第1章 第3話 吾輩は魔法学びます
リヒトが会話できるようになり、2ヶ月が過ぎようとしていた。
エスクラピウスは、近所の素材買取屋の親父さんとの談話で初めて普通の猫は喋らないことを知り、リヒトをより一層特別な存在だと思うようになり、外に連れ出すことを避けるようになっていた。
けれども、リヒトは外の世界への憧れが強くなる今日この頃であった。
「じぃじ、お外で遊びたいな〜。」
『お外は、危険で一杯なんでちゅよ〜。』
相変わらずリヒトに対してエスクラピウスは甘々である。
「え〜、だってキホちゃんが毎日遊びに行こうと誘われるんだよ。」
『はて、キホちゃんとは誰なのじゃい。』
「うんとね。毎朝窓からお外を眺めていると、窓の外の塀の上から『ニャー(おはよう』って挨拶してくれてたの。それで、お友達になって、今度一緒に川の方でお魚さんを見ようねってお誘い受けたんだよ。」
『もう、お友達が出来たんだね〜。(リヒトちゃんに、もう悪い虫が・・・。焼き殺すか・・・。)』
「じぃじ、今悪い事考えてるでしょ。僕だって、それくらいわかるくらい大きくなってるんだよ。」
『うぅ。リヒトちゃんの勘違いだよ。』
「それならいいんだけど。もし、キホちゃんに何かあったらじぃじでも怒るんだよ。」
エスクラピウスは、渋々何もしない事を了承して、リヒトの外出について深く考え込むのであった。
(一人で外に行くのも心配だし、姿を消す魔法を使ったとしてもすぐに見つかってしまうくらいリヒトちゃんの察知能力は高いしの〜。)
ふとエスクラピウスは、リヒトの方を見ると、リヒトは右手の手のひらに持っていたボールを宙に浮かべて遊んでいたのであった。
そのボールは、エスクラピウスがリヒトにあげたボールであるが、直径3cmくらいのミニトマト大で精霊樹から作られた木のボールで、魔法使いの資質を測るための道具であったのだ。
資質があるものは、ボールを浮かすことができるのだが、初期LVの魔法使いは浮かすのが精一杯で、魔法をコントロールできるようになる上級者クラスでようやく自由自在に動かすことができるのであった。
リヒトは、そのボールを上下左右に動かしたり、緩急をつけたり、終いにはボールを追加して5つのボールを器用に操作しているのであった。
『リヒトちゃん、それいつからできるようになったの。』
「じぃじが、この前いっぱいボールくれたでしょ。その時、じぃじが動かして遊んでくれたでしょ。リヒトも、やってみたいな〜と思ってたらできたの。今じゃ、5つのボール全部を動かせる事ができるようになったんだよ。」
『儂でも、動かす事ができるのは2つなのに、5つもとは。もしかして、この子なら儂が考えていた5大魔法の同一発動を可能にするのでは。そうなると、、、、。』
エスクラピウスは、独り言のようにブツブツ言いながら、考え込み始めた。
「じぃじ」
「じぃじ、じぃじ、じぃじ〜〜〜。」
リヒトが呼ぶ声にやっと気づき、エスクラピウスはリヒトの両手を掴んで目を輝かせながら言った。
『リヒトちゃん、魔法勉強しよ。』