第七話 宴の始まり
PVが倍になっててビックリです!ありがとうございます!
今話は猫→男→猫視点です。猫が二回です。でも次回は人間の方だけです。
それではよろしくお願いします。
「みゃあ! ふにゃあ! みゃああああ!」
われは今人間の作った寝床タワーで訓練中である。
段々暗くなってきて足場が見えづらくなる中、自分の感覚を研ぎ澄ませ見えなくとも踏み外すような真似をしないように何度も昇り降りを繰り返す。
なかなかの難度だが、われを満足させるにはまだまだ足りないな。
今度はもっと攻略しがいのあるものを頼んでみよう。だが、初めて作ってくれたここも悪くはないので、頻繁に利用してやるがな。
ふむ、どうやら今日の訓練はここまでのようだな。
お迎えが来たようだ。
さあ、次は宴の時間だ!
*****
夕暮れの中、ドラゴンは俺の真上あたりにくると急に消えた。
いや、消えたんじゃなくて、小さくなって降りてきたようだ。よかった、さすがに数十mもあるドラゴンサイズに食べさせる量はとてもじゃないが用意できないからな。
そして俺の目の前にズンっと降り立ったのは、頭に角が二本、背中には翼、いい感じに鱗と服を纏った銀髪紅目褐色のイケメンのおっさんだった。
んんん?
おれは目をごしごし擦ってもう一度見てみた。目の前にはイケメンのザ・竜人みたいなおっさん。なるほど。
「おーっす! 夕飯食いに来たぜ。もう楽しみでわくわくして待ちきれなかったぞ。
何度ブレスを吐きに出かけるのを我慢したことか。はっはっは。
おっ、どうした。俺が着地したときに砂でも目に入ったか。そりゃ悪かったな。次からはもう少しゆっくり着地することにするわ」
イケメンのおっさんがラフに話しかけてきた。
俺は考えるのをやめた。
「ようこそ、お待ちしておりました。
現在できる限りの料理を用意させていただきました。
なにか苦手なものはありませんでしたでしょうか?」
「おいおい、もうそんなかたっ苦しい口調はやめにしようぜ。それは素じゃないだろ?
それと好き嫌いはないぜ。動物も植物も人も魔物も精霊も、なんでもおいしく頂けるのが自慢の一つだ。」
俺は遠慮もやめた。
「そっか、じゃあこんな感じでいくよ。よろしく!
ってか精霊とか食うのかよ。存在するのも初めて知ったよ。
それで量はどうする? とりあえず10人前位用意したけど」
「おっ気が利くな。
本当なら10人前と言わず100人前でも用意しろって言いたいところだがな。さすがにそれが無茶なのは知ってるぜ。
料理はもうすぐ食べられるのか?」
「あとは皿に盛りつけるだけだからすぐだよ。
あ、猫のやつも呼ばなきゃだな」
「それなら俺が呼んできてやるよ。その間に準備頼む」
「わかった、ありがとう。
猫はあっちにいるから、ってそれくらい竜王ならわかるか。
じゃあ準備しておくな」
そんな会話をして竜王は猫を呼びに行き、俺は亜空間に入れておいた鍋とかフライパンから皿に料理を移し始めた。
…竜王ってなんだっけ?
*****
われを呼びに来たのは人間ではなく竜王だったようだ。最初は姿と口調の変化から誰だかわからなかったが、こちらの顔色を察したのか向こうから説明してきたので理解できた。
それにしても人化できるとは、さすが竜王なだけはあるな。まあわれには必要ないから羨ましくなんかないがな。
口調の変化については何も思うところはない。大事なのは何を思って話し、どう行動するかだからな。あやつの言動からはわれを侮辱するような気配は一切なかったからそれでよいのだ。
竜王の頭の上に乗った状態で一緒に人間のところまで戻ると、木の台、テーブルというらしい、の上には様々な料理が並んでいるのが見えた。
うむ、われの分もあるようだな。テーブルの上の一角にわれ用と思しき敷布と少な目に取り分けられた料理が置いてある。
この細やかな気配りができるのも、配下としてポイントが高いな。
だがやはり高い視点は便利だな。とはいってもわれのサイズでしかできないこともあるのだから、嫉妬なんてしないがな。ほんとだぞ。
テーブルに近付くと竜王が敷布の上に優しく降ろしてきた。うむ、この竜王もなかなか気が利くな。上に立つものとしての覇気を持つだけでなく他のものを気遣うことができるとは、なかなかどうして難しいものなのだが、この竜王はまさに王にふさわしい気質を持つと見える。われも負けていられんな。
だがその前にまずは食事だ。さあ、食べるぞ。ほら、竜王、早く。さすがに今宵はお主が先に食べんとわれも食べ始められんだろうが。
うむうむ、よし、ではいただこう。
ほう、今朝の料理で十分旨いと思っていたが、まさかあれがまだまだ序の口だったとはな。本当に人族の食への執念深さには恐れ入る。
こちらも、あちらも、うむ、うまい。
それに今朝のように熱すぎるということもない。こやつ、同じ失敗はせぬとはやはり見所のある者だ。われの目に狂いなし。
竜王と人間は何やら話しながら食べているようだ。最初の時に比べてずいぶん空気が軟化しておるな。これもわれが仲を取り持ってやったおかけだな。
うむ、いいことをしたと思うと飯がより一層うまく感じる。
時々竜王経由で人間からの質問に答えたり、こちらから竜王に話しかけたりしつつ今宵の宴は平穏無事に終わった。
人族の料理の本気、しかと味わわせてもらったぞ、人間、いやさ、ケイよ。
竜王、ブラドというらしい、も満足したのかドラゴンの姿に戻って空に消えた。
それでは今日も終わりだな。
さっそく新たな寝床の寝心地を確認せねば。
われはケイに一声かけてから寝床に戻り、一番下の穴の中で丸くなって寝ることにしたのだった。
なんか竜王の口調は偉そうにすると猫と被っちゃった感じがしてなんか嫌だったのでおっさんにしたらスッキリしました。
女性キャラはもうしばらく出ませんが、おっさんでもイケメンなので許してください。
お読みいただきありがとうございました。






