八つ目の世界3
「そう言えばこれはよもやま話として聞いて欲しいんだけど、この世界のどこかにたった一人で放浪を続け、様々な街や国を救っている旅人がいるらしい。正体は分からないんだが、魔族ともエルフとも、実は伝説のハイヒューマンだとも言われているんだ」
セスさんは目を輝かせながらその話を私達にしてくれた
というのも私達の目的を話したから
強者を探して仲間にして脅威に備えるとだけ説明したんだけど、恩人の役に立つならと教えてくれたみたい
それでその旅人のことなんだけど、この街にはきたことがないらしく、放浪魔族から聞きかじっただけの本当によもやま話
それでも語る放浪魔族は真剣そのもので、とても真に迫っていたんだとか
「まぁどう聞いても眉唾だ。あんたたちのように高い魔力を持っているならまだしも、その者から魔力を感じなかったというから何かで聞いた話を脚色したんだろう」
その可能性もあるけど、私は探してみる価値はあると思う
魔力濃度が高すぎて探知がうまく働らかないこの世界では探すのは難しいかもしれないけど、とりあえずは街や国を回ってその人を探してみよう
「ありがとうございましたセスさん。とても参考になりました」
「いやいや、この程度しかお礼ができない自分が恥ずかしいよ。あんたたちには感謝してもしきれないからね」
コーヒーを啜りながら彼はニコリと笑った
翌日、セスさんにお礼を言ってから私達はこの街を去った
街の人達にはかなり感謝されたからちょっとむず痒いわね
「この道を真っ直ぐ行けば次の街に付きます。距離はかなり離れてるので厳しい旅になるかもしれませんが、もし危ないようなら戻ってきてください」
「そんな心配いらないわよ。これでもこの世界では敵なしって自負はあるもの」
ルニア様の堂々たる言葉に私達も励まされつつ歩き出した
道中は巨大な動物を倒したり、魔物を倒したりとそれなりに忙しかったけど、魔力濃度の濃いこの世界では私達自身も強化されてるから問題なく進めたわ
まぁ魔物も巨大すぎてびっくりしちゃったけどね
考えてみたら動物が魔物化してるんだから、この世界の巨大動物なら魔物化しても巨大に決まってるじゃない
とは言っても強さは大したことないし、そこまで問題はないわ
大した苦も無くまっすぐ道を進んで約三日、ようやく次の街が見えてきた
ここも人間族の街みたいで、一応セスさんからの紹介状もあるから怪しまれることもなく普通に通された
そしてセスさんの街と同じく結界を強化して、さらにたくさんの食料を取ってって感じでここでの生活も始まった
とはいっても明日には旅立つんだけどね
役に立てたおかげで彼らからも情報を得ることができた
その話によると、件のとてつもなく強いと言われる旅人はこの街に一度だけ寄ったらしい
ただそれももう数十年前の話だから本当の話かどうかも分からないんだって
なにせ会ったって人が老人だからもう亡くなってるのよね
とりあえずはどこに向かったのかを聞いてまた翌日に旅立った
次に目指すのはさらに道を真っ直ぐに行った人間族の街
この街には人間の王族がいるらしいから会ってみようと思うの
結構簡単に会えるみたい
王様って言ってもリーダーみたいなもので、民衆もため口で話せるほど気さくなんだとか
ここでの王様の称号は役職に近いものなのかも
そして歩き続けて今度は一週間くらいかかった
ようやくといった感じで街に着くと、魔族と言うこともあってかかなり歓迎されたわ
それにセスさんからの紹介状もあったしね
なんであの人こんなにも幅が聞くのかと思ったら、あの人現王様の弟らしい
そんなこと一言も言ってなかったからびっくりよね
まぁそんなわけでこの街でも受け入れられた私達はさっそく結界を強化して獲物を取って、更なる信頼を勝ち得たのでした




