生まれたけど何か変なんですが13
「お食事のご用意ができましたお嬢様!」
そう言って私の部屋まで呼びに来てくれたのは、人間族とエルフ族のハーフである少女レッピィ・アルビニー
姓であるアルビニーというのは母親であるエルフの姓らしい
父親は人間族だったけど、奴隷にされそうになっていた母親を助けたことでお互い恋に落ちて、大恋愛の末に婿養子としてエルフ族に迎えられたんだとか
しかし彼女は、故郷であるエルフの村を人間族の盗賊団に襲われて両親とは死別、故郷もなくなっていたため身寄りがない
そう、この子はあの掴まっていた他種族の少年少女の一人だ
他の9人はなんとか故郷の両親の元へ送り返すことができたんだけど、身寄りが無く奴隷となっていたこの子だけは家で引き取ってメイドとして面倒を見ることになった
「どうにも俺はこういった孤児に縁があるらしい」
と父様が笑っていたっけ
最初のうちこそ少し怯えていたものの、私を命の恩人と崇め、私達家族やメイドたちの優しさに触れて次第に心を開いて行ってくれた
年齢は15歳くらいに見えたけど、まだ12歳になったばかりだと言うのは驚きだったな
仕事にも慣れたみたいで、今ではメイドっぷりが板について来ている
あの魔族の子誘拐事件からすでに1年が経過していた
6歳になった私は相変わらず学校でたくさんのことを学んでいる最中だ
友人たちとも良好な関係を築けている
「お嬢様、ボーっとしていないでお着換えを」
「あ、うん、ごめんレッピィ」
エルフよりかは短めの耳をピクピク動かしているのが可愛い
彼女はハーフエルフゆえか精霊魔法を使える上に、普通の魔法の扱いも超一流だったため、日中は私と一緒に学校に通っている
つまりこの後彼女も一緒に学校へ行くってことだ
今まで学園生活などしたことの無かった彼女にとって魔族と言えど友達になれるのが嬉しかったようで、毎日楽しそうに通い、その日の出来事を私に語ってくれる
最初こそいじめられるのでは?っていう心配はあったんだけど、その心配はなかった
さすがに12歳ともなると分別もついて来て、彼女の身の上を聞いた生徒たちはみんな受け入れてくれたようだ
「それでですね! その男の子がいつも私のスカートをまくり上げてパンツを見て来るんです! どう思いますかお嬢様!」
で、私が朝食を食べているときに横でまくし立てるように彼女はそう話してくれた
うん、それはあれだ、思春期の男子が好きな女の子についついやっちゃう意地悪ってやつだね
まぁまぁ幸せそうなことで安心しましたよ私
「一回注意してみたらいいじゃない。そうそう、目に涙でも浮かべて睨みながらやめて!って言えば向こうも引き下がってくれるわ」
「そ、そうなのですか? じゃぁ今日やってみます!」
「ええ、でもあんまり号泣しちゃだめよ? 向こうがショックを受けちゃうから」
「は、はぁ、難しいものですねぇ」
ちなみにレッピィが私とこうして気楽に話しているのは、父様がいい話し相手になると思って好きなようにさせてるからだ
何せメイドとこの家の主人の娘だから、本来なら身分の差というものがあるけど、父様はそんなことを気にしない人だからね
それからレッピィの話を聞きながら朝食を食べ終え(彼女はしゃべりすぎてまだ食べ終わってない)、学園へ行く用意を始めた
「あ、私もすぐ用意してきます!」
まるで漫画のようにパンを銜えた彼女は着替えを済ませ、慌てながら待っている私の横へ走って来た
「お~待たせしましたお嬢様! 行きましょう!」
ちなみにだけど、レッピィはお姉ちゃんの厳しい訓練を受けて戦闘メイドとしての頭角を現してきている
すっごくすじがよかったらしくて、お姉ちゃんは是非とも魔導騎士団に欲しいと言ってたけど、レッピィはどうしても私の護衛になりたいってことで常に私のそばにいた(学園では先生方がいるし、自分の授業があるから離れてるけどね)
あとレッピィって放っておいたらいつまでも話し続けるんじゃないかな
よくもまぁこう無限弾のマシンガンのようにぺらぺらぺらぺらと話題が尽きないものですよ
学園に着くと門の前ではフレアやアディリア、ソル君にプラムと言ったいつものメンツがそろって私の到着を待っていた
普段なら私が最初なんだけど、今日はレッピィの話に付き合ってたからゆっくり歩いたんだよね
「おや、もう学園ですか、時が立つのは早いものですね。では私は自分の教室へ行きますのでまた放課後に。それとお嬢様、お弁当をお渡しするのを忘れていました。こちら私のお手製ですのでその、食べた感想を後でお聞かせいただけると嬉しいです。あ! それとですね、今夜はお嬢様の好きなハンバーグだそうです。ちゃんと香草のナツメグを入れて臭みを抜いてあるそうですよ、料理長が言ってました! それとですねぇ…」
「分かった! 分かったからレッピィ、もう授業始まっちゃうから! 放課後また聞くから! ね?」
「そうですか、ではまた放課後に」
ふぅ、あまりにも早口でまくし立てるようにしゃべくるから止めるのに苦労するよまったく
苦笑いする友人たちと連れ立って私は教室へと急いだ




