第五話 ねこ、完敗
PVが予想以上でびっくりしました!
1週間くらいは誰にも読まれないかもとか思ってたので…(笑)
150人位の読んだくださった方々、そして今回開いてくださった方々も、ありがとうございます。
少しずつですががんばって投稿続けていくのでよろしくお願いします!
「にゃふん!」
な、なんだ? 水責めか?
せっかく気持ちよく昼寝していたわれに水をぶっかけた痴れ者は誰だ。
跳び起きて周りを見渡すと、人間が気持ち悪い笑みを浮かべながら手をワキワキさせながら近寄ってくるのが見えた。
ぬう、こやつ、早くも反乱を起こす気か。
やれやれ。竜王のやつに無用な争いはしないと言ったばかりなのにな。だが、挑まれたら返り討ちにするとも言っておいたので問題ないだろう。
よろしい、では戦闘だ。
われはゆっくりと近づいてくる人間に対し、その一挙手一投足を見逃さないよう神経を張り詰めた。
そこだ!
「みゃおん!」
ぼすん。ぺしぺし。
人間の虚を突き勢いよく体当たりをした後、休ませる間もなくしっぽによる攻撃を加える。
これで終わりだ!
「みぎゃああ!」
とどめとばかりに爪を出し振り上げた右手を、人間に向かって振り下ろす。
が、がしっと体ごと持ち上げられてしまった。
く、それは卑怯だぞ! 攻撃が届かないではないか!
なんとか手足としっぽをじたばたさせるも、人間は一向に気にせず、われを持ち運ぶ。
われの攻撃を完封するとは、やはり人間の勇者は侮れないな。
しかし、どこに連れて行く気だ?
こちらを攻撃する意思はないようだが。
いや、あれは、まさか…。やめろ、おい、ばかな真似はするな!
くそう、はなせ、はなせぇぇぇ!
「みゃああ! みゃあああああああ!!!」
われの抵抗は空しく終わった。
そしてわれは桶の中でずぶぬれにされた後、丸洗いされた。
*****
うむ。一週間走り通した割には体はそこまで疲れてないな。これは異世界に来た影響なのか。それとも特訓で鍛えられたせいか。まあいい。
さて何をするかだが、とりあえず今一番恐れるべきはドラゴンの期限を損ねることだろう。
となれば、料理をする環境を整えることから始めるか。
亜空間の中身を確認したところ、料理道具は最低限そろってるな。仮にも勇者さまの旅の野営用の道具を全部パクってきたんだから当たり前か。
となると後は食器やテーブルか。各種皿、ナイフ、フォーク、スプーンは無駄に銀製から木製までそろってるから大丈夫だろう。ドラゴンが何人前食べるのかはわからないが、十人分くらいまでは対応できる量がそろってる。
じゃあ更に少しでも落ち着いて食べてもらうために、テーブルと椅子でも用意するか。
材料はそこら辺の木を使ってもいいらしいから、さっそく木を切っていこう。
「えいっ」
おお~。そこそこの太さの木だったが、結構深くまで切り込めた。さすがは勇者さまの予備の剣だな。うん。
残念ながら刃物が俺の剣とナイフ、包丁の他には勇者たちの予備の武器しかなかったから使ってみたが、正解だったようだ。剣が急速に傷んでいっている気もするが、どうせ戦闘には愛用の剣しか使わないだろうし、構わないだろう。
そんな感じでガンガンと木を叩き切っていると、剣についている宝石部分がわずかに光っていることに気付いた。あ、これ魔剣だったのかな?
とりあえず適当に魔力を込めてみよう。おお、光った。じゃあこの状態で、えいっ。
…。木がズパンって切れちゃった。勇者は予備の武器までチートだな。これだから勇者は。
勇者の剣(笑)が思った以上に便利だったので材木の準備は予想よりはるかに終わった。
次は組み立てか。釘とかないけどどうするか。
いや、はめ込み式でいけるか。ここに穴開けて、こっちは削ってっと。
木を細かく切ったり穴開けたり削ったりのは勇者のナイフ(笑)を使ったら余裕だった。ついでに軽く装飾までつけてしまった。
これ木を切った後きちんと乾かしたりしてないけど大丈夫かな。まあ急場凌ぎ用だと思えばいいか。今後のためのいい練習になっただろう。
うん、これでいつドラゴンが来ても座って待っててもらえるな。あ、クッション代わりに魔物の毛皮でも敷いておくか。
さて、次は、う~ん。料理の下拵えを始めてもいいんだけど、まだ時間がありすぎるな。
かと言って家だなんだと大きなものを作るには時間が足りなさすぎるし。設計図だけでも作っておくか?
それにしてもあんだけ木を切り倒したりテーブル組み立てたりしてたのに、猫のやつ全然起きないな。胆が太いのか、鈍感なのか。
はっ。キュピーン。
そうだ、猫の小屋を作ろう。
でも犬小屋はパッと思いつくけど、猫小屋ってなんだ?
まあなんとなくでいいか。猫は高いところに登る、狭いところが好きってイメージがあるから、一回り大きい50cm四方の床に30cmくらいの高さの犬小屋の上に、木のタワーみたいなのがくっついてる感じにするか。これで小屋の中でもタワーの途中、頂上でも好きな所で寝れるだろう。
…作ってみてから気付いたんだけど、この木のタワー?って家猫の運動不足解消用とかだったら、森の中に住んでる猫には必要なかったような気が…。
いや、こういうのは気持ちが大事だよな。もしかしたら気に入ってくれるかもしれないし。こいつ普通の猫じゃないし。うん。
さて、いい時間つぶしになったな。まだ猫は起きないが。
じゃあそろそろ料理の下拵えを始めるか?
う~ん。いや、まだだ、まだやるべきことが残っていた。
俺は桶を亜空間から取り出し、魔法で中に水を溜めた。
そして猫に近寄る。
ふっふっふ。さあ猫ちゃん。お前の体をピカピカのもふもふにしてやるぜ!
猫に魔法で水をぶっかけて起こし、暴れるところを優しく取り押さえて桶で丸洗いしてあげた。猫は桶の中に入れられた後は諦めたのかおとなしくなったので、思う存分洗えた。
よし、それじゃあ最後はしっかり乾かさないとな。
きれいな布でやさしく水気を拭った後、火と風の混成魔法である簡易ドライヤーでしっかりと乾かした。火傷しないか心配だったけど、大丈夫だったようだ。
借りてきた猫のようにおとなしくしてくれたおかげで、見違えるほどきれいになった猫を見て、俺は思わず抱き着いてもふもふしてしまった。
背中側はきれいな明るい小麦色で、お腹側は純白。少し長めの毛並みは洗った直後であるからか非常につやつやもふもふしていて、ああもう最高。
洗ってた時から気付いていたが、この子はオスのようだ。イケメンさんというよりはショタのような愛くるしさを持っているな。これはお姉様方の前には出せん。なんてことはどうでもいい。そんことより今はもふもふだ。
もふもふもふもふ。
ほら、ここがええのんか~?
猫は最初は俺のもふもふ攻撃にびっくりしたようだったが、首回りや背中などをくすぐり始めると、あまりの気持ちよさに陥落したようだ。
あまりの気持ちよさとかわいさに時間が経つのも忘れてもふもふしていたが、そろそろいい時間だ。
俺は自分の野営の準備をぱぱっと行い、夜用の明かりの魔道具をセットして、ドラゴンを迎えるべく料理を始めた。
猫はまだぴくぴくしていた。
基本この物語に登場するもふもふは作者の妄想の産物なので、現実では違うよ、と思っても生暖かくスルーしてあげてください。
お読みいただきありがとうございました。