五つ目の世界2
突如現れた白はこの前見たやつとは違う個体みたいで、顔は同じだけど笑い方や髪型、服装が全く違ってる
「くきゃきゃきゃきゃきゃ! 見つけた、見つけたぁ」
狂ったような笑みのその白はグーンと手を伸ばしていきなりアライアちゃんを掴んだ
「アライア!」
レヴァンドラさんが彼女を助けようと白に攻撃しようとすると、白はニタリと笑ってその攻撃に合わせるようにまた手を伸ばした
その手はレヴァンドラさんの攻撃を受け止めるように掴んで、レヴァンドラさんの腕を根元からブツンと千切り取ってしまった
「グアアアアアア!!」
「兄様!」
アライアちゃんが叫ぶのを白は面白がっているようで、アライアちゃんを締め付けた
「うっぐぅううう」
ゴキゴキと骨がきしむ音が聞こえる。このままじゃアライアちゃんが絞め殺されちゃう!
すぐに助けに入ろうとしたけど、アライアちゃんは急に眼をカッと見開いて拘束を解いた
そのまま白の腕を掴んで背負い投げのように持ち上げると地面にたたきつける
とっさのことで白は何の反応もできず地面に頭を打ち付けられて潰れ、動かなくなった
「ア、アライアちゃん?」
その目は真っ赤に染まってまるでバーサーカーのようにこっちを認識できていないみたい
「アアアアアアアアアアアアアア!!!」
アライアちゃんの咆哮に周囲がきしみ、空間にまでひびが入る
私は咆哮で思いっきり吹き飛ばされて地面に転がった
耳が痛い。多分鼓膜が破れてる
耳から垂れる血を拭きとると回復呪文を自分にかけてアライアちゃんの元へ戻った
彼女は潰れている白を掴んで地面に叩きつけ続けていた
「ア、アライア、落ち着け! 俺は大丈夫だから!」
私はレヴァンドラさんのちぎれた腕をルニア様に手伝ってもらいながら引っ付けた
幸いにも簡単に引っ付いたのですぐに腕は動くようになったみたい
でもアライアちゃんがおかしい
大好きなレヴァンドラさんの声も聞こえてないようで、ずっと白の死体をグチャグチャに潰し続けてる
「やめろアライア! そいつはもう死んでるんだ!」
もはやただの肉片となった白をそれでも潰し続けるアライアちゃんは、あの可愛らしい面影がなくなっていた
レヴァンドラさんはそんなアライアちゃんをそっと手で包み込む
すると段々とアライアちゃんの顔つきが元に戻って行って、彼女は目を閉じ眠ってしまった
「はぁ、危ない所だった。この子は家族を傷つけられるのを恐れていまして、誰かが傷つけられればあのように敵の原型がなくなるまで攻撃し続けるのです」
今はスヤスヤと眠ってて可愛いんだけど、まさかそんな一面があるなんて
しかもいともたやすく白を倒せるほどの力
残骸となった白はスーッと消えていく
こいつらはそれぞれが個でありながら繋がっている
恐らくこの白が死んだことも他の白に伝わっていると思う
「もしかしたら他の白がここに来るかも」
不安と緊張が走る。どうすればいいのかしら・・・
「他のは来ないくきゃきゃきゃきゃ!」
突然の声に驚いていると、死体が消えた場所にまたあの白が立っていた
「このくらいじゃ死なないし、その子の実力も見れた。くきゃきゃ、いい、最高。痛くて気持ちよかった」
「何こいつ、変態?」
「私は白だけど、くきゃきゃきゃ、あいつらと繋がってはいないよ」
そいつからはもう敵意は感じられなかった
確かにこいつは他の白と違うかもしれない。だってあの突き刺すような殺気が全然ないんだもの
でもこいつはレヴァンドラさんの腕を引きちぎった
許せない
「きゅふ、いい視線。もっと、もっとぉ」
恍惚とした表情の白は悶えている
気持ち悪い
「私、あんたたちに興味があるのよね、きゅふ、ふふ、ねえ、私達と組まない?」
「何を言ってるのですか? 白は敵、あなたも敵です!」
サニア様が構えた
でも白はまったく何もせずニタニタとこちらを見てるだけで動かない
しかも早く攻撃して来いとばかりにハァハァと荒い息遣いまでしてる
「・・・。話だけは聞きましょう」
「なんだ、攻撃しないの? くきゃきゃきゃきゃ、がっかり、だけどそんな放置もナイスなプレイ」
「う、気持ち悪いわこいつ、お姉ちゃん、やっぱり殺そう」
ルニア様の気持ちも分かるけど、ここはサニア様の言う通り話は聞いた方がいいかも
「きゅふふ、ねえあなた達、白も一枚岩じゃないのよ? 現に私達は本体との呪縛を切ってるわ。くきゅ、だから、世界を滅ぼそうとする白にはこの話は、伝わらないし、私達のように本体から離れてる白という、戦力を、得れるわ」
彼女が言うには、白の中にも自我を強く持って生まれている者たちがいるみたいで、その白たちは特に世界を滅ぼしたいわけじゃないらしい
自由にただ生きていたいだけの存在が、彼女達なんだそうだ
「さっきは力を見るために攻撃、したけど、きゅふふ、まぁちょっと趣味もあったかしら? 攻撃されてみたかったって言うのも、ある」
気持ち悪い笑みで笑ってるけど、この白からはあの時の白のような邪悪すぎる気配は感じない
それでも悪そのものであるのは分かるわ
誰かを殺すのに何のためらいもない。それは間違いないわ
でも協力を得られるなら確かに私達も大幅な戦力アップが見込める
ここは慎重に答えをださないと・・・




