三つ目の世界2
新しく現れた怪獣はさっきの雲君だなっていたような怪獣によく似ていて、恐らくこの怪獣も人間を素体にしているわね
だからまずアルタイルに怪獣の動きを止めてもらって私の力を思いっきりぶち当てた
あれ? 全然効いてない?
「どういうこと? さっきはうまくいったのに!」
「力が足りてない訳じゃないようですね。恐らく何らかの阻害が働いているようですね」
「それじゃあその阻害をなんとかできれば」
「なら我に任せるがいいぞ。我の得意技は概念の破壊だ。どんなものだろうと概念ごと砕いてしまえばそこに何も残らぬ!」
セラビシアちゃんは勢いよく飛び上がると怪獣の目の前まで来た
「フハハハハ! これが最強魔王の力である! 特と喰らうがいい!ノーティオデーストゥルークティオ!」
パーンと大きな音が響いて怪獣は倒れ込んだ
「よし、これでいいはずだぞ! もう一度やってみるがいい!」
「ありがとうセラビシアちゃん!」
私は今度こそともう一度善の力を倒れた怪獣目がけて放った
今度はうまくいったみたいで怪獣は元の人間の姿に戻った
その人は女性で、歳は雨さんと同じくらいかな?
「春!」
雨さんがその女性に駆け寄った
どうやら雨さんの友達みたいで、雨さんは心配そうに春さんの顔を覗き込んでいる
よかった、気絶しているだけみたいだし、見たところ体には異常もなさそうで一安心かな
とりあえず安全な場所へと彼女を運んでからまた走る
そう、またしても怪獣が出現したのよね
次に出た怪獣はさっきよりも小さいけれど素早くて、アルタイルがなかなか捕らえられないでいた
「私に任せてください! 恐らくあの怪獣も・・・」
雨さんはそういうと胸元に手を当ててカッと光った
するといきなり雨がザーザーと降り始め、その雨が雨さんの(なんだかややこしいわね・・・)体にまとわりつき、人型になった
これが雨の支配者、レインドミネーターことヒーローレイドの姿なのね
彼女はすばやく逃げる怪獣の尻尾を捕まえるとブンブン振り回して放った
これによって怪獣は倒れ、そこをすかさずアルタイルが拘束してくれたから、私はすぐに善の力で怪獣を元に戻した
あ、やっぱり人間なんだ。今度は男の子でなんだか陸上部のような格好をしてる
人間に戻った雨さんがその彼を見て驚いた
「え、瑛士くん!?」
雨さんが言うには彼は学校でも人気のいわゆるスポーツマンで、誰にでも優しいから男子にも人気がある人らしい
そして雨さんの初恋の人なんだとか
「ど、どうしましょう! ここここんな、あわわわわ怪獣になってるなんて思わなかったから触れちゃったわわわわ」
混乱して雨さんが妙なラッパーのようになってるけど、とりあえず落ち着かせてから彼を危なくなさそうな場所に移動させて寝かせておいた
もちろんまたしても怪獣が現れたから今かまってる余裕はない
雨さんも落ち着いたようなので次の怪獣を人間に戻すために私達は走った
人間に戻すたびに次の怪獣が現れてきりがない
多い、あまりにも多い
それもなぜか雨さんとかかわりのある人ばかりで、しかもその人たちの特徴や特技が元に怪獣が出来上がってる気がする
雨さんも何度も変身しているせいかかなり疲れて来ていて、とうとう倒れて気絶してしまったわ
「雨さんは休ませます。私達で何とかしますよ」
「まあ私とお姉ちゃんで足止めはできるし、アルタイルもセラビシアもそれなりに戦えてるわ。あとはアスティラの力が持つかが問題よね」
「私なら大丈夫です。まだまだいけますよ!」
本当にどういうわけか全く疲れが無いのよね。これなら永遠に力を使えそうな感じ
それからも次から次へと怪獣が現れて、その数は百匹を超えた
元に戻った人間達をアルタイルが作った頑強な次元の空間にとにかく運び入れて、それから怪獣を処理していく
体力的には問題なくても精神的に結構くるものがあるわね
「アスティラ、無理しないで。数日くらいなら怪獣たちを閉じ込めておけるから」
「いいえ大丈夫よアルタイル。彼らだって早く元に戻りたいはずだもの。休んでる暇なんてないわ」
彼らを戻せるのは私だけなんだ。ここが踏ん張りどころ
気合を入れなおしてみんなが捕縛してくれた怪獣たちを戻して戻して、ようやく怪獣が出てこなくなったころには夜が明けていた
アルタイルの空間にはおよそ二百人ほどの怪獣にされていた人間が詰め込まれている
そこから彼らを出してあげるけど、まだ誰も目覚めていなかった
どうしようこの人たち・・・
そう思っていたら遠くの方からヘリコプターの音が響いてきた
「あれは防衛軍のヘリです。別の国で怪獣事件があったので行っていたようですが、この怪獣騒ぎを聞きつけて戻って来てくれたようです」
目を覚ました雨さんがそう説明してくれた
到着したヘリから男女二人組が現れて私達の方に歩いてきた
「レイド! 大丈夫か!?」
「はい、この人達のおかげで何とかなりました」
どうやら雨さんの知り合いみたい
その後彼らに説明して気絶している人間達について任せることができたわ
はぁ、今日は結構ハードだったわね
もしこんなことが続くならこの世界は疲弊しきってしまう。早急に何とかしないと




