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六つ目の世界3

 サニア様の力によってあっという間に邪竜の住む大風穴と呼ばれる場所に来た

 そこは常に内部から生暖かい風が吹いて来ていて、それが亡者の叫び声のようで不気味な場所

「あの、出てくるの待つわけには」

「何言ってんの? 行くに決まってるじゃない」

「そうですよね・・・」

 正直に言うとかなり怖い。別に邪竜が怖いんじゃなくて、ここの雰囲気が怖いの

 絶対ゾンビやら幽霊やらがいるに違いない

 いやこの世界はそういう世界だからいるんだろうけど、街の人達みたいに優しくて気のいい感じならなんとかってとこなのに、邪竜の瘴気に侵食されて自我を失っているとなると無理

 でも震える足を何とか動かしながら内部へと侵入していった

「暗いですね」

「ちょっと待ってくださいね。すぐ明かりを」

 サニア様自らが発光して洞窟内を明るく照らすと、私は一気に血の毛が引いて行った

 辺り一帯を埋め尽くす亡者の群れ群れ群れ

 彼らはこちらに気づくと一斉に襲い掛かって来た

「ああそんな、あれは数週間前に攫われたベニラ。私の友人です」

 案内を買って出てくれたレイスのアーシャさんが泣き出しそうな顔で一人のゾンビを指さす

 女性型のゾンビ族だけど、すでに自我を失っていてその目に理性は無い

 ゾンビたちは動きはゆっくりだけど、確実にこちらを捕食しようと迫っていた

「もう彼らを元に戻す術はありません。どうか彼らを楽にしてあげて下さい」

 アーシャさんは決意し、私達と共に戦ってくれることになった

 なんと彼女、浄化の魔法を使えるみたい

 レイスが浄化って言うのも変な話だけど、この世界では普通みたい

 自分自身が浄化されることもないんだけど、ああして自我を失ったアンデッドたちには効くようね

「ホーリーフラッシュ!」

 アーシャさんから光の浄化魔法が放たれると、それに当たったゾンビたちはその場にバタバタと倒れていく

 私達もそれに習って魔法を使っていった

 セラビシアちゃんも強力な浄化魔法を使えるみたいで、あれだけ大量にいたゾンビたちは一気に減っていった

「奥に進むわよ!」

 ルニア様は浄化魔法じゃなくて、破壊の力という神の力を使って次々ゾンビを消し飛ばしている

「アーシャ! 早く!」

「は、はい! ごめんねベニラ、あとできっと葬りに来るからね」

 親友だった女性との別れを済ませたアーシャさんは、キリッと眉を吊り上げて歯を食いしばりながらふわりと立ち上がった

 さらに奥へ進むにつれて自我を失って、ただの襲い来る屍と化したアンデッドが増えていく

 その中にはアーシャさんも見知った顔が幾人かいたみたいで、彼女は涙を流していた

 それでも進むことをやめない

 地上を取り戻すために彼女も必死なのね

 そのうち彼女から何か力のような物を感じ始めた

「アーシャさん、なんだか魔力が・・・」

「え? えっと、何これ」

 アーシャさんは突然体から発せられた光に包まれる

「キャアアアア!」

「アーシャさん!」

 悲鳴が上がるけど、すぐにその光は消えてアーシャさんの姿が見えた

 でもその姿は先ほどのレイスの物じゃない

 綺麗、まるで天使のような美しい姿のアーシャさんが現れた

「これって」

「どうやらアンデッドを倒し続けたことで進化したみたいね。言うなればホーリークイーンレイスってとこかしら」

 ここにきて突如進化を果たしたアーシャさん

 そのあまりの美しさに私はちょっと見惚れてしまった

 だってさっきまで顔中血みどろの恐ろしい姿だったんだもの

「なんだか優しい気分です。私なら、彼らを救えます!」

 アーシャさんは手をゾンビの大群に向けた

「ホーラスファルタ!」

 光の粒子が周囲にキラキラと輝き始めると、それが雪のようにゾンビたちに降り注いで、あれだけいたゾンビは一気に浄化された

「なかなかの力ね」

 彼女が突然進化したのは、今まで戦ってこなかったかららしい

 つまり彼らアンデッド族はまだまだ進化の可能性を秘めてるってことなのかしら


 アーシャさんの活躍で無事最奥と思われる邪竜が眠る部屋まで到達

 でもそこに邪竜の姿は無くて、中央に小さな女の子が苦しそうにうずくまってるだけだった

「この子は・・・」

「う、くぅ、痛い、痛いよぉ。パパ、ママ、助けて・・・。フィエラ、一人になっちゃったよ、寂しいよ」

 私はゆっくりとその子に近づいてみた

 するとその子は目を開き、私達を見て驚いていた

「ひぅ! だ、誰? ここ、私のお家だよ?」

「えっと、私達は邪竜を討伐しに来たのですが、あなたは一体・・・」

「フィエラ? フィエラはフィエラだよ。お姉ちゃんは、私を倒しに、来たの?」

「え?」

「私、いっぱい酷いことしちゃったよ・・・。この世界の人達怒ってる。でも、私には止められないの。呪われてて、勝手に・・・」

 呪い? この少女はもしかして

「フィエラちゃんは呪われて邪竜になったの?」

「私、パパとママと一緒に寝てたら、変な白いお姉ちゃんが来て、それで、気づいたらここにいて・・・。時々竜の姿に戻って暴れちゃうの。怖い、怖いよ」

 この子は、邪竜に変えられた被害者? それに白いお姉ちゃんって多分、白!

「ルニア様、これは」

「ええ、呪い、ね・・・。私達じゃ解呪できないほどの強力な呪い。この子は、殺すしかない」

「そんな」

 今目の前にいるのはただの怯え切った少女でしかない。白は恐らく面白半分にこの子に呪いをかけた

 助ける方法はないの?

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