生まれたけど何か変なんですが14
学校生活は順調
座学はまだまだ習うことが多いけど、剣術も魔法も、格闘術にしても、私は今教える側に回っている
技術だけは一人前ということでどうやって魔法を行使するのか、剣術や体術はどのように動くのかなどを教えてる
そんな日々を繰り返して幸せを感じているさなか、再び事件は起こった
今度は誘拐事件の関係ではなく、そのもっと前、黒く染まったスカルポーンに関係のある事件
その日私達はいつものように登校をしていたんだけど、学園の校門前、生徒が一番集まる朝の時間帯に突如として大きな悲鳴が上がった
その悲鳴を聞きつけて先生たちも駆けつけ、私も慌てるように走って向かうと生徒が数人血を流して倒れ、彼らを治療員の先生(保健の先生のようなもの)が治療していた
倒れた生徒たちの中心にいたのは、真っ黒な鎧を身につけた黒い肌のゴブリン
どう考えてもゴブリンが持つにはあまりにも高級そうな鎧に剣
まるで歴戦の戦士を思わせる風貌を携えていた
ゴブリンというのは森や草原にいる魔族系の亜人種で、賢い者なら進化して鬼人などと言った人とも交流を持つ種族になることもある
でも、一般的なゴブリンは極めて野性的で、討伐団によって討伐されることもあるような種族
魔族とは言っても私達とはあまりにも性質が違う
そして今目の前にいるゴブリンは理知的な顔をしていて、明らかに普通のゴブリンとは一線を画してる
一目見て分かった
このゴブリン、強い
「ゴブリンは亜人種ですが、私の生徒を傷つけたこと、許しては置けません」
細長い剣、スティレットを構えたペパーミント色のふんわり髪の女性がそのゴブリンに剣先を向ける
彼女は剣術の先生の一人、クララベル・フェール先生
生徒思いの優しい先生で、自身が子供のできない体であるため特に子供の守護者のような人だ
大好きな子供達を傷つけた者を決して許さないことでも有名で、以前蜂型の魔物に生徒が刺された時は、その魔物の巣事全滅させたという逸話を持つ
当然先生は、ブチギレていた
クララベル先生は静かに怒るタイプで、そうなると周りの先生方も止めることなんてできない
クララベル先生が動き出すのを見て、黒ゴブリンは剣を構えた
お互い当然のように隙が無くて、どちらが先に動くか読みあいをしているようだった
そうか、この二人、お互いに後の剣なんだ
相手の攻撃に合わせてカウンターを撃ち込むということでということで動けないんだと思う
でも、相手の黒ゴブリンがしびれを切らしたのか先に剣を抜いて先生に切りかかる
「急いては事を仕損じるという異世界の言葉を知らないのですか? 実力は申し分ないですが、功を焦りましたね」
一瞬交差したかと思うと、黒ゴブリンはその場に倒れて様々な箇所から血が噴き出す
あの一瞬で数十か所をスティレットで串刺したんだ
私には見えたけど、周りは何が起こったのか分からないみたい
「ふぅ、大丈夫ですか子供達」
「ええ、幸いにも大した怪我ではありませんでした。それにしても魔王様の管理下でなぜこのようなゴブリンが?」
「ふむ、以前僕が調べた黒いスカルポーンと似ている…。あの時は何もつかめなかったが、この装備、明らかに誰かに与えられたものじゃないか?」
「確かに、銘こそ刻んでいないものの、業物の剣ですよこれ」
私のスキル、“鑑定”でもこの剣はレア級と出てる
このレア級というのは、アイテムの等級を指していて、コモンが一般的なもので、誰にでも扱える
アンコモンがもう少し手が加えられたもので、駆け出しの冒険者や兵なんかが使うもの
さらにその上がレアで、魔法が付与されてることもあって、この剣は切れ味を増す魔法が付与されてたみたい
そしてその上にはエピック、レジェンド、ファンタズマ、ゴッズ、ワールドエンドがあるらしい
レジェンドまでなら金持ちが持ってたり、英雄何て呼ばれる人族が持ってたりするけど、その上からはまさしく幻想や神話だって
ただ、うちにはそのファンタズマの杖が宝杖として飾られてたりもする
私のご先祖様がかつての魔王様から頂いたそうで、今でも大切にされている
まぁそれはさておいて、一ゴブリンがレア級の剣を持ってたってことが不思議なんだそうで、それに鎧にしたって人間族などからはぎ取ったにしてはこのゴブリンのサイズにあったように作られているのが分かる
ってことはやっぱり誰かがこの黒ゴブリンに装備を与えてここに出現させたと考えるのが正しいと思う
ひとまず鎧なんかの出所を調べるために回収され、ゴブリンの遺体も解剖されることになった
そうそう、この世界一応解剖して身体を調べるって概念があって、それによって魔法を使わない医療による完治も可能になった
その核心的な技術も異世界人と呼ばれる人たちによるものらしい
そのうち会うこともあるかも
そしてそれから数日が経過して、そのゴブリンに鎧を渡した人物が誰なのか、それが分かった
その人物とは、アディリアの父親、グラ・メイフォーンスさんだった




