生まれたけど何か変なんですが21
お姉ちゃんの顔は真っ青で、呼吸も弱弱しい
横で部下の男性がかなり心配そうにお姉ちゃんをのぞき込んでいる
確かお姉ちゃんが優秀だって認めてたカイン・マイシアといい、普通の家からたたき上げで騎士爵に上り詰めた実力者
彼を守ってお姉ちゃんは毒を浴びたらしい
そっか、この二人…
私はすぐに毒の治療を始めた。時は一刻を争う
まず体内を回っている毒素を血液から分離して、毒によって破壊された体組織を再生させていく
結構これが繊細な作業みたいで、初めてやったけどかなり難しい
でもお姉ちゃんを救うためにはここで頑張らなくてどうするんだ
集中力を限界まで研ぎ澄まして、壊れた血管を元通りにして、毒素を完全に抜き切った
でもまだ予断を許さない。心臓の鼓動がしなくなったんだ
スキル“医学知識”でその場合の対処方法を確認した
それを見ながら急いでスキル“薬剤調合”で調合したアドレナリンを投与して様子を見る
それでも心臓は動かなかったために次の手段として電気ショックを試みることにした
手に雷の魔法を纏わせてチャージすると胸に電撃を流した
「こんな治療見たことないですよ。一体どこでこのような知識を?」
「えっと、エルフの医師に習ったんです。これなら、彼女を救えます!」
バチュンという大きな音と共にお姉ちゃんの体が大きく跳ね上がる
一度では戻らなかったので二度目、三度目
それでようやく鼓動が戻った
急いで自立呼吸にまで戻すとお姉ちゃんはカフカフとせき込んだ
顔色も少し戻ったみたいで、カインさんもホッと胸をなでおろしているよ
「これで大丈夫なはずですが、念のため治療院での療養をお勧めします」
「本当にありがとうございました! あの、貴方は?」
「わ、私は、レナです」
偽名を名乗って私は逃げるように転移で家に帰った
家には今母様とメイドだけしかいないので、自分の部屋に戻って何事もなかったかのように普段通り行動
あれだけ不安に駆られた胸騒ぎはもうない
あの胸騒ぎはお姉ちゃんが死の危機に瀕することを意味していたのか
これは多分スキル“虫の知らせ”ってやつのおかげなのかも。これは未来に起こりうる不安要素を察知して胸騒ぎとして知らせてくれると言うものだ
お姉ちゃんも無事救えたことだし、そうなるとお腹もすいてきたので部屋を出た
ちょうどお昼をレッピィが用意してくれていたので母様とその料理を楽しむ
レッピィは非常に料理が上手くなっていて、プロレベルと言ってもいいかも
お腹もいっぱいになったころに報告が入った
お姉ちゃんが治療院に運び込まれたことについてだったので、母様も心配していた
でも命に別状はないし、今は落ち着いていると聞いて母様もホッとしてる
でも念のためその治療院に母様と駆け込んで、お姉ちゃんの様子を見に行くことにしたんだけど、行ってみてびっくり、思った以上に元気だった
お姉ちゃんはもうすっかり良くなったみたいで、もう立って歩きまわって私に抱き着いた
「ああアスティラ! 僕はもう会えないとおもっていたんだよ! あの魔物の毒は体内の組織をあっという間に破壊していくものなんだ。もう少しあのレナとかいう冒険者の治療が遅れていたら…。こうしてアスティラを抱きしめることもできなかっただろう。本当に彼女には感謝しているのだが、報奨金を渡す場にもいなかったし、一体彼女はどこへ行ってしまったのだろう」
フフフ、それは私だけが知っているのですよ
でもお姉ちゃんが元気になってくれてよかった
それにしてもなんで黒い魔物たちはこの土地へ集中的に来るんだろうか?
以前来た黒い巨人たちは私を狙っていたというし、もしかして魔物たちも私を狙ってるんだろうか?
そうなると、私のせいでこんな事件に発展しているんだとしたら、私はここにいていいのかな?
数日間考えた。黒い魔物が何か目的を持ってるのは間違いないと思うんだ
私を狙っているのか、そこまではまだわからない
だって魔族領各地で発生してるから
もうすぐ私の10歳の誕生日、学院卒業まであと5年、成人まであと40年(魔族は成長が遅いため50歳で成人)
成人まで待たなくても、20歳くらいになれば…。そこまで成長すれば私も戦いに出れる
お姉ちゃんや父様を手伝える
これからはその時に備えて修行をしようかと思うんだ
でもその数日後にまたしても黒い魔物が現れたらしい
らしいって言うのはこの領地じゃなかったからで、魔王様率いる魔王軍が数時間で殲滅しきったみたいだ
その黒い魔物は大群で魔王様の治める領地に侵入してきて、一部の村や町を破壊したんだけど、幸いなことに察知が速かったために怪我人くらいで済んだみたい
魔王様はすごい。いち早く危機を察知してからの行動は素早かった
聞くところによると、魔王様は予言のような力があるらしく、自分の民が危険にさらされたときのみ発動するみたい
そのスキル、それがなにかは分からない。だって私にはそのスキルがないんだもの
多分魔王様固有のスキルなんだと思う
固有スキルって言うのはその職業でしか扱えないとか、その種族しか扱えないとか、ある一定以上の基準を満たさないと使えないとか、要するに特殊なスキルのことで、私でも手にいれることができていないスキルなんだ
そう言えば父様と母様は固有スキルを持っていたはず、今度聞いてみよっかな




