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生まれたけど何か変なんですが26

 会議の数日後、とある報告が父様の耳に入って来た

 なんでも魔族領、カーテラル平原の中央付近で魔族のドロドロに溶けた遺体が百体ほど見つかったという

 ドロドロに溶けていたというのになぜ魔族の死体だとわかったのかというと、そこには彼らの遺品が散乱していたのと、紙に書かれたメッセージが残されていたからだ

 書かれていたのは彼らが商隊で、カーテラル平原を渡ってザサドという大きな街に向かっていたということ、平原を渡っていたところ黒い人影に襲われ、その最後の生き残りだった商隊の商人がこのメッセージを残したらしい

 人影はあっという間に仲間を殺すと、殺された仲間たちはドロドロと、服など無機物を残して溶けたと言う

 最後に残った自分も腹部に穴が開き、もう間もなく死ぬだろう

 故郷に残した妻と娘に愛していたと伝えて欲しい

 文面の最後にはそう書かれていた

「父様、これはやはり」

「ああ、恐らく人間族側にいる、黒い者の一人と考えるべきだろうな。十二勇士だったか…。今まで確認された黒い人族の中に、あのハザードを除いて特殊な力を使う者はいなかった。だがこの手口…。明らかに異常だ」

「はい、人がドロドロに溶けるなんてそんな…」

 私の知りうる限り、固有スキルにもそのようなスキルはなかった

 まぁ黒い人影にやられたと書いてあるからそれは間違いないのか

「取りあえずこの件は俺が調べる。アスティラ、お前は首を突っ込むんじゃないぞ」

「え? でも」

「でもじゃない。わかったな?」

「は、はい」

 父様はそのまま部屋を出て行ってしまった

 多分心配だから関わらないよう言ってくれたんだと思うけど、私も父様の役に立ちたい

 それにこの調査にはアルタイルも行くらしいし、彼にもしものことがあったらと思うと気が気じゃない

 というわけで、私もこっそりついて行くことに

 確かスキルに透明化があったはず

 レベルが低いと数分しかもたないけど、私みたいにレベルがマックスなら任意で解除ができるようになる

 ただ父様は魔力の気配に敏感だから、そこには気をつけておかないとすぐにばれる可能性があるのよね


 そして数日後、父様はお姉ちゃんを連れて調査に向かった

 母様には悪いけど、私がスキル“分体”で出した偽物を置いておいて、父様とお姉ちゃんについて行く

 スキル“気配消去”で気配も魔力も消せたし、二人の乗ってる馬車を後ろから走って追いかける

 まずはカーテラル平原、つまり現場を見に行くみたい

 途中でアルタイルを拾って、私達はカーテラル平原を目指した

 ここまでは二日ほどの距離で、父様やアルタイルがゆっくりと場所に揺られている様子を窓から見る

 アルタイルは緊張しているのか、ずっと固くなってるみたい

「そう緊張するなアルタイル君。君のことは信頼しているのだからな」

「そうだぞ。とうさ、ベガ様はお前のことを高く評価している。気張らずいつも通りにしていればいい」

「は、はい!」

 フフ、三人はいい感じで打ち解けてる

 私はつかず離れず馬車の後ろを走った

 疲れないかって? そりゃ疲れるに決まってるでしょうに!

 でもそんなこと言ってられないもの

 ちなみに私の最速は200キロくらい。新幹線並みなのは驚き

 だから馬車を追うくらいならそこまで負担はかからないんだよね。疲れるけど…

 

 二日後、私達はカーテラル平原に着いた

 そこにはすでに魔導兵団所属の調査隊と、魔法研究所職員が数人来ていた

 当然魔法研究所職員を率いているのはウェリザーナさんで、眼鏡をクイッと上げながら指示を飛ばしていた

「いいですか、些細なことでもすぐ報告するように。それと、死体の成分サンプルを採取、バックス、隊員小瓶を配ってください」

「はい!」

 バックスと呼ばれた男性隊員が袋から取り出した小瓶を他の隊員たちに配っていく

 それと、魔導兵の人達にも同じように小瓶を配っていた

 死体の数が数だけにそれだけサンプル採取が必要なんだろう

 お姉ちゃんは魔導兵に指示を飛ばして周辺の調査を開始した

「アルタイル、君はこのような魔法、またはスキルに覚えはないか?」

「いえ、僕にはまるで見当がつきません。ここまでドロドロに溶けるなど、あり得るのでしょうか?」

「分からん、しかしあの十二勇士とかいうやつらならそれも可能なのかもしれん。アスティラを傷つけた黒い靄と言うのも聞いたことの無いスキルだ」

「はい、僕もアスティラから聞いて驚きました。それにしてもアスティラはなぜあそこまで丈夫なのでしょうか?」

「そうだな、確かにあの子は死に瀕するような怪我でも一瞬のうちに治癒している。これはいくら魔族でも得ない。しかし、お前が勇者となったことのように、今世界ではそのようなあり得ないことが起きているのかもしれない。案外アスティラもお前のように使命を帯びて生まれたのかもな」

「そうですね、そうに違いありませんよ」

 二人の会話で私はほっこりした気持ちになる

 この二人のためにも、魔族たちのためにも、私はその力を振るおう

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