八つ目の世界1
着いた瞬間肌で感じた
ビリビリと痛いくらいに突き刺す魔力の奔流。この世界には唸るほどの魔力があるみたいね
それにしても女神様二柱は涼しい顔してるわね
魔族である私やアルタイル、セラビシアちゃんですらちょっと苦しいって言うのに
フィエラもなんだか調子が悪そう
魔力は私達魔族にとって害になるものじゃないはずなのに、過ぎるとやっぱり駄目なのかしら?
「この魔力の多さ、今までで一番かもね。お姉ちゃん、四人に結界を張ってあげて」
「ええ、ここまで魔力が多いとなると周囲の魔力に影響されて魔物化するかもしれませんから」
「え!?」
「まぁ神力を持つあなた達なら大丈夫だとは思いますが、念のためですよ」
魔力があまりに強すぎるとたまに魔物化という現象が起きるらしい
一般的に神様や神力、仙力を持つ者なら魔物化しにくいんだけど、本当にごくまれに魔物になってしまうことがあるみたい
サニア様が私達に結界を張ってくれたことでさっきまでの苦しさはなくなった
私は周囲を確認してみる
さっきまでは魔力で周囲が揺らいで見えてたけど、こうして見ると自然豊かな綺麗な世界だった
春なのか暖かくて、深緑が芽吹き風が爽やかな香りを運んでくる
鳥のさえずりが聞こえるけど、鳥の姿を見て驚いた
小鳥? 見た目は小鳥だけどその大きさが大きすぎる
全長は恐らく五メートルはあるんじゃない? 見た感じはスズメに似てるわ
「うわぁなんだあれ、我の知る小鳥じゃないぞ。あんなもの我は知らん! でかくて可愛くない!」
セラビシアちゃんの言うことも最もだけど、その鳥は私達には目もくれず地面を突っつき始めた
何してるのかしらと見ていたら地面にみるみる穴が開き、そこから何か長いモノを引きずり出した
「何あれ・・・」
絶句してると全体が引きずり出されてようやく何か分かった
巨大ミミズだわ・・・。あれだけ大きいと大蛇みたい
「うげぇ、気持ち悪いぞ。あんなものを食べるのかここの鳥は」
「普通の小鳥もミミズは食べるけどね。あそこまで大きなミミズは無理だろうけど」
引きずり出したミミズを咥えて鳥はどこかへと再び飛び去った
何もかもが大きい世界なのかしら? でも森は普通よね。木だってそこまで大きいわけじゃないし
とりあえずこの辺りに何かないか空を飛んで見てみて、私はまた驚いた
私達が木だと思っていたものはただの雑草!? そこかしこに見えるのは空を突き抜けるかのように巨大な木々
この世界は何もかもが巨大な世界だった
少し落ち着いたところで歩き出す
この分だと住人もあのアトラス様の子供達のように巨大なのかしら?
とにかく今は知識生命体を探すのが先決よね
「むー、魔力が多すぎて探知がやりにくいわね。お姉ちゃんはどう?」
「うーん駄目、仕方ないわ。地道に探しましょう」
地道にって・・・。この世界かなり広そう
これは骨が折れるわ
でもそんな心配はすぐになくなった
なんと私達くらいの大きさの何かが作ったような道があったんだから
「もしかしたら知識生命体はそこまで大きくないのかもしれませんね。ルニア、警戒しつつこの道を進みましょう」
「うん」
道はずっと真っ直ぐに続いていて、しばらく進んでいると整備された道に出た
これで十中八九知識のある何かがいることが分かったわ
その整備された道を進んでいくとなんとかなり発展した街が見えてきた
これだけ大きな動物たちがいる世界にもかかわらずどうやってこれほどの街を築き上げたのかしら
疑問は街の傍まで来て分かった
街には強力な結界が張ってあって、街めがけて飛来する鳥やそのほかの動物を寄せ付けない作りになってる
私達は意気揚々とその街に入ろうとしたんだけど、入り口を通った瞬間警報が鳴り始めた
なになになに? そんな高度な技術もあるの?
そんな疑問は置いておいて、私達を取り囲んだ警備兵らしき人達を何とかしないと
見たところ普通の人間と同じ姿ね
ただ私達を敵視しているのは間違いない
「何だお前たちは! どこから来た!」
「この魔力の中無事だと? 一体何者だ」
口々に私達に質問を浴びせかけて来る。その中の一人が突然持っていた銃を撃った
幸いにもルニア様がはじいたけど、確実に殺そうとしてきたわね
「な!? 弾を、弾いた・・・?」
「話も聞かないでいきなり撃ってくるなんてひどいじゃない。滅ぼされたいわけ?」
「ひっ」
「ルニア様! 抑えてください!」
「分かってるわよ。そんなことでいちいち破壊してたら世界なんて全部無くなっちゃうわ」
ルニア様はつんけんしているように見えてこれで話が分かる女神様。本来はサニア様と同じように優しい性格だからいきなり滅ぼすなんてことはしない
私達を取り囲んでいた警備兵たちはたじろぎ、とりあえず話を聞こうと思ったのかリーダーらしき人が銃を降ろさせた




