生まれたけど何か変なんですが23
黒い魔物もすでに珍しくなくなって、私が生まれてから14年が経った
みんなすっかり成長して、今からでも黒い魔物と戦おうが問題なく対処できるほどに
うーん、あれから人間族も幾度となく攻め込んできているけど、魔族になんの打撃も与えられないままただイタズラに犠牲者が増えるだけ
勇者の情報も生まれたということ以外入ってこないし、人間族の動向がよく分からない
何故そんなにも大量の人々を、まるで使い捨てのようにこちらに送ってくるのだろう?
彼らにだって当然家族はあるだろうし、戦いたくない人だっていっぱいいる
それなのに、彼らは泣きながらも自滅覚悟で飛び込んでくる
中には魔力を暴走させて本当に自爆してくる兵もいるらしい
彼らはそうまでして、なぜ魔族を倒そうとするのか…
父様やお姉ちゃんも頭を悩ませていた
そんな日々が続くある日のこと、私は運命的な出会いをした
15歳の誕生日を迎えたパーティの当日
毎年のようにあげられる盛大な祝いの儀式の中、その子は私の前に立った
名前はアルタイル・セレグレイト
私と同じ公爵家の跡取り息子で、非常に礼儀正しい少年だった
「こんにちは、アスティラさん。僕はアルタイル・セレグレイト。父君のガイアさんとは何度か会った事はあるのですが、わたし…。僕と君は会うのは初めてですよね?」
「は、はい。よろしくお願いします。私はアスティラ・ベルドモントです」
「フフ、緊張していますね? それにしても、あなたとは初めてあった気がしませんね」
「それは、確かに、私も感じています」
「意外と前世からの縁なのかもしれませんね、なんて」
そう言われてお互い笑い合う
彼とは本当に初めてあった気がしなくて、懐かしさと親近感を覚える
父様から彼の話はよく聞いていた。親友にできた息子で、私と同じ日に生まれた特別な子
実は許嫁だったりもする
あと二年で成人であるため今回初顔合わせとなったんだよね
「いやぁ、話には聞いていたよ。そうとうおてんばだってね」
「あ、いや、それはその」
「それに、実力者だって。僕はコープスライド魔導学園の生徒なんだ。今度交流会もあるし、どうかな? その時また二人でお話でも」
「は、はい」
彼のイケメンスマイルで見られて、かなりときめいてしまった。これは女性陣がほっときませんねぇ
かくいう私も惚れてしまっているんだから
いやぁ15年も女性をやっているとやっぱりそちらに心が対応してしまうんだろうね
「それじゃあ、ちょっと一緒に回ろうか。君のこと色々教えて欲しいな」
「はい!」
二人で手を繋ぎ、それからパーティの中を歩き回った
まず父様と母様の所へ行き、アルタイル君はあいさつした
アルタイル君はものすごく礼儀正しく父様に挨拶して、父様は嬉しそうにうなづいている
「ハハハ、アルタイル、まさしく娘にふさわしく育ったな。父上も鼻が高いだろう」
「いえ、僕などまだまだです」
「どうだアスティラ。お前の許嫁は素晴らしいと思わないか?」
「そ、その、それはその…」
私は恥ずかしさに思わずうつむいてしまった
「ハハ、娘も気に入っているようだ。やはりこの縁談、間違ってはいなかったな。してアルタイル、父上は元気かな?」
「はい、父もガイアさんに会いたがっていましたよ。近頃黒い魔物の激化、人間族の絶え間ない進行によってなかなか会えないと嘆いていました。次に会った時には酒でも酌み交わしましょうと言ってました」
「ハハハ、そうか、ベガも相変わらずだな」
「はい」
むー、二人だけで話してずるい
でも、楽しそうで私も嬉しいな
それから二人でみんなの所を回ってあいさつ回り
許嫁の初お披露目のような形になってしまった
そんな楽しい時間も過ぎて、二人でベランダに出る
「さっき、初めてあった気がしないって言ったけど、どうかな? 初めてなのにこんなこと言っていいのか分からないけど、僕は君と一緒にいたいって思った。君は…」
「私も、同じです。なんだかあなたといると、胸の奥が暖かくて、安心できるの」
彼とは仲良くやっていけそうな気がする
とはいっても結婚はまだまだ先だけどね
成人してしばらく経ってからかな
「ともかく今日はもう遅い。僕はそろそろ帰るよ」
「はい、またお会いしましょう」
「うん」
彼が帰ってから私は彼のことで頭がいっぱいになっていた
彼の顔が頭から離れない
これが、恋?
うーん、元男としては男の子に恋してるって言うのもなんというか、変
いやまぁ確かに今女の子だから問題はないんだけど…
よし、気にしない気にしない
もう女の子になってから15年もたつんだし、切り替えよう




