生まれたけど何か変なんですが11
「何だこのガキは! どっから現れた!」
「こっちにしてみればお前らの方こそ何だって話なんですよ。とりあえずアディリアは返してもらいますね」
私は超能力系のスキル“テレポート”でアディリアの前まで一瞬で移動すると、今度はアディリアを抱えてそのまま学校の門前に優しく横たえてまた戻って来た
一応探知で先生方がその周囲にはいないことは確認済み、このスキルを見られればややこしいことになるんでね
あとアディリアは人が通りそうなところに寝かせたから多分今頃は発見されてると思う
でだ、私はこっちの悪いおじさんたちをお仕置きしないといけないねぇ
「消えて、また出て来た!? 一体どんな魔法を使ったか知らねぇが、俺たち相手にいい度胸だな。さっきのガキの代わりにもっと上玉が来てくれたんだ。おいてめぇら! 絶対逃がすんじゃねえぞ!」
「へい兄貴!」
男たちは全部で10人、それぞれが剣や斧を持った肉体派ガテン系で汗臭い。お風呂入ってんの?
人間族が半数の五人、あとは獣人と翼人と呼ばれる背中に翼のある種族だ
「どうせ魔族なんだ、世界の敵に何したってかまうこたぁねぇんだよ!」
「世界の敵? それはあなた方が勝手に決めただけでしょう? 我々はただ普通より魔力が高いだけの人です。純粋無垢な子供を攫うあなた方の方がよっぽど悪でしょう?」
「うるせぇ! ガキが生意気な! お前は一番変態の貴族にうっぱらってやる! 金払いはいいがガキと見るやぶっ壊すとんでもない変態にな!」
「それは御免被りたいですね」
こんな小さな子供相手に武器を構えてとびかかる情けない男たちをまとめて魔法で吹き飛ばした
そのおかげで山が一つ崩れたし、男たちはボロボロ(死んではいない)だけど、まあいっか
「う、嘘だろ、何だよこのガキ…。絶対ガキの力じゃ、ねえ」
「あ、兄貴ぃ、いてぇよぉ」
「はいはい、大の男がピーピーピーピー泣くんじゃないです! で、あなたたち今までどれだけ魔族の子を攫いました?」
「はん! 誰が教えるかよ!」
「ああそうですか、教えないと言うなら、足の先から順に切り刻んでいきますね~」
私はにこやかに微笑みながら腰に下げていた剣を抜く
もちろんそんなつもりはないけど、一応脅してみた
「ひぃ! こ、今回が初めてだ! 魔族のガキが高く売れるって聞いて一攫千金を狙ったんだ! 嘘はついていねぇ!」
「ふ~ん、そうですか~」
私のスキルに“見破る”という相手の嘘を見抜くスキルがあったので使ってみたけど、どうやら本当のことみたい
「はぁ、本当のようですね。なら今回は厳重注意で見逃してあげます」
「み、見逃す? 魔族が俺たち人間をか!?」
「はい、次にもし同じことをすれば殺しますけど、またやりますか?」
「し、しない! 神に誓って!」
「ならはい、ちゃんと国に戻ってください」
「いいのか? 本当に。」
「あなた達、子供、家族がいるでしょう?」
「なっ!? どうしてそれを」
「あなたの子供がもし攫われて、同じような目に遭ったらどう思いますか?」
「え? そ、それは…」
「同じなんですよ、私達魔族もあなた方人族も。同じ家族がいるんです。特に魔族は出生率が低くてあの子は一人娘です。それはそれは両親は大切に思っているんです。あなた方も親なら、分かるでしょう?」
「あ、ああ、その、何だ…。すまない。俺たちが間違っていた…。そうだな、いくら金に困っているからと言って、人道に外れる行為だわな。金は地道に稼ぐよ。ありがとうよ嬢ちゃん。危うく俺らは道を踏み外すところだった」
「いえ、分かってくれればいいんです。ところでなんですが」
「ま、まだ何かあるのか?」
「はい、あなた方、どうやってこの国に入ったんですか?」
「ああ、それなら人間族の仲介屋がいるんだよ。そいつは何でも“変化”ってスキルを持っているらしくてな。魔族に化けて俺たちみたいな人間を入国させる手助けをしてるんだ。確か、名前は、あれ? 聞いたはずなのに思い出せねぇ」
「そうですか、情報提供感謝します。その人がどこにいるかは分かりますか?」
「ああ、この先の国境にある検問所近くの村だ。それは間違いねぇ」
「あともう一つだけ、この催眠の魔道具はどうやって手にいれたのですか?」
「それも同じだ。仲介屋から買ったんだ。自分で作ったって言ってた」
私は念のため彼らに付いて行って国境近くまで来た
国境から外れたニララクライ山、その山道の途中にどうやら魔族に気づかれないように作られた抜け穴があるみたいで、彼らを送ってから私はその抜け穴を塞いだ
これでここから出入りする人間はいなくなる、と思うけど、その魔族に化けているという人間を見つけなければまた被害者が出るかも
私はそこからすぐに学園に戻った
学園ではアディリアが見つかったと大騒ぎになっていて、無事見つかったことにアディリアの両親は泣きながら先生方に感謝を述べていた
アディリアは学校に来る途中からの記憶がすっぽりと抜け落ちているらしく、なんで校門の前で寝ていたのかもわからないらしい
覚えていない…。あの男たちが持っていた、仲介屋から買ったというこの魔道具、相当ヤバい代物なのかも
仲介屋がその一人とは限らない、というか十中八九複数人、悪くすると組織が動いているはず
さすがに5歳児が一人で解決できる問題じゃないと考え、私はお姉ちゃんに相談することにした




