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もふぽて  作者: しーにゃ
第一章
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第四話 ドラゴンはやさしかった

敬語とか使い慣れてないので気になる部分があってもできればスルーしてください…。

よろしくお願いします。


 ふむ、あやつ、ただものではないな。漆黒の、山のような肉体と一対の翼をもつトカゲのような存在。あれが噂に聞いた竜王とやらか。

 なるほど、ここは竜王の森であったか。ならばやつがここに来たのもわかる。われの存在に気付き、一言あいさつに来たのだろうな。


 なに、竜王などと呼ばれているのはちと気に食わんが、それに文句をいちいち言うほどわれも狭量ではない。むしろ、この森のような素晴らしい場所を今まで管理してきたことをほめてやりたいくらいだ。

 われは別にここに争いに来たわけではないからな。むろん支配権を奪いに来たわけでもない。ただ静かな所で己の牙を磨きに来ただけだ。


 あちらは空からこちらを観察しているようだ。

 よし、とりあえず声をかけてみるか。


「みゃああお」(『そなたがこの森の主、竜王か?』)


 そう声をかけると竜王はゆっくりと地面に降りてきた。

 むう、無駄にでかいな。首が痛い。だが先に挨拶だけはしておくか。本来は向こうからするべきだが、どうやらシャイなやつのようだ。よいよい、われは他人の短所に文句を言う気はないし、あやつはわれが認めるに足る功績を成しているからな。それに今後この森で共に暮らしていくのだから、こちらが気を遣ってやるくらいなんてことないだろう。


『われは旅のものだ。

 これまで各地を転々としてきたが、この森はどうやらとても住み良い場所のようだ。

 非常に気に入った。

 しばらくの間ここで世話になりたいと思うが、問題はないだろうか。』


 竜王は静かにこちらを見据えている。本当にシャイなやつだ。

 どうやらわれの性格や能力を把握しようとしているのだろう。

 ではこちらがそちらの意図を理解していることを伝えておくか。


『なに、この森を歩いてみてわかっている。不要な争いはするなと言うのだろう。

 無用な争いはわれも望んではおらぬ。日々の糧以上の狩りなどせぬと誓おう。

 無論、向こうから襲ってきたときは返り討ちにするがな』


 竜王はこちらの意図を察したのか、静かに頷き、目線を人間の方に向けた。

 人間は動きを見せないが、どうやら竜王に驚いて声が出ないようだ。

 たしかにあの大きさの存在は慣れていないと驚くのも無理はないだろう。

 ここはひとつわれが手助けしてやるか。貸しにしておくぞ。


『そこの人間は、人族の勇者のようだ。

 昨晩われの下にやってきたのだが、なかなかの傑物のようだ。

 性格も悪くない。彼も不要な争いはしないタイプのようだ。

 今後はわれと共にこの空き地を拠点にしたいらしい。』


 竜王はちらりとこちらに視線を向けた後、再度人間に視線を戻す。

 どうやらまだ疑いを抱いているようだな。まあ初対面の人族にそういった思いを抱くのは理解できる。だがあやつはわれの配下として働いてほしいので、もう少しアドバイスをしておくか。


『人族という点で不安はあるだろうが、われが見張っておくのでしばらくは様子を見てやってほしい。

 それに、こやつは料理ができるようだ。そちらも旨いものには興味があるだろう。

 なので暇つぶしも兼ねてちょくちょくここに視察に来て、直接彼の人柄を判断するのもよいだろう。

 われから言えるのはそんなところだ。あとは本人に直接聞いてみてほしい』


 われはそう竜王に言葉をかけると、横になって人間に視線を向ける。

 人間もそれに気付いたようで、こちらに数秒視線を向けた後、深呼吸をしだした。どうやら落ち着いたようだ。

 やれやれ。人族は無駄に大きいから自分より大きい存在に対して慣れていなさ過ぎなのだ。まあこれで大丈夫だろう。竜王は強力である一方で思慮深く、どんな種族とも対話できるらしいからな。


 お、竜王が人間に話しかけたようだ。人族の言葉はわからないが、人間の様子を見るに敵対的な言葉はかけていないようだ。

 人間の方も今度は落ち着いて話している。何度か驚いてこちらを見ているようだが、われが竜王を説得してやったことに驚いているのだろうか。

 ふふふ、なに、われは配下には優しいのだ。お主はそれにご馳走で返してくれればよい。


 われがまだ見ぬご馳走に妄想を膨らませているうちに話は終わったようだ。

 竜王は一度空を見上げた後、こちらに視線を向けて話しかけてきた。


『どうやらお前の言っていることに嘘はないようだ。

 しばらくの間はお前とこの人間への判断は保留とする。

 自分の発言を忘れないことを祈る。

 あと私も料理は気になるのでな。夜にまた来る』


 そう言うやいなやドラゴンは飛び去って行った。


 なかなか話のわかるドラゴンだったな。これなら今後は楽しくやっていけそうだ。

 それでは人間に一言声をかけて、昼寝に入るとしよう。


「みゃあぁあ(これからよろしくな)」


 それではおやすみ。



*****



 突然現れたドラゴンにマジでビビった。

 どうやら開幕ブレスはしないようだ。良かった。

 なんてことを考えていると、猫がみゃあみゃあドラゴンに向かって鳴きだした。もしかしてドラゴンと話せるのか。


 どうやらドラゴンはこちらが脅威ではないと判断したのか地面に降りてきた。そして猫の言葉に耳を傾けている。多分。すげえシュール。

 しばらく猫がみゃあみゃあ鳴いた後、ドラゴンは一度頷き今度はこちらに視線を向けてきた。改めて視線を合わせるとまたビビってしまう。声が出せない。


 すると横から再度みゃあみゃあ聞こえた。そちらを見ると、猫がこちらを見ている。もしかしたら猫が俺のことをフォローしてくれたのかもしれない。

 く、なんだか急に恥ずかしくなってきた。多分、ドラゴンにビビっているところを猫にフォローされた人間て俺が初めてじゃないか。

 よし、あの猫がなんて言ってくれたかはわからないけど、せっかくチャンスをもらったんだ。やるだけやってみよう。


 身体の震えを抑えるため何度か深呼吸する。

 俺が落ち着くのを待ってくれていたのか、竜王が話しかけてきた。普通に人族の言葉だ。


「そちらの猫がお前はこの森を荒らしに来たわけではないと言っているが、それは真か」


 猫、そんなフォローをしてくれていたのか。なんてやつだ。一生かわいがってやる。

 俺は落ち着いて言葉を返す。


「はい、私はここで静かに過ごすためにやってきました」


「では、お前は人族の勇者であり、今後はそこの猫と共にここで暮らしていく、というのも真であるか」


 なんで猫が俺が勇者パーティにいたことを知ってるんだよ!

 あとあんだけ警戒してたくせに一緒に暮らしてくれるのか、こいつ。ツンデレだったのか。


「正確には勇者の出来損ない、ですね。私は半年前に行われた勇者召喚に巻き込まれた者です。能力はたいしたことない、はずです。

 猫とは今朝からの付き合いですが、かわいいしできれば一緒に暮らしたいと思っています」


「ふむ。人間はまた愚かなことをしているようだな。

 猫の話しぶりではお前と既に話はついているようであったが、どうなのだ」


「私は猫と直接会話できるわけではないのでなんとも言えませんが、朝飯を提供したことと、警戒中に敵対行動をしないでいたことから猫がそう判断してくれたのだと思います」


「(この猫、人族と話せないのに思い込みであんだけ喋ってたのかよ…)

 では話を少し戻すが、勇者召喚されて、なぜここに来たのだ。そもそも一人でいる理由も気になるが、仮に少人数だとしても森に害あると私が判断したら殺されるという話は人間の間では有名であろう。」


「私がここに来たのは、人間の国や勇者から逃げ出したかったからです。私は貴族や騎士、そして勇者たちから出来損ない扱いされていたため、逃げ出すことを決めました。そしてここであれば追手はやってこないか、来たとしてもあなたに対処されるだろうと考えたのです。

 非常に自分勝手な都合で、あなたには迷惑だろうと思ったのですが、ここ以外に思いつかなかったのです。やはりご迷惑でしたでしょうか」


「今更ここに愚かな人間が来る人数が増えたところで大した問題はない。

 それにこの広大な森に人族が一人二人増えたところで何も変わらぬよ。

 だが、ふむ。では対価をもらうとしようか。人族とは対価があった方が安心できるものなのであろう?」


「誠に不躾ながら、その方が安心はできます。私に払えるものであれば、なんなりと仰ってください」


「では言わせてもらおう。猫がお前は料理ができると言っていた。そこでお前には、私がここを訪れた時は、私のために料理をふるまうこと、そしてそのために料理の技術を上げるための努力をすること、この二つを対価として要求しよう」


 だから猫はなんで俺の情報をさも知っているかのように話してるんだよ。まあそれくらいで森での生活が保障されるなら願ってもない話だな。


「わかりました。微力ながら少しでもおいしい料理を作れるよう努力させていただきます」


「よし!

 あー料理のためなら家を建てるとか畑をつくるとか、そのくらいだったら全然大丈夫だからな。下手な気遣いはしなくてもいいぞ。お前ひとりの行動で森が枯れるなんてことはまず起こらないだろーからな。

 あっ、やべっ」


 …今なんかすごいフランクに話してた気がする。

 ここは日本人の必殺技、空気を読む!


「寛大なご配慮、誠にありがとうございます。」


「う、うむ。

 しばらくの間はお前とそこの猫の行動は見張っておくから、くれぐれも森に迷惑のかからないように。

 それではこれからの努力、期待させてもらう。あと現状のお前の料理の腕を見るためにまた夜に訪れるので、忘れないように」


「はい、それでは今夜お待ちしております。今後ともよろしくお願いいたします」


 そうしてドラゴンは猫に少し話しかけたあと飛び立って行った。なんて言ってたんだろ。

 猫は一鳴きして寝入ってしまった。


 それにしても、あー、疲れた。

 森入って早々ドラゴンに会うとか、そのドラゴンがすごい理性的だとか、でも実はすごいフランクとか、予想してなかったし。ってかできねえよ!


 夜までに何とか満足させられる料理の準備をするべきか。それとも家とか生活のための準備をするべきか。

 どうしよう。

 ひなたぼっこしながら寝てる猫が羨ましい。それにしても本当になんでこいつ俺が勇者パーティにいたとかここで暮らしたいとか知ってたんだろ。

 ドラゴンと仲良くなったら聞いてみるか。


 よし、じゃあそのためにも一つ一つ行動していきますか。


自分で書いてると気付けないんですけど、このねこの喋り方って読者さんにヘイト溜まってますかね?

多分作者は傲慢バカかわいいを目指してるっぽいのですが。

プロットにドラゴンのドの字も入ってないことに今更気付いた作者の頭は自分でももう予測不可能なのですが、もし気に入っていただけたら今後もよろしくお願いします。


お読みいただきありがとうございました。

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