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生まれたけど何か変なんですが24

 15歳になってから一か月ほどが経った

 あれから頻繁に彼と会うようになり、彼の家に招かれたり彼を招いたりと楽しい時間を過ごした

 もちろん友人たちとの交流も忘れていない

 その間もやはり黒い魔物は溢れている

 ただ、人間族の侵攻がピタリと止まったのは驚きね

 今まで二週間に一度のペースだったのに、この一か月何の音沙汰もない

 世間では、そりゃあれだけの犠牲を出しているんだもの、疲弊もするでしょうってことになってるけど、私には新たな火種のくすぶりにしか思えなかった

 いずれ大きな戦争は必ず起こるし、人間族の勇者って言うのも気になる

 今はまだ戦争に参加できるような年齢ではないにしても、これから五年十年経てばきっと、人族全体を率いて攻めて来るに決まっている

 その時私は、魔王様の部下として、魔族を守るために戦おうと思うの

 今度こそ、大切な者を失わないために


 とりあえずは幸せな普段を過ごす毎日を続けていたある日

 またも黒い魔物が大量発生したとの報告が父様に上がった

 父様はすぐに戦いの身支度を整え、お姉ちゃんと共に出かけた

 でも今回は私もついて行ける。父様も姉様もかなり渋っていたけど、私が頑として引かなかったため仕方なくだけど…。でも私は、この戦いで本当の戦闘というものが何かと言うことを知ろうと思うの

 確かに私は幾度となく戦いはしたわ。でもそれは一人でだった

 こういった大規模な戦闘を経験したことが無い

 黒化リザーディア戦では私も最前線に立ったわけじゃなくて、ただ魔法を撃ちだしていただけだったし

 今回は父様とお姉ちゃんの横に並び立つ

 今回発生した黒い魔物は大規模で、多種類の魔物の群れなんだそうだ

 それに、その中に混じって人間族や亜人族がいるという情報もある

 以前のように黒い巨人族のような亜人種がいるのかな? だとしたら、気を引き締めてかからないとこっちがやられちゃう

 私は改めて自分の使えるスキルや魔法を確認していった

 神スキルはまだ二個で、どちらも強力だけど一度使えば体に負荷がかかる

 だからこれを使うタイミングはしっかりと見極めないと。“消滅”と“生命”、この二つの神スキルの使い処をね

 そう言えば、私が死ねば死ぬほどにスキルを手に入れる力、“死の王”というスキル

 これは固有スキルなんだと思うんだけど、確認しても固有スキルのある場所に見当たらない

 一応私専用の固有スキルと理解しておくことにした

 

 戦いの日

 私は武装して父様の横に並んだ

 私の右に父様、左にカルテアお姉ちゃんが私を守るように並び立つ

 目の前には今にもこちらを襲わんとする黒い魔物の群れ

 その先頭に黒い肌の人間族の男がいるのに気付いた

 男は目を見開き、ニタリと笑うと大声を張りしゃべり始めた

「これはこれは魔族諸君! 吾輩は勇者直属部隊、十二勇士が一人、“猛撃のハザード”! これより諸君らを絶滅させる者の名だ! よーく覚えておくように! 地獄でその名を語るためになぁ!」

 まず黒化した者が話すと言うことに驚いた

 何せ黒化した巨人には知性が無く、ただ暴れていたからね

 それに、勇者直属部隊? ということはやっぱり勇者はもう訓練を開始してるってことなのかも

 それと十二勇士、これは多分選りすぐった人族の代表なんじゃないかな?

 でも一番不思議なのは、その人族であるあのハザードって男が、黒化した魔物を率いてるって点だよね

 それもかなりの数を…

 正直黒化した魔物は強いし、しぶとい。そんなのが目の前を埋め尽くしている光景に私は身震いした

 見て初めて恐怖したの

 でも、私は立ち向かわなくちゃいけない

 だって、私達の後ろには守るべき大切なものがたくさんあるんだから

 決心を固めて、ハザードに向き直る

「挨拶はこれくらいにして、おっぱじめますかぁ! 吾輩と貴殿らの死の輪舞曲(ロンド)を!」

 ハザードが指揮者のようにタクトを振ると、魔物たちが一斉にこちらに向かって侵攻し始めた

 それを合図に両軍がせめぎ合う

「父様!」

「少し下がれアスティラ!」

「いえ! 私は引きません! 後ろに守るものがあるから!」

「アスティラ…。そうだな! カレアナ! アスティラと共に!」

「はい!」

 私に噛みつこうと牙をむく黒い狼を切り伏せ、爪を振り下ろす黒いゴブリンを刺し貫く

 お姉ちゃんが私と背中合わせになって、次から次へと襲ってくる魔物を一緒に打ち倒した

 父様は魔法を発動して迎撃している

 私達の後ろでは魔導兵が二人一組となって魔物と戦っていた

「ファイア! ファイア! ファイア!」

 初級魔法だけれど、私の魔法はそれでも中級以上の威力が出る

 これなら魔力をかなり温存して戦えそう

 お姉ちゃんが近距離を斬り、私が中遠距離に魔法を放つ

 連携は最高の形で取れていると言っていい

 でも一つ気になることがあった

 ハザードは最初の位置から一歩も動かず、黒い魔物や人族を使役しているだけみたい

 それなら、ハザードを討てば統率が取れなくなるんじゃない?

 そう思って私は一人先走ってしまった

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