勇者3
ここはコープスライド魔導学園の訓練場
僕ももう10歳になった
学園にも慣れて友達もたくさんできたし、トップの成績を取ることもできている
そう言えば五年後には別の学園との交流会もある
これは15歳になった生徒同士が各地の学園との交流を図ってお互いに仲良くやりましょう的な感じで開催されるらしい
他校の実力を見てお互いを高めあうって言う目的もあるみたいだ
その時まで一所懸命勉強して、力を高めておこう
それに
「点」
空中にたくさんの点が浮かび、それらを自在に操る
銃の弾のように一斉に射出されて的を射抜く
この力、使いこなしてみれば非常に扱いやすい上に、強力だ
的は穴だらけになって倒れる
「うんうんいい感じ。でもこの力を使うときは誰もいないのを確認しないとね」
この力のことは一応秘密だ
固有スキルは特別なスキルみたいで、総じて強力なものが多いと聞いた
一応秘密にしておいた方がいいかなって判断かな
「あら、アルタイル様ー!」
「げっ、アンタレス、ちゃん!」
「アルタイル様! わたくしも訓練をしに来たのです! どうぞみて下さいませ!」
「う、うん」
「これぞ我が大魔法の力! メテオスター!!」
「わわわ! こんなとこでそんな魔法使うんじゃないって!」
「えー、でもー、アルタイル様に見ていただきたくてー」
「だめだめだめ、訓練場が壊れるって」
何とかなだめて、普通の魔法を使ってもらうことにした
この子は僕のことが好きらしい。まぁ行動を見ればすぐわかる
視線が恋する乙女のそれだし。元乙女としては分かりやすいったらありゃしない
そんな彼女はくるくると回りながら優雅に炎の魔法を的に撃っている
「どうですかアルタイル様! わたくしすごーく練習しましたの!」
「うん、すごいね。的が黒焦げだ…」
「ふっふーん、アルタイル様に褒められましたわ! 嬉しいです!」
「はいはい、そろそろ授業が始まるから戻ろう」
「はい!」
僕のクラスは10人の少数クラス。と言っても魔族の子供は数が少ないから、これが普通なんだけどね
大きな街ごとにある学園だけど、生徒数は人間族に比べるとはるかに少ない
それなのに人間たちは、魔王様の意志も無視して魔族を滅ぼそうとしている
どうしてそんなことができるんだろう?
僕は魔族でありながら勇者として生まれた。それなら、世界を正すのが勇者なんだと思う
前世で璃玖が言っていた。勇者は罪無き者を守って世界をより良い世界に導く存在。魔王を倒すだけが勇者じゃなくて、世界を戻すのが勇者なんだ
授業を終えて帰路に就く
相変わらずアンタレスちゃんは私にずっと付きまとっている
この子に会ったのは学園に入ってすぐだった
突然私の前に来たと思ったら
「まぁ何てイケメン! 一目ぼれしましたわ!」
とか言ってそれ以来ずーーーっと僕に付いて回っている
今日だって多分僕の後をつけて訓練場に来たに違いない
この子は結構口が堅く、固有スキルのことについては知っていても誰にも話さないからいいんだけどね
それにしても、べったりくっつくのはやめて欲しい
僕には一応許嫁がいるって教えてあるはずなんだけどなぁ
相手は副都ベイクルンバルの公爵家令嬢で、名前はアスティラ・ベルドモント
非常に聡明で力強く、可愛らしいとこの学園にまで名前が轟いている子らしい
まだ会えたことが無いけど、お父様の親友の娘なのだとか
同じ日に生まれた、まるで運命が二人を結び付けているかのような存在
会った事もないのに不思議な縁と魅力を感じていた
向こうはどうなのか知らないけれどね
早く合ってみたいけど、15歳の誕生日まではお預け、か
女の子に魅力を感じるって男の子っぽくない?
体が男の子になってから心もそうなって行ってるみたいってのがまた不思議なところではあるね
それに最近じゃ私って言うことも少なくなってきて、僕ってちゃんと言えるようになってきてるし
「はぁ、わたくしはこちら方面なのですわ。また明日お会いしましょうねアルタイル様ぁ!」
「う、うん、また明日ね、アンタレス」
大きく手を振って走って行ってしまうアンタレス
そう言えばこの辺りの子供ってなぜか地球で言う星の名前が付けられてる
お父様はこと座のベガ、僕はわし座のアルタイルだし、アンタレスはさそり座
他にも同級生に双子座のポルックス姉妹という双子、ポルックス・マナ・ハセナとポルックス・ミナ・ハセナという姉妹なんだ。
それでね、双子はやっぱりこの国では珍しいらしい
それだけに一度誘拐されたことのある彼女たちは、戻って来た時それはもう街をあげての祝賀会がもようされたほどだ
あの二人を助けた謎の少女と言うのも気になるけど、魔族の子供が金になるからと攫った人間族は本当に許せない
もしその謎の少女が間に合っていなければ、あの双子もどうなっていたかわからないし
国中でその少女に感謝しようと探しているけど、いまだに見つかっていないらしい
いずれ僕も会ってみたいな




