第6話 獣人
〜20日目〜
睦月が妊娠したので動かないほうがいいだろうと家(巣)には戻らないことにした。
ヘルガーさんには悪いけどしばらくご厄介になります。
笑顔でいつまでもどうぞと言われ、俺たち家族用の横穴も用意してくれた。食事も3食付きだ。
あ、宴のときに知ったのだがここに住んでる虎種獣人の数は全部で21人。ヘルガーさん、ヘルガーさんの奥さん、あとは子供夫妻5組と孫たちだ。大家族だった。
眷属の熊は呼べば来るらしく、普段は違うところで暮らしているらしい。
如月と弥生は虎種獣人の子供たちと遊びに行っている。同年代の子が仲良くしてくれてよかった。まだ生後11日目だけどね。
何事も問題はない。
俺にべったりとくっついてる虎種獣人の女の子を除けば。
ヘルガーさんの長男の娘ラミー。
雄とは違って雌は顔立ちと体つきは人間寄り。睦月より全体的に一回り大きく(特に胸は大きい)、美人さん。
昨日の宴で会ってから少しも離れようとしない。本人曰く一目惚れもとい一嗅惚れしたとのこと。
数日間お風呂も水浴びもしてないから臭いはずなんだけど、それがまたいいらしい。
ただ俺には睦月という愛妻がいる。気持ちは嬉しいけど妊娠中の浮気って1番離婚率が高いって聞くし。
「あの、ラミーさん」
「ダメです。ラミーって呼び捨てにしてください」
「 ⋯⋯ ラミー。そろそろ離れてほしいんだけど」
「なぜですか? どうしてですか?」
「睦月の様子も見に行きたいし」
「いいですよ。いきましょ」
連れていけるわけないじゃん!
助けて、と視線をヘルガーさんに向けると察してくれたようで、
「ラミー。少し手伝ってほしいんだが」
「いやです」
「いいから来なさい!」
「いたーっい! 痛い痛い痛い! わかりましたわかりましたから耳を引っ張るのはやめてください、お爺様!」
あとでヘルガーさんにお礼を言っておこう。
さあ今のうちに睦月のとこへいかなくちゃ。
「調子はどうだ?」
「いいニャよ〜」
大きくなったお腹。
本当に3人目ができたんだな〜。
「この子は男の子かな? それともまた女の子かな?」
「ご主人様はどっちがいいかニャ?」
「元気に生まれてくれるんならどっちでもいいよ」
「むーも同じ気持ちニャ。でもなんで急にできたんかニャ」
確かに。
一昨日もその前もいっぱいハッスルしてたけどできなかったのに、昨日の一回でできるとは不思議だ。
子孫繁栄のスキルにはやっぱりなにか条件がありそうだな。
「昨日と一昨日でなにか変わったことはあった?」
「ニャ? 思い当たることはないニャね。しいて言えばレベルが3つ上がったぐらいかニャ。ご主人様のおかげニャ」
ピンクオークの経験値でみんなレベルが上がったらしい。あとで確認しておこう。
「レベルだけか。それならもっと前にも出来ててもおかしくな ⋯⋯ ん?」
もしかして、と1つの仮説を思いつく。
ただそれを実践しようにも睦月は妊娠中だ。
当分先のことかな。
そう思ったとき──
「お邪魔しまーす!」
ラミーが飛び込んで来た。
しかも睦月の目の前で俺の胸にだ。
「うーん、会いたかったです。離れていた分だけ隼人様の匂いを補充しなくちゃ」
やめろって!
浮気を疑われるだろうが!
引き離そうとするが、
「嫌ですぅ。もう一生離しませーん」
本気でやめてくれ。
睦月の目が怖い。ってあれ?
顔は笑ってるけど目は笑ってない状態かと思ったけど、めっちゃニコニコしてる。
「睦月さんや。怒ってないんですか?」
「なんでニャ? 旦那がモテるのはいいことニャ。むーは誇らしいニャよ」
「私も同意見です。旦那様の魅力は多くの人にわかってもらいたいですね! 強くて格好良いところとか」
「優しいところもニャよ」
「いい匂いがします」
「子煩悩ニャよ」
「意外と手先が器用でびっくりです」
「2人っきりのときは甘えたになるのもまたいいニャよ」
「それいいですね! 私まだやってもらってませんよ」
「きっと今夜やってもらえるニャ」
「楽しみにしときます!」
「ご主人様は絶倫だからペース配分には気をつけるニャよ」
「体力には自信あるんですよ私」
なあなあ。
意気投合するのはいいけど、ラミーのお相手は誰ですか?
流れ的になんだか──
「え、隼人様。睦月さんから聞いてないんですか?」
なにを?
「私が2人目の奥さんになることですよー!」
やっぱりそうなるか!
なにその話?
初耳なんですけど。
俺の意見は?
「もう睦月さんったら。お話してくれるって言ったのに」
「ごめんニャ。忘れてた。というわけでご主人様。今夜からはラミーがお相手してくれるニャよ」
「初めてですので至らぬ点もあると思いますが、優しくよろしくお願いします」
待て待て。
君たちストップだ。
「そもそも俺が浮気? 浮気なのかこれ? まあいいや。違う女性に手を出しても睦月は怒らないのか?」
「平等に愛してくれるならいいニャよ」
そういう問題か!?
「それとも私のことがお嫌いですか?」
ラミーが上目遣いに見てくる。
うぅかわいい。
それに胸の谷間が ⋯⋯ でかいな。
「ニャ〜」
「あらら」
2人の視線が俺の下半身に集まる。
敏感なんです。
「これはもうラミーのこと好き好きニャよ」
「そうなんですか? 嬉しいですけど照れます」
真っ赤になるラミーがまたかわいい。
「隼人様」
「は、はい!」
「一嗅惚れでした。大好きな匂いなんです。隼人様の匂いを嗅ぐと頭がクラクラするんです。嗅がないでいるとおかしくなりそうです。どうかお側にいることをお許しください」
俺の匂いは麻薬か!
ま、理由はどうあれ奥さん公認+こんなかわいい子の告白を断れるわけないじゃん!
「むしろよろしくお願いします!!!」
夜はけだものになりました。
子宝には恵まれませんでした。
〜21日目〜
「ラミーはいま何レベルなんだ?」
奇しくも仮説を試せる機会が訪れた。
「 ⋯⋯ レベルですか?」
藁のベッドに寝たままラミーがステータス画面を開く。
「6、ですね」
ちょうどいい。
「よし、レベル上げにいこう!」
「え! 今からですか?」
「そうだけど何か用事ある?」
「いえ、その ⋯⋯ 昨日が激しすぎて立てません。ヒリヒリしますし」
「あは、あはははは」
初めてなのにハッスルし過ぎてしまった。
〜22日目〜
ラミーのレベル上げ。
獲物を見つけれずレベルはそのまま。
〜23日目〜
子供たちにバレた。
遊んでるわけじゃないんだけどな。
獲物を奪われ、この日もうまくいかず。
なんとかレベルは7になった。
仮説証明のため夜も頑張った。
決してムラムラしたからじゃない。
嘘です。
胸を触ってたら爆発寸前でした。
この日も子供はできず。
〜24日目〜
ヘルガーさんに子供たちのお守りをお願いした。
順調に獲物を狩れ、レベルは9に。
さあ今夜も頑張るぞ!
休ませてください?
何を言ってるんだ。仮説証明のためここが踏ん張りどころなんだよ。きついかもしれないけど耐えてほしい。
顔が笑ってる?
気のせいだ。
ラミーがしんどそうなので2回でやめておいた。
妊娠はしていない。
〜25日目〜
そろそろ睦月のほうが生まれるかもしれない。そっちも気にかけておかないと。
運良く巨大猪に出会えた。
レベルも10に上がり、蓄えもゲットできた。
連続3日目。
今夜が本命だ。
ラミーには悪いけど今まで以上にハッスルしてしまった。
そして仮説は正しかったようだ。
事後、予想通り子供ができた。
「結局仮説とはどういうものだったんですか?」
すでに大きくなったお腹を愛しそうに触りながらラミーが訊ねてくる。
「女性のレベルが関係してたんだ。レベル10で1人目。20なら2人目。睦月はピンクオークを倒すまではレベル29だった。倒したあとは32になったから3人目ができたんだと思う。ま、これも確証はないんだけど」
「ですが、その仮説ですと私が次の子を授かるにはレベル20にならないとダメなんですね。レベル上げ頑張ります!」
「生まれるまでは安静にな」
「なら胸を揉まないでください。もう1回はしませんよ。しませんって、もう。あ、ぁん」
〜26日目〜
『スキルを選択してください』
きた。
ステータス画面から火魔法Lv1を選ぶ。というか睦月の子供なら同じスキルを持って生まれるんじゃないかな。その場合はどうなるんだろう?
『火魔法Lv1が進化できます。進化しますか?
YES/NO』
そうきたか!
もちろんYESを押す。
『火魔法Lv1が炎魔法Lv1に進化しました』
進化したー!
『スキルを選択してください』
選択したじゃん。
もしかして進化したからか。
なら次は格闘Lv1を選ぶ。
『格闘Lv1が進化できます。進化しますか?
YES/NO』
YES!
『格闘Lv1は拳法Lv1になりました』
洗練された感じだな。
『スキルを選択してください』
いや、もうスキルはないはず。ってあったよ。
なんだろ、この指揮Lv1って。
いつの間に覚えたんだ?
ま、いいや。ポチっと。
『選択し直すことはできません。
よろしいですか? YES/NO』
はいはい、YESと。
終わると前と同じく眠りに落ちる。
起きたら睦月が産気づいていた。
5時間後。
元気な男の子が生まれた。
名前は皐月だ!
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