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生まれたけど何か変なんですが10

 剣術の授業が行われる日の朝のこと、私はお姉ちゃんに呼び出された

 どうやら今回私はお姉ちゃんの指導補佐としてこの授業に臨むことになるらしい

 お姉ちゃん曰く

「アスティラ、君はすでに上等兵以上の実力があるんだ、他の生徒たちと組みあえば怪我をさせてしまうかもしれないからね」

 だそうだ

 少し残念だったけど、友達を怪我させるわけにはいかないからしょうがない

 まぁ教えるのも勉強になるしね


 さて剣術の授業の時間となったわけだけど、アディリアがいつまでたっても来ない

 取り巻きのみんなも朝挨拶を交わした後少し用事とかでどこかに行ったきり帰ってこないから心配しているらしい

 どこに行ってしまったのかとみんなで探し行くことになった

 私以外の子供達には訓練場で待ってもらって、私とお姉ちゃんでだ

 まずは取り巻きちゃんたちが分かれた学園の入り口辺りを重点的に探してみたんだけど、手掛かりすら何もない

 仕方なく先生たちにも手伝ってもらうことになった。もちろん手伝ってくれるのは授業のない手の空いてる先生たちだ

「一体どこへ行ったのかしら。あの子は真面目だからさぼってるってことはないはずなのに」

「確かに、用事があると言ったんだねアスティラ」

「はい、ジュセリーナさんがそう言っていたので間違いないと思います」

「用事、用事ねぇ。家の方に問い合わせたけど家に帰った様子もないし。あ、そうそう、もうすぐ親御さんも到着されるらしいよ」

 先生たちがやいのやいのと言っているうちに私はスキル“過去視”を発動させた

 このスキルは超能力系と言われるスキルの一つで、その場所の過去の映像をDVDの再生のように見ることができるスキルだ

 こういった超能力系のスキルを持ち合わせている人はかなり希少らしい

 そりゃ魔力も使わずに炎を出したり別の場所へ一瞬で移動できるなんて、そんな人物がばかばかいたらそれこそ馬鹿馬鹿しいことになるね

 とりあえず、過去視で見たところ、確かにアディリアはここでジュセリーナたちと別れているのが分かる

 その過去映像のアディリアを追いかけてみると、なんだか目がおかしい気がした

 なんていうか、うまくは言えないんだけど、操られてるんじゃ?っていうくらいに虚ろで少し怖い

 フラフラと足取りもおぼつかない気がするし、心配だ

 しばらく追っていると過去の彼女は学園の周りを囲っている塀を飛び越えてそのまま外へと出て行ってしまった

「ど、どうしよう、外に出ちゃうなんて思わなかったから先生に言ってないし…。でもこのままどんどん時間がたっちゃうとまずい気もする」

 兎にも角にも今はアディリアを負うことが最優先と考えて、学園入り口に魔法でメッセージを残して私も塀から外へと飛び出した

 するとその着地点に小さな足跡を見つけることができた

 その足跡はそこの一か所だけでその先へとは続いていない

「足跡がそのまま続いてれば分かりやすかったのに…。過去視をもう一度使うしかないか」

 再び過去視を発動すると、アディリアの横に体全体を覆う茶色いローブを着た大柄の男がいた

 その男がパンと手を叩くとアディリアは意識を失ったようでドサリとその場に倒れ込んだ

 男はアディリアを袋に押し込めて担ぎ上げると足早にその場を去って行った

「これは…。アディリアは攫われた!? 急がないと何をされるかわかったもんじゃない!」

 慌てた私は過去視を発動させたままいそいそと走っていく男の過去映像を追いかけた

 こいつ、私の友人をどうするつもりなんだ? 事と次第によってはただでは置かない


 しばらくその男を追っていると小さな馬車が見えた

 馬車と言っても引いているのはバイコーンという二本角を持った馬のような魔物だったけど、それに乗り込んであっという間に見えなくなってしまった

 でも幸いなことに車輪痕があるから一旦過去視を解いてその車輪痕を追いかけてみた

 

 およそ一時間ほど歩いただろうか?

 私のこの幼女足だと三キロ進むのがやっとだったけど、どうやらその程度の距離で目的の場所まで来れたようだ

 そこには山の下腹に人工的に掘られたあなぐらがあり、馬車はその前に止まっていた

 よしとばかりに私は姿を消すスキルである“透明化”でゆっくりと中に入って行った

 中はカンテラやたいまつで照らされていて明るく、明らかに誰かが住んでるんであろう生活痕がところどころに見受けられる

 気を引き締めて行こう。アディリアに変なことをしていなければいいけど、そんなことしていたら私が何をするかわからないし

 洞穴は一本道で、途中途中に小部屋がある

 その最奥から男たちの声がしてきた

「やりましたね兄貴! まさか魔族の娘を捕まえられるなんて!」

「おうよ、なんてったってこの魔道具の催眠はどんな種族にだって効くって触れ込みだったからな。高かったが買ってよかったぜ。このガキを物好きな貴族どもに売りゃぁ元も取れるし一生遊んで暮らせるってもんよ! 何せ魔族の、しかもメスのガキは希少だからな!」

 ガハハと下品に笑う男たちの横に無造作にアディリアは寝っ転がされていた

 男たちは人間族のようで、どこからかこの国に不法入国したのだろう

 それはともかくとして、アディリアを売るなどというとんでもないことを考えているこいつらをお仕置きしなければ気が済まない

 私はスッと透明化を解いて男たちの前に姿を現した

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