七つ目の世界1
フィエラは私にずっとべっとり引っ付いたまま歩いてる
ここはのどかな草原地帯で周りに魔物のような敵も見当たらない
私達はとりあえず人がいそうな場所へ移動することにした
「この世界にはどうやら新世代はいない、かも」
「かもですか?」
「まだ覚醒してない、あるいは隠してる可能性もあるから」
なるほど、でもルニア様の感知にもかからないって結構な精度だと思うわ
だってルニア様は感知することで一つの世界丸々を見ることができるんだもの
「ふぅ、魔力はあるみたいだけど薄いみたいね。ここでは魔法を使う者は恐らくいない。私達も来たことない世界だし、何がいるかは分からないわ」
確かにまだ来たばかりで何が起こるかも分からない。気を引き締めて行かないとね
でも周りには小動物がちょこちょこいるくらいで本当に平和そのもの
小鳥なんかもたくさん飛んでるし、悪いところがない
しばらく歩いてると街道らしき整備された道が見えてきた
これで人、もしくは知能の高い生物がいることは分かったわ
この街道に沿って行けばきっと知識生命体がいるはず
どちらの方向に進めばいいか分からないけれど、街道は街と街、村と村を結ぶためのもの
どちらに行こうと人がいるはず
「お姉ちゃん、あれ見て」
少し進んだところに何かが転がっているのが見えた
確認しようと近づくと物凄い腐臭がして吐き気がこみあげて来る
「これは、死体? あまりにも損傷が激しくて動物か人かもわかりませんね」
臭いがとにかくすごくて、死後一か月くらいは経っているかも
食い荒らされたのかところどころ骨も出てるし、頭や手足がない
胴体だけのこの死体はサニア様が詳しく調べることになった
「サイコメトリー」
サニア様が使った力は魔法でも神力でもない超能力と呼ばれる部類の力
人間の可能性を引き出す力みたい
その力でその死体の過去を探ってる
「なんてこと・・・。この死体は、人のものです」
「人!? こんな街道沿いに一か月近くも放置されてるってこと!?」
「ええルニア、どうやらこの方はあちらから次の街へ旅していた女性のようです。ここで同じ人族の野盗に襲われ、嬲り殺されてしまったようです」
「じゃあその野盗はなぜこんなところに死体を?」
「自分たちの犯罪を見せつけるためでしょう。それにこの死体を片付けない理由、それは野盗がこの辺りを支配しているからです」
サニア様が読み取った情報によると、この死体の女性は別の女性たちとパーティを組んだ冒険者だったようで、ものすごい数の野盗がこの辺りに潜んでいるとは夢にも思わない遠くの街から来た人たちだった
リーダーだった彼女は他の仲間を逃がすために一人で戦い、掴まってその場で慰み者になって散々痛めつけられて殺された
それも悲惨な方法で苦しめられて殺されている
最後には自ら死を乞うほどの苦痛を与えられてたみたい
そして逃げた仲間たちも、掴まって隠れ家で・・・
胸糞悪い・・・
で、その野盗は
「今私達を標的にしているのですね」
「もう囲まれてるわ」
「この程度なら何の問題もないぞ。女性を食い物にするよな奴らは懲らしめてやるのだ」
この世界に魔法を使うような者はいない。それほどに魔力の薄いこの世界でも私達はちゃんと使える
それは元々の潜在魔力が高いから
戦闘態勢に移行しようとすると矢が飛んできた
それをアルタイルが難なく掴んで投げ返す
「ぐぇ!」
どうやら野盗の一人に当たったようで、それを皮切りに数百名もの野党が一斉に飛び出してきた
ずっと草原の高い草の中に隠れて私達をつけてたのね
「相手はたった六人だ! 男は殺せ!女どもは今日の楽しみに捕まえるぞ! 抵抗するなら殴れ!手足でも斬り飛ばせばおとなしくなるだろうよ」
ああ、絵にかいたような最低な野盗
嫌悪する、つくづく嫌悪するわ
こういうやつらに、前世で大切な人を殺された
私は怒りがどんどんこみあげてくるのを感じた
「攫った冒険者の女性たちはどうしたんですか?」
思わずそう聞いていた
「は? あの時のメスどもの仲間か? そんなもんとっくに犯して殺しちまったよ! 断末魔は最高に興奮したぜ!」
そういった男の下あごを私は斬り飛ばした
「ぐがっ?げぇっ!」
痛みでもがく男の頭を踏みつけてつぶした
コイツラハ、ユルサナイ
何だか思考が塗りつぶされて、私はそこから記憶が途切れた
気が付くと辺りに死体の山が築かれていて、私はアルタイルに抱きかかえられていた
体を見ると私は血に濡れている
「あ、これって」
「大丈夫、もう大丈夫だアスティラ、野盗は全滅した。もう戦わなくていいんだ」
これは、私がやったの? 何でこんなことに・・・




