生まれたけど何か変なんですが24
一人魔物ひしめく中に飛び込み、剣で切り伏せていく
父様とお姉ちゃんの制止も聞かずに飛び出たせいで、私は近づく気配に気づかずにいた
「将と見た! その首討ち取ったり!」
気づいた時には遅く、ハザードと名乗った男の拳が目前に迫っていた
「このっ!」
剣でその拳を止めたけど、あっさりと剣は砕き折られた
「そんな、これ鋼鉄ですよ!?」
「馬鹿な魔族だ。鋼鉄だから折れないと教わったのか? やはり魔族は頭の悪い戦いしか能のない種族のようだな」
「馬鹿にして!」
柄だけになった剣を捨てると拳を構える
格闘技の心得が無いわけじゃないけど、スキルだけ持ってても技術が無い
恐らくこのハザードって男は武術の達人なんだと思う
構えからしてただならぬ気配を感じた
「一撃必殺、無情!」
男が拳を撃ちだしてきた
でもこの速さなら避けれるわ!
「甘い!」
拳を避けたのに、何か黒い靄のような物が拳から吹き出して私の体を覆う
思わぬことにそれをまとわりつかせられ、体中を深く切り裂かれ血が吹き出る
父様とお姉ちゃん、遠い…。これは一度死ぬしかない、か
ちぎれかけた腕と足を見ながら私の意識は再びあの場所へと呼び寄せられた
「はい! もう慣れたと思うけど、あなたの新しい神スキルを」
「その前にお聞きしたいことが」
「あ、そうよね。聞きたいことは分かってる。黒い魔物、黒い人族、黒く染まった生物はかつて全ての世界で大量発生したことがあるの」
「あれが、大量発生ですか?」
「ええ、黒く染まればただの犬でも魔獣になる。これはかつての闇と呼ばれる勢力が操られた為に引き起こされたものだったけど、闇とは和解してるし…。詳しい原因が全くつかめないのよ」
「その闇とは話は」
「したわよ! でも彼ら、何も知らなかった。まぁそんな力今はないから疑いようがないけどね」
「そう、なのですか」
「闇は気のいい連中よ。まぁ変なのもいるけど、基本無害かな。光であった私達と対を成す存在が闇。でもこの事象は何かが違う。とにかくまだ分からないことは多いの。ただ他世界で起こってる問題もあるから、それが関わってるかもしれないってことだけ…」
「他の世界の問題、ですか?」
「ええ、忘れ去られていた悪魔の暗躍が確認されたの。今まで神々は悪魔というものを忘れていた。それがなぜかは分からないけれど、それが関係しているのかもしれない」
「分かりました。また経過を教えてください」
「ええ、それよりあなた、神スキルをまた一つ手にいれたみたい。えっと、機械の力? この世界に機械はないんだけど、あなたなら何とかするでしょ。その力は機械を自在に操ったり、機械を作り出す力。自分の知りえない技術でも創り出せるから気を付けて、文明が一気に加速すると滅びる原因になっちゃうから」
「ほ、滅んじゃうって」
「そう、人は一気に豊かになると戦争を始める。その辺りのことはわかるでしょう? お金なんかのために醜い争いをするのが人間」
女神様は人間というものを理解している
悲しそうな顔がそれを告げていた
「ほら戻んなさい。あ、あともう一つ伝えることがあったわ。あんたの婚約者、勇者だからしっかり支えてあげなさい」
「え、それって」
「まぁそう言うことだから、まずは自分の世界をよくしなさいな」
「はい!」
目を覚ますと、目の前にあの人がいた
そっか、アルタイルが勇者なんだ
じゃあ人間族の勇者って言うのは、偽物?
アルタイルが勇者なら、何で魔族から勇者が?
でも、勇者は世界を救う者、魔族が勇者なら、人間が
考えてる暇はない。アルタイルと手を繋ぎ、その力を分けてもらった
体が温かくなり、気持ちよくなってくる
そしてみなぎってくる大きな力は二人を繋いで更なる力になる
「アスティラ!」
「ええ!」
二人で紡ぐのは勇者の力
何故か頭に浮かぶ言葉を一緒に口に出すと、二人の中から力が沸き上がってハザードを吹き飛ばした
アルタイルはあのハザードという男も騙されているんだと言っていた
だからこそ勇者として世界を元に戻さなければいけないとも
二人でやれば出来るはず
無事に黒い魔物や人族を倒すことは出来たけど、こちらも犠牲が多い
またこんなことがあると考えると、もっと力をつけなくちゃって思う
アルタイルとも話し合ったけど、学園を卒業したら二人で本格的に修行をしようと思うの
まだ私達には強さが全然足りていない
今日だってまた死んでしまった
いくら私が強くなって蘇れるからと言って、このままでいいはずがない
死んでる間は無防備だし、復活までに時間がかかるから仲間が危機にさらされる
それならもっと強くなって、なるべく、いや、絶対に死なないように努めなきゃ




