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勇者6

 僕が勇者と言うことが知れ渡ってから初めての任務、人がドロドロに溶けて見つかったという事件の調査だ

 今回はガイア魔導兵団長と、カルテア隊長が一緒で、現地では魔法研究所のトップであり、幹部のウェリザーナさんとも合流する

 今まで人がドロドロに溶けるなんて魔法もスキルも発見されていないから、これは十中八九黒い人族の仕業だろうって話だ

 あのハザードとかいう男も得体のしれない技や力を使っていたしね

「ところでアルタイル、君はどんな力を使うんだ? もしアスティラに見合わないようなら」

 にらんでくるカルテアさん。血は繋がっていないけどアスティラのお姉さんである彼女は、アスティラのことが可愛くて仕方がないらしい。それはもう過保護なくらいに

 でも、その気持ちは分かる

 僕だって彼女のこととなると周りが見えなくなる節があるからな

「僕の力は、点と線という固有スキルと、魔法全般ですかね。特に聖魔法と光魔法が得意です」

「そこはやはり勇者と言うべきなのか、聖魔法や光魔法は元来俺たちに使える者は少ないからな」

「父さ、団長、僕も一応聖魔法が使えますよ」

「そうだったなカルテア。お前の聖魔法にはいつも助けられる」

 カルテアさんの頭をポンポンとする姿はまさしく親子そのものだ

 彼女が嬉しそうに目を細めている姿も女の子らしい。普段のあの屈強なイメージとはかけ離れてるな

 それにしてもこの世界の馬車はお尻が痛くなる

 本来なら公爵家であるガイアさんが普通の馬車に乗ってるっていうのもおかしな話なんだけど、ガイアさんはそう言ったところにお金をかけず、領民がより良い暮らしができる方向へお金をかける人なんだ

 だからこそ、領民に慕われてる

 僕は、魔族に生まれることができて幸せだ

 こんなにいい家族、いい人たちに恵まれて、可愛い許嫁もいて

 僕にはたくさんの大切なものができた

 今世こそは、この幸せを謳歌するんだ

 そのためには、おかしくなってしまった人族を元に戻さなきゃいけない

 僕の理想論だけど、世界中の人々が手を取り合えるような世界にしたいんだ

 そして、アスティラと、けっ、こん…

 そんな妄想をしているとあっという間にカーテラル平原に到着した

 広大な平原で、魔族じゃないと迷うほど同じ景色が続く場所で、魔物も出るから人族にはかなり厳しい土地

 その中央付近にドロドロに溶けた商隊の死体があった

 その数は百人ほどに及び、痛ましい結果となっていた

 彼らにも家族がいて、それぞれの生活があったんだ

 それを奪ったやつを、僕は許せない

 

 しばらくサンプル採集をしたり、周辺の調査などをしていたところ、魔法研究員から一つ報告がなされた

 この現場から少し進んだ先にドロドロに溶けた魔物と思われる死体がいくつも転がっていて、先に続いているらしい

 その死体はまるで僕らをいざなっているかのようで、そのまま進めば魔族領の端、エルフ族との国境に続く

 無駄ないさかいを起こさないために調査はそこで一旦停止された

 エルフ族領にこの事件の犯人がいるのか、はたまたエルフ族の誰かなのか、いやそれとももしかして、エルフ族にも被害が出ているかもしれない

 勇者として、僕はどう動くべきなんだろうか?

 答えは決まっている。誰かが助けを求めるのなら、答えるのが勇者なんだ

「ガイアさん、僕はこのままエルフ族領へ行こうと思います」

「待て待て、一人でどうしようと言うんだ。エルフ族のダークエルフは確かにこちらとは友好関係にはあるが、それ以外は敵意をむき出しにして襲って来るぞ?」

「しかしガイアさん、もしかしたら、この犯人に襲われているかもしれないじゃないですか! 彼らにだって、大切な人は、いるんです。僕はただ何の罪もないそんな人たちを守りたいだけなんです!」

「・・・」

 ガイアさんは少し考えるように黙り込み、少しして口を開いた

「やはり勇者なんだな。人族から出た歴代の勇者も、同じようなことを言っていた。魔王様と打ち合い皆死んだが、いい若者たちだった」

 遠い目をして思い出しているんだろうか?

「分かった。しかし一人で行かせるわけにはいかない」

「じゃ、じゃあ!」

「ああ、おいアスティラ、ついて来ているんだろう?」

 ガイアさんがそう言うと、僕の横にいきなりアスティラが現れた

「と、父様、何でわかったんですか!?」

「娘のことが分からないわけないだろう。まったくお前は!」

 拳骨をされるアスティラ、涙目になって可愛い

「アスティラ、アルタイルについて行くんだ。お前とアルタイルなら、大丈夫だろう」

「いいの? 父様」

「どうせ行くつもりだったんだろう? 心配だが、アルタイルが守ってくれるだろう。なあ?」

「はい必ず!」

「ま、待ってください団長! それなら僕も!」

「お前はまだ仕事が残っているだろう。ほら行くぞ。アルタイル、アスティラをしっかり守ってくれ」

「はい!」

 ガイアさんに引きずられながら手を伸ばし嘆くカルテアさんを見ながら、僕とアスティラは笑い合った

 ここからは何があるかわからない。必ずアスティラを守るんだ

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