表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/130

生まれたけど何か変なんですが18

 よく寝た。ものすごく気分がいい

 私は伸びをしてから周りを見た

 すると母様がコクリコクリと舟をこいでいる

 私は起きあがって母様の手を握った。すると母様はゆっくりと目を開けて私を見た瞬間抱きしめた

「アスティラ! よかった、もう目覚めないのかと」

「母様、もう大丈夫です。心配かけてごめんなさい」

「いいの、いいのですよ。お前が無事ならそれで」

「あの、カルテアお姉ちゃんは?」

「ああ、あの子ならすっかり元気になってもう通常の業務に戻っていますよ。アスティラ、まだ本調子ではないでしょう? まだ休んでいていいのよ?」

 でも私は首を横に振った

「いいえ母様、もう体もすっかりいいみたいなので、明日からは学園にまた通います」

「そう、でも無理は駄目ですよ?」

「はい」

 

 次の日のこと、学園へ行く準備をしてレッピィと一緒に通学

 途中でプラムやアディリアたちと合流

 やっぱりみんなにも心配をかけたみたいで、それについてはごめんなさいと素直に謝った

 ちなみにレッピィは母様と一緒にずっと私を看病してくれてたみたいで、目の下にうっすらとくまができてる

 にもかかわらず彼女はずーーーっとしゃべり続けていて、みんな少しうんざりしたのは秘密

 うん、いつもの通学風景だ。平和だ


 学校に着くとまだ魔導兵団の人達が何人か警備してくれていた

 以前の誘拐騒ぎのことや、黒い魔物たちのこともあっての措置らしい

 私と顔見知りの兵団員もいたので挨拶してから学園内に入って、数日ぶりの授業を受けた

 ああ、平和って素晴らしいね

 友人に囲まれて、授業を受けて、友人と遊んで、こんな平和がずっと続けばいいのに

 その思いは叶わず、ついに来てしまった

 

 私が学園に再び通い始めてから数週間後のこと

 新学期を迎えた学園に、いや、学園だけではなく世界を震撼させる出来事が起こった

 勇者が生まれたのだ

 勇者とは魔王と対を成し世界を魔王から守る存在と言われているけど、現魔王様に世界を征服する意志なんてない

 ではなぜ勇者が生まれたのか?

 考えられる可能性は二つかな?


 一つ目は魔王様が世界征服、つまり人族に危害を及ぼそうと考え至った

 これはまずありえないと言ってもいいね

 だって魔王様は誰が見ても平和を願い、人族との和解の道を模索してるんだもの

 じゃぁ二つ目は?って話なんだけど、これは単純明快

 人族が勇者誕生を偽って魔族に攻撃を仕掛けようとしてるってこと

 数の上では人間族やエルフ族といった人族連合が圧倒的に多く、一気に押し寄せられればこちらに勝ち目はない

 でもあっちもそれこそ甚大な被害を受ける

 魔王様の計算では人族全体の約3分の2が滅びるらしい

 それだけ魔族は強い

 でも、それはお互いにとって何も得る者が無い不毛なもの

 だからこそ人族は勇者が生まれるまで手を出せないでいたんだ

 それなのに、そのはずなのに…

 何を考えているのか? そんなこと分からないけど、勇者が育って準備が整うまでには15年から20年はかかると思われる

 その頃には私も成長しているはずだし、まあそれでも魔族は成長が遅いので、勇者が20歳だった場合の私の見た目は多分12歳くらいの少女だろう。でも、それなりには戦えるようにはなってるはず

 人族と戦うことなんて考えたくないし、魔物なんかと違って彼らには知能や知恵がある

 もしここまで攻めてきたらと思うとゾッとしないな

 そうなったら、私は大切なものを守るために修羅になれるだろうか?

 よくある話、情けをかけたために殺されたり、大切な者を奪われたり…

 人族、特に人間族には勝つためなら手段を択ばない者が多いし、魔族の子供が金になると知って攫おうとする者が多い

 なんで、なんで人は、こんなにも愚かなんだろう…

 もともと人間だった私でも、吐き気がするほどに腹立たしい

 どうして人間は、戦争が好きなんだろう?


「というわけで、この学園でも人族に対抗する手段として、対人戦を学んでもらわなければならなくなりました。魔王様の意図するところではありませんが、最低限身を守れるくらいにはなってもらわなければいけませんね。それではカルテア先生からお話があります」

 学園長先生からそう言った話があった後にお姉ちゃんが壇上に上がる

「僕の可愛い生徒たち、君たちはまだ若く、その命を散らしてほしくはない。だからこそ身を守ってもらいたいんだ。せめて、僕達魔導兵団が駆け付けれる時間しのいでほしい。きっと君たちを助けるから。だから、協力してほしい。これは強制じゃない。戦いたくなければ戦わなくていいんだ。その時は逃げてくれ。そして戦える大人の元へ行くんだ。もし、自分で身を守れるようになりたい、大切な家族や友人を守りたいと思うなら、僕の授業を受けて欲しいな」

 お姉ちゃんの言葉に生徒たちは深くうなづいた

 多分、皆同じ気持ちなんだ

 何度も言うけど魔族は子供が少ない。だからこそ、結束力が強いんだ

 

 そして次の日から、カルテアお姉ちゃん、いや、カルテア先生の対人戦授業が始まった

 これはいかに効率よく相手を動けなくする、もしくは殺すための授業

 殺すというのは物騒かもしれないけど、人族の中には動けなくなっても自爆ぎみにこちらに牙をむいてくる者もいる

 魔族を守るためには、仕方ないことと割り切らなくちゃならないんだ

 私は、お腹の奥がぐるぐるとした気持ちを抱えて、その授業を受けることにした

 分かり合えればいいのに、お互いを認め合えれば、それで済むのに…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ