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八つ目の世界7

 全く効いてない!

 魔物はグゲゲゲと鳴くとアイリシアちゃんと同じ動きで後ろに回り込んだ

「危ない!」

 振りかぶられた爪による攻撃をセラビシアちゃんが受けとめてはじき返す

「た、助かったセラビシア、ありがとう」

「うむ、油断しちゃだめだぞ」

 二人の連携はとても会ったばかりとは思えないほど洗練されていて、お互いがお互いの死角を埋め合い、攻撃と防御をそつなくこなしていた

 まるでダンスを見ているかのように優雅で華麗な動き

「こいつ、さっきから攻撃を受けてるのにまるで意に介さない」

「うむ、我が隙を作る。アイリシアは最大攻撃を撃ち込んでくれ」

「分かったぞ!」

 セラビシアちゃんがアイリシアちゃんから離れるとおとりになるようにして魔物を挑発し始めた

 子供っぽくお尻をぺんぺんと叩きながら舌を出してあかんべーの表情

 でもそれは意外と効果があったようで、怒った魔物がめちゃくちゃに爪を振り回して突進してきた

「今だ!」

 セラビシアちゃんが突進を飛び越えたのを合図に、すぐ後ろに控えていたアイリシアちゃんが神力をありったけ込めた炎と氷による連撃で魔物の胸辺りを攻撃した

 炎で熱をあげ、氷で一気に冷ます

 それを繰り返し繰り返し行ったことで魔物の胸部、硬かったうろこ状の部分がパキンと割れて内部がむき出しになった

 その弱点となった部分をセラビシアちゃんが貫いた

「ぐ、げぇ」

 魔物は驚いたような表情を浮かべ、その場にドシャリと膝をついた

 そして顔を覆っていた黒い鱗のような物がポロポロと剥がれていく

 そこからは理性が戻った魔族の顔が出てきた

「あ、ありがとう・・・」

 彼は一言だけそう言うと倒れ込み、砂となって消え去った

 最後に魔族としての本来の姿を取り戻したのね・・・

「復讐は果たしたぞ父上・・・。しかし復讐とは、かくも悲しく虚しいものなのだな」

 アイリシアちゃんの肩にそっと手を置くと私は慰めるように抱き寄せた

 この子の心が壊れないように

「ありがとうアスティラ。余は大丈夫だ。少しだが心が軽くなった」

 思ったよりも強い子だ。セラビシアちゃんも何かしてあげようとキョロキョロとして、自分の取っておいたおかしを取り出してアイリシアちゃんに渡した

「これはチョコというものなのだ。我はいっぱい持ってるからアイリシアが食べるといい。元気になるぞ」

「ありがとう」

 少女魔王二人は古くからの親友のように仲良くなっている

 これならこの子を連れて行ってもうまくやっていけそうね、なんて思っていたらセラビシアちゃんが思わぬことを言った

「我はアイリシアと共にここに残ろうと思うのだ」

「え!?」

 私達は驚いた

「彼女が立派な魔王になるのを見届けたらまた合流するのだ。それに他の魔族も見つけてあげたいのだ」

「セラビシア・・・」

 アイリシアも驚いたみたいで、どう反応していいのか分からないって顔してる

「それに我が一緒に行かなくてもアスティラなら我らを召喚できるのだろう?」

「ええ、でも戦いが終わった後どうやって故郷に帰るつもりなの?」

「それはまぁ何とでもなるだろう。我も力をつけたから多分できるぞ」

「その子の言う通りよ。セラビシアなら転移は可能ね。でも座標を指定できないからどこに飛ぶかは全くの未知よ? 幾千幾万幾億もの世界を飛び続けるつもりなの?」

「う、それは・・・」

「はぁ、私達なら運んであげられるから、終わったら連れて帰ってあげるわよ」

「本当ですかルニア様!」

「まぁあんたを連れ出したのは私達だもの。それくらいはちゃんと面倒見るわよ」

 この一言で話は決まった

 私達はここでセラビシアちゃんと分かれることとなり、二人の少女魔王と召喚の絆を結んだ

 きっと白との戦いのときに一緒に戦ってくれると誓ってくれた二人

 少し寂しい気はするけど、今はアイリシアちゃんに誰かが付いていてあげた方がいいかも

 こうしてこの世界での役目も終わって、私達は世界を渡った

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