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もふぽて  作者: しーにゃ
第一章
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第二話 ねこと人間のファーストコンタクト

 この人間はなんでわれの拠点で堂々と眠っているのだ。ここで最初に寝るのはわれのはずだったのに。これだから人間というやつは。

 とりあえず文句を言ってやろう。ついでにわれの偉大さを見せつけてくれる。

 そう思ったわれは人間に近寄り、その頭に右手を思いっきり振り下ろした。


 てしっ。てしてしっ。


 …こやつ、われの攻撃が効いていないのか!

 いや、さすがにそんなことは、いや、しかし体のサイズを考えればありえなくもないか。

 人間という種族は童の時はわれよりちょこーっと大きい程度のくせに成長すると無駄に大きくなるからな。


 ならば。


「みゃあああ!」


 これならばどうだ!

 われの雄叫びを聞けば人間ごとき震え上がる、は、ず…。

 なぜだ。なぜこやつはなんの反応も起こさないのだ。


 くう、負けはせんぞ。

 ここはわれの拠点なのだ。初日から乗っ取られるわけにはいかん。


 てしっ。ぺしぺし。ぼふん。ごろごろ。


 ううっ。叩いてもぶつかっても体の上で飛び跳ねても全く反応せん。


「みゃああ、みゃあ、みゃああああああ!!」


 はあっ、はあっ。こやつ、まさか人間の英雄かなにかか。

 ここまでわれの存在を無視し続けるとは。


 はあ、もうよい。

 ここまでの力を持つ個体ならば今回は引き分けとして見逃してやろう。

 ただし、今回だけだからな。ちょっと寝て起きたら今度こそ白黒つけてやるぞ。覚悟しておけ。


 そしてわれは、最近の人間はうつぶせに寝るのが主流なのか、などと考えつつそのまま眠りに落ちた。



*****



 んんん。ああ、朝か。たしか勇者たちから逃げて、森の奥まで来て、疲れてぶっ倒れたんだったか。

 なんか顔面が痛い。よく前のめりに倒れたのに眠れたな、俺。

 現状認識も終わったしそろそろ起きるか。


 のそのそと起き上がり周りを見渡すと、すぐ横になんか猫っぽいのが丸まって眠っている。

 なんだこいつ。猫、いや、かすかに魔力をまとってるから猫型の魔物か。

 ちょっと汚れてるけど、背中側は金に近い茶色でお腹は白い。大きさは30cmくらいか。

 っていうかめちゃくちゃかわいい。もふりたい。


 欲望があふれてきたがこんな小さい動物を驚かせるのも申し訳なく思えたのでジロジロと見つめるだけに留める。


 だがなぜ俺のすぐ横で寝ているのだろうか。

 普通野生の動物、っていうか魔物なら人に近付かないか逆に襲うもんだろうに。

 こいつ俺が起きてもすやすや眠ってるし、もしかしてペットだったのだろうか。


 まあ考えてもしょうがないか。とりあえず飯でも作ってれば起きるだろ。

 そうして俺は空間魔法を発動し、亜空間から料理に必要なものを取り出して準備を始めた。


 猫用に薄味の簡単なスープを煮込みながら生肉を小振りに切り分けて焼く準備をしておく。

 亜空間に保存しておいた食料はどうやら時間経過が緩やからしく、逃亡前に用意しておいた食料にはまだまだ余裕がある。

 うむ、とても便利だ。欲を言えばもう少し大きな空間が良かったが、倉庫サイズでもありがたいと思うべきだろう。


 そんなことを考えていたらスープがいい感じに煮えてきた。食欲をそそる匂いもしてきた。そろそろ食べ頃かな。

 すると匂いに気付いたのか、ようやく猫がもぞもぞ動き出した。やばいかわいい。

 猫はきょろきょろ見渡すと鍋から匂いがすることに気付いた。そして鍋に近寄ろうとしたところでようやく俺の存在に気付いたらしい。


 びくりと立ち止まると猫は毛を逆立ててしっぽを地面にぺしぺし当てながらこちらをにらんできた。警戒しているのだろうか。

 なんかいちいち動作がかわいいのでぼーっとその動作を眺めていると、猫はそれが気に入らなかったのか今度はみゃーみゃーと鳴いてきた。鳴き声もかわいいなあ。


 まあここは敵じゃないことを示すためにご飯をあげることにしよう。ほれ、まずは生肉だ。

 猫は急にこちらが動いたのでまたびくっとしていたが、肉の匂いを嗅ぎぺろぺろ舐めてそれが食べられるとわかると、こちらのことを忘れたかのようにもぐもぐし始めた。ナニコレカワイスギルンデスケド。


 ついでに焼いた肉も食べるのか試すために肉を焚火で炙り始めると、猫はもぐもぐしながらもこちらの様子をうかがい始めた。

 猫はもぐもぐし終わると再度こちらを威嚇してきた。なので串に刺した焼けた肉を手に持ちゆらゆらと左右に動かしてみる。猫は威嚇体制のままだが顔ごと肉の動きを追っている。

 そして焼いた肉を猫の前に差し出すと、猫はバッと跳びかかり肉をもぐもぐし始めた。生肉よりもおいしいのか先程よりも夢中になっているようだ。


 その様子に調子を良くした俺はスープ用の器を取り出し、スープも与えてみることにする。

 猫はスープが気になっていたのか、肉もぐもぐを一度やめてスープに舌をつけた。ビクンとしてから必死に手をぺろぺろしだした。どうやらこちらの世界でも猫は猫舌らしい。

 ようやく落ち着いたのかまた肉をもぐもぐしつつこちらをにらんでくる。いや、スープはちょっときみには熱かっただけで毒じゃないからね。それを示すために俺は自分のスープを飲み始めた。


 猫はその様子を疑うように眺めていたが、肉を食べ終わり再度スープに向かってゆっくりと舌をちょこんとつける。どうやら大丈夫な温度まで下がったようだ。猫は徐々にスープを飲む速度を上げていった。

もうお腹はいっぱいかな。そう思いながら俺は自分用の肉を焼いて食べ始める。

 するとスープを飲み終わった猫はこちらを、じゃなくて肉を見つめてくる。まだ食べ足りないようだ。


 猫が満足するまで焼いた肉とスープをふるまうことになった。


 ようやく満足したのか猫はふーっと息を吐き、そのあとくぁーっとあくびをした。そして横になって丸くなろうとしたところで動きを止めて首を傾げている。どうしたのかな。

 10秒くらい首を傾げていた猫は思い出したかのようにバッと立ち上がり、こちらを向いて威嚇してきた。しっぽでぺしぺしもしている。どうやらあれは威嚇の動作のようだ。でもただただかわいいとしか思えない。


 しばらく見つめ合っていたが猫はこちらが動じないことを悟ると溜め息を吐き、やれやれといった様子で木の根元まで移動して丸くなった。

 こちらを敵じゃないと認識したのだろうか。でもまだこちらをちらちらうかがっているので、俺に完全に気を許したわけではないのだろう。


 とりあえず朝飯は食べたし猫に癒されたのでいろいろと行動を開始することにしよう。

 まずはここに家を建てる準備をしないとな、と考え始めると急に俺でも感知できるほどとてつもなく大きな魔力反応が高速でこちらに近付いてきた。


 そして上を見上げるとそこには黒くてとても大きなドラゴンがいた。


ねこの妄想してる時間が一番楽しいです。

でもリアルねこの生態はほとんど知りません。

ねこカフェとか行きたい。


お読みいただきありがとうございました。

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