表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/130

勇者4

 とうとう僕は15歳の誕生日を迎えることになった

 これまで多くのことを学び、魔法や戦いの訓練を経て、学園では比類なき強さを得ている

 よい友人たちに囲まれてそれなりに充実した生活を送れてはいるんだけど、ここのところ増えすぎている黒い魔物の問題に人間族の侵攻の問題と、とにかく今が大変な時期だと言うことは分かる

 でもやっぱりさ、誕生日を祝ってもらえるのって嬉しいじゃない

 それに今日は許嫁であるアスティラちゃんとの初対面の日でもある

 生で顔は見たことはないけれど、絵ではお互いに見ているはずなんだ

 その絵によると、天真爛漫で快活そうな少女だった

 僕は胸をときめかせながら会える日を待ち望んでいたんだ

 それが今日この日、僕と彼女の誕生日というわけだ

 服の準備をしてもらっている間も、胸の高鳴りが止まらなかった

「ではお母様、行ってまいります」

「ええ、ベルドモントさんによろしくね。それと、フェザー奥様にもね。頼んだわよアルタイルちゃん」

「お、お母様、ちゃんはもうやめてください」

「あらあら、あなたはいつだってわたくしの可愛いアルタイルちゃんですもの」

 お母さまはニコニコ笑っている

 おっとりとしてマイペース、それがお母様の良い所であり悪い所でもある

 滅多なことでは怒らない、というか怒っているところを見たことが無い

 人族との戦争の際は敵味方の区別なく治療を行っていて、敵方から魔の聖女と呼ばれたほどらしい

 アスティラちゃんの母上、フェザーさんとは全くタイプが違うらしいが、相当に仲がいいらしいな

 今でも毎週のようにお茶会に呼び呼ばれる間柄だ


 母様に見送られて副都ベイクルンバルへと向かう

 馬車で通常二日はかかるが、このペガサスが引く空馬車なら一時間ほどだ

 御者であるうら若い処女の乙女がペガサスに話しかけて乗り込む

 別にユニコーンではないので処女の乙女ではなくもいいんだけど、御者が女の子の方ががぜんペガサス君たちも張り切ってくれるらしい

 なんとまぁいやらしいんだろうか

「アルタイル様、準備ができました」

「うんありがとう」

 馬車が浮かび上がり、ペガサスが空を駆けだす

 あっという間に高度は高くなり、景色が変わった

 空から眺める景色は普段と違ってなんて素晴らしいんだろう。自然と調和のとれた街並みは最高に綺麗

 こんな景色を恋人と見ればさぞや…

 いやまだそのアスティラちゃんが僕のことを好きになってくれるとは限らないけどね

 

 あっという間に副都に着くと、街の人々の視線がこちらに集まった

 まあペガサスの空馬車なんて珍しいからね。普通空馬車と言えば揺れの大きいワイバーンとか、翼蛇とかだからね

 空馬車を預け、僕はお付きのメイドたちと共にアスティラちゃんのいる屋敷を目指して歩いた

 馬車を出しますと言われたけど、まだ来たことの無い副都の様子も見たかったから歩くことにしたんだ

 視線がずっと注がれているんだけど、これはあれだ、憧れの視線?

 女の子が意中の男性に送るような視線

 ふーむ、やっぱり僕の姿は注目されるほどなのか

 この視線、悪くない、悪くはないけど、なんだか複雑な気分だ


 30分ほど歩いてようやくアスティラちゃんの屋敷へ着いた

 う、大きい、うちより大きいじゃないか

 さすが三大公爵家の中でも最大の家だ

 お父様の親友にして戦友のベルドモント公爵

 戦場を走る殲滅公と呼ばれるほど強かったってお父様が話しているのをよく聞いていた

 でも実際会ってみると気のいいダンディなおじさんだな

 久しぶりに会うので、もう一度身なりを整えてから門戸をくぐった

 パーティーはもう間もなく始まるようで、ドレスやスーツで着飾った人々がそこかしこに固まっている

 多分アスティラちゃんの友人たちであろう子たちが父上母上と一緒にいる様子も見て取れた

 平民の子もいることから彼女が分け隔てない性格だと言うのもわかる

「アルタイル様、こちらです」

「あ、ああ」

 メイドに案内され、自分に用意された席に着くとすぐにパーティーが始まった

「今宵も娘の誕生祝いの席に来ていただき誠にありがとうございます。此度は娘の許嫁であるセレグレイト家がご子息、アルタイル殿も共に祝おうと思います。なんとこの二人、生まれた日も時間も全く同じという不思議な縁でつながっているのです。そうこれぞ正に運命とは思えませんか? まぁ冗談はそこそこにして、お楽しみいただければ幸いです」


 アスティラちゃんを探すと、ガイアさんの横にちょこんと座っていた

 ガイアさんの存在感が強すぎて気づかなかったけど、相当な美少女じゃないか!

 微笑む姿はまるで白百合のようだ

 すぐに席に近づき挨拶に行くと太陽のような笑顔でこちらを振り向いた

 それから二人だけで話すと、まるで初めて会ったような気がせず、長く共にいたかのような親近感を得た

 この子となら、ずっと一緒にいられるんじゃないか? そう思って彼女にも聞いてみると、彼女もそうだと答えてくれた

 まだ結婚は先だけど、彼女なら、いいパートナーになるよ絶対

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ