刺されたダークエルフたちは一瞬で溶けてしまったらしい
ウルミナさんの妹であるミリファさんも、その棘が刺さりどろりと溶けてしまったそうだ
それからこちらも根気強く説明した結果、なんとかわかってもらえた
それも私が“ヴィジョン”という魔法で溶けて死んでいる商隊の映像を見せたから
「すまない、そちらも被害者、だったのだな…」
「いえ、その、襲われた場所へ案内してもらえるでしょうか?」
「ああ、こっちだ」
拘束を解いて案内してもらう
まだ頭がくらくらする…
確かにそこは悲惨なありさまだった
ドロドロの死体はそこかしこにあり、ウルミナさんは妹の死体と思われるものにすがって泣いていた
私は彼女の肩に手を置き、その死体に祈りをささげた
すると死体から微かな力の流れを感じた
おそらく、生命力だろう
もしかして、まだ生きている?
「ウルミナさん! 急いでどろどろになった人達を集めてください!」
「な、何を言っているんだ?」
「いいから早く!」
「あ、ああ」
ダークエルフたちは協力してドロドロに溶けた仲間たちを集める
驚いたことにドロドロなのにもかかわらずその形は崩れず、まるでスライムのようだ
「あ、集めたが一体何をするつもりなんだ?」
「回復魔法をかけてみます」
「え!?」
驚くダークエルフたちを尻目に私は最大出力の回復魔法をかけてみた
「アルティメットヒール!」
広範囲に広がる回復魔法で、死んでいなければ完全回復させれると言うレベル10の上位魔法
これならウルミナさんの妹も元に戻せるんじゃないかな?
でも、彼らが元に戻ることはなかった
それならやっぱり
「アルタイル、その蜘蛛人間を探しましょう」
「ああ、元よりそのつもりだからね」
「ウルミナさん、彼らをどこか安全な場所に隠してください」
「彼ら?」
「この人たちはまだ生きています! 姿を変えられただけです」
「本当か!? それなら、ミリファも!」
「ええ…。恐らくその蜘蛛人間を倒せば、元、に…」
なんだろう、眩暈がさらに激しくなって、体が燃えるように熱い
「まずい! 先ほどの矢には毒が塗ってあったんだ! 解毒剤を早く!」
そんな声が聞こえて、私は真っ暗な中に沈み込んだ




