生まれたけど何か変なんですが19
あれからまた2年の月日が流れた
9歳になった私は魔力もかなり上がっていて、それこそ魔王様の幹部と引けを取らないほどの保有量になった
私の魔力が子供ながらに異常ってことは周知の事実だし、それほど気にすることもないかな?
それに魔法もどんどん洗練されてるし、戦闘に至っては達人並みって自負もあるんだよね
で、今何をやっているかというと、一般的な鉄の剣に魔法を込めてマジックアイテムに変えるって作業をしてみてる
マジックアイテムは付与術師が魔力を込めて作ったりするんだけど、凄い付与術師ともなるとレアやエピックをたくさん作り出せるらしい
それと、えっと、何て言ってたかな? たしか魔法鍛冶師だ
魔法鍛冶師は鉄などの金属を打ってマジックアイテムを作り出す職人のことで、彼らに至ってはゴッズという神話クラスの武器や防具を作り出すこともあるらしい
現在ゴッズを作り出せる人の数は世界にたった三人というから貴重な人材ってことね
残念なことに魔族にはいなくて、エルフとドワーフ、それと鬼人にそれぞれ一人ずついる
一応武器や防具は作ってるけど、自分の認めた人にしか作ってくれないらしいからポコポコゴッズなんてものが出回っていないのが幸いかな。だってそんなもの装備した兵がたくさんいたりしたらそれこそとっくに魔族は滅んでる
彼らがそういう武具を作る者はみんな人格者って聞くから、魔族を滅ぼそうと考えてる人じゃないのかも
現にゴッズを持った敵は攻めてきたことが無いらしいし
まあその代わりにその一段階下のファンタズマクラスは何人か相対したらしいけど、魔王様自身がファンタズマの武具の持ち主なので何とかなってたみたい
しばらく試行錯誤して、ようやく一つマジックアイテムができた
スキル“鑑定眼”でレア度を確認してみると、アンコモン。まあ初めてにしてはいい感じかな?
効果は少しの体力増強か、どうしようこれ、そういえば作ったものをどう保管するか考えてなかったよ、うっかりだね
とりあえず家の武器庫に隠すように保管しておいて、まあ別に内緒にする必要なんてないんだけど、ただでさえ同年代の魔族より頭50個くらい飛びぬけてる上に、これ以上とびぬけるのはさすがにどうかと思うのよ
それだけ魔族の付与術師って珍しいみたいだしね
「アスティラ、こんなところにいたのか。でも何で武器庫なんかに?」
「あ、父様、授業で習ったのでどんな武具があるのか見てみてたんです」
「ふむ、アスティラは勉強熱心だな」
父様が頭を撫でながらニコリと笑う
きっと女性が見たら卒倒しそうなほどのイケメンスマイルだと思う
私だってなぜか時々ドキッとするんだもん
母様も相当美人だから母様を見て頬を染める男性も多い
うん、私、恵まれてる
「では俺はこれから魔王様に謁見する用があるから行くよ。勉強頑張るんだぞアスティラ」
「はい!」
翌日私は今度は一般的な皮の防具に魔法を付与していた
昨日よりもより洗練されてると思うんだけど、どうにもいい効果がつかない
まあこれはやっぱり慣れなんだろうね。コツをつかんでいない私と、長年作り続けてる熟練者とでは全然違うもんね
とりあえずいくつか作ってみたけど、レア度はアンコモンとレアばかり
効果も初心者冒険者ならまあ扱えなくもないって感じかな
よし、これも隠しておこう
それからも試行錯誤を繰り返して、20個めに差し掛かる頃にはなんとエピック級の武具を作り出すコツのような物が分かって来た
うんうん、まだまだ成長できるよ私は
毎日学校から帰って来てはそれを繰り返した結果、一か月ほどが経ったころにはエピック級を安定して作り出せるようになってきた
鍛冶もやってみたいけど、家にその設備もないし、公爵家の令嬢が鍛冶師に弟子入りするわけにもいかないね
うーん、これはまあ今後どうにか検討してみよう。転移でどこかの鍛冶師の所へ出向いて弟子入りしてもいいしね
あ、でも鍛冶師になりたいわけじゃないんだよ? もちろん作る時は真剣に向き合うし、真面目にやるけど、将来なりたいかって聞かれたら答えはノンです。せっかく可愛く生まれたんだから、女の子らしいこともしてみたいじゃない
今はいつ人間族が攻めて来るともわからない状況で緊迫しているけど、もし和解できたなら、人間族の街やエルフ族の住む森にもいってみたいし
とにかくやりたいことは山積みで時間もたくさん欲しい
この体に生まれてまだ9年だからね。もっともっと楽しくいきたいよ
魔族生を謳歌するんだ、絶対に!




