第十九話 竜王への手紙
長くなったので二話にわけました。事件解決?は次話になります。
すぐに第二十話を投稿します。
よろしくお願いします。
さて、どういうことか説明してもらおうか。みゃああん?
もうネタはあがっているんだ。この女はケイの名前を呼んでいたし、お前もこの女を知っているようだった。
さあ、いったいこの女はお前のなんなんだ、いい加減吐いたらどうだ。
このようにケイと女とわれが家に戻りケイが女を寝床に寝かせた後、われはケイに尋問を開始した。
というのもケイが勝手に色々始めたからだ。そこは最低限われに許可をもらってからやるべきではないか? お前はたしかにわれの配下で共に暮らしているが、ここがわれの拠点なのは変わらないんだぞ。
別にケイが知り合いを連れてこようが何をしようがあまり口は出したくはないが、明らかにこれは問題ごとを起こす展開だろう?
さあ、吐け。おぬし、われに言ってないことがあるんだろう? さあ!
ぶみゃああ!
ぬ、誰だ、せっかく人が場の雰囲気を明るくしようと気をつかっているのに邪魔をするやつは。む、ブラド貴様か。いきなり来て早々われをはたくなど、調子に乗っているようだな。よろしい、今日こそ貴様との決着をつけてやぶみゃああ!
『うるさい。この寝てる娘は病人なんだろう。寝てるやつの近くで騒ぐなバカ者』
ぐ、正論を盾にするとは。反論できんではないか。
だが、正論が常に正しいと思うなよ。ただ今日の所はわれが引き下がってやる。われがケイに尋問しても何を言っているかわからないからな。
ということでブラドよ、事情を聞いたらきちんとわれにも説明するのだぞ。われがこの拠点の主だからな。
『はいはい。わかったよ。わかったから部屋から出ていけ。
部屋の外でおとなしくしているヴィムを少しは見習ったらどうだ』
ぬ、このわれをそのように扱うなど、断じて許せん。今回の件に片がついたらきっちりとわれとの勝負につきあってもらうからな、覚悟しておけよ。
『りょーかいりょーかい。アーコワイナー』
ブラドの態度は非常に気にくわんが、ここにわれがいてもあまり意味がないのも事実。
しょうがない、ヴィムと今後のことについて話でもしておくか。
お~い、ヴィム~。
「わふん(静かにしてください)」
む、ヴィムまでブラドに染まってきてしまっている。
ふん、もういい。われは寝床で寝ているから、話がついたら起こすのだぞ。
*****
フレイさんをダッシュで家に運んだ後、申し訳ないが勝手に装備は外させてもらいベッドに運んだ。念のため作っておいた客間だ。これであとは様子を見ていれば少なくとも死ぬことはないだろう。
だが、どうして彼女がここに…。
彼女はこの竜王の森のある国から、いくつもの国を挟んだ向こう側にある国の、王城勤務の兵士のはずだ。
戦争でもない限り間違っても国の外に一人でいるなんてことはないはずだ。
しかし彼女は実際に国の装備を付けたままこの森に入ってきた。もしかしたら複数人で来ていてはぐれたのかもしれないが、ううむ。
よし、考えるのはやめよう。
聞けばわかることだ、うん。
いや~、それにしても驚いた。
またフレイさんに会えたこともそうだし、こんな所で会ったのもそうだし、俺が旅立ちの前にお礼としてあげたストラップを大事にしていてくれたのもそうだ。特に最後のはすごいうれしい。
お城で厄介者扱いされていた俺を助けてくれた人は数人だったが、彼らには本当にお世話になったから、お礼に異世界のもの、ペンとかだけど、をあげたんだよな。
あの人たちも元気にやってるのかな~。
ちなみにフレイさんは騎士が誰も俺に剣の使い方を教えてくれないから、下級兵士なのにこっそりと俺に指導してくれた人だ。いわば剣の師匠だな。
フレイさんは魔法が得意ではないがその分身体強化が得意で、剣の腕自体はなかなかに高かったらしい。まあ身分のせいで昇進しづらく戦争もなかったからする機会もなくて、下級兵士のままだったようだけど。
年はたしか二つ上の22歳、いや、もう23歳だったか。金髪碧眼の美人さんだ。まあこの世界の半分くらいは金髪碧眼だし、貴族とかと比べるとやはりゴージャスさはないが。それでも多分下町のアイドルにはなれるであろう美人なのは間違いない。
身長は170cmくらいで俺より少し低い。口調は丁寧で物腰柔らか。多分騎士鎧をつけていたらまさに女騎士の鑑という感じだろう。
そんな彼女なのだが、本当になんでここに来たのだろう。
そういえば手紙をタマが持ってきたけど、これはフレイさんがタマに渡したのかな。
そんなタマはさっきからずっと俺に向かってみゃあみゃあ言っている。かわいいが病人の前では静かにだぞ。ということで無視。
あの手紙、気になるな。
よし、ブラドのなら読んじゃうか。
そう思い手紙を手に取ると急に勢いよく静かにドアが開くとブラドが入ってきた。
タマをぺちんとはたいてなにやら注意しているみたいだ。タマがすごすごと部屋から出て行った。
「おっす。なにやら事件発生のようだな」
「おっす。そうみたいだ。でも事情はまだ何も聞いてないからさっぱりわからん。ということでこの手紙お前宛だけど勝手に読むぞ」
「いや、そこは俺に渡せよ」
しぶしぶ手紙をブラドに渡した。
「なになに?
『竜王様へ
私はアデルニウス王国の兵士、フレイと申します。生きていれば目の前の私が、死んでいれば私の死体が持っている剣や鎧の紋章などから、これが嘘でないと信じて頂けたらと思います。
さて、この度私が竜王様の住まう森に参りましたのは、とある黒髪の青年がもしこの森に居ましたら、もしくは今後来ましたら、命を守ってほしいとお願いするためです。
彼は現在人の世界で生きにくいとある事情を抱えています。ですが、決して悪人ではないのです。
彼は多少常識を知らないためもしかしたら竜王様のご迷惑になるかもしれません。ですが、平和を愛すると名高い竜王様でしたら、彼が決して悪気があって行動しているわけではないことがわかるはずです。
図々しいお願いであることは十重承知しておりますが、どうしても、この願いを竜王様にお伝えしたかったのです。
今私が生きているかどうかはわかりませんが、もしこの手紙を竜王様が読んでくれているとしたら、どうか私の願いを覚えて頂けたらと思います。
私から差し出せるものはもはや命くらいしかありませんが、どうぞよろしくお願い致します』
だとさ。これ、ケイのことじゃね?」
間違いなく俺のことだな。フレイさんは他の勇者と接点はなかったはずだし、わざわざ好き好んでこの森に逃げ込むようなやつは滅多にいないだろう。
でも、なぜフレイさんが命をかけてまでこんな願いをブラドに言いに来たんだ?
「ブラドって生贄と引き換えに願いを叶えたりするやつだったっけ? 邪竜だったの?」
「いやいや俺はそんなことしたことないぞ。人間相手だとだいたい攻撃されたらブレス吐いて終わりだし。
まあなんでかはわからないがこの娘はケイを助けたかった。そしてケイがここに来る、または既に来ているであろうことを突き止め、俺にお願いしに来た。ってところか」
「フレイさんのお願いはきいてくれるのか? 竜王サマ?」
「条件次第だな。その黒髪の青年が俺に料理をご馳走してくれるなら叶えてやらんでもない」
「こりゃ大変だな。とっておきの食材を用意しておかないと」
「大盛りでたのむぞ」
「了解」
そんな冗談を言い合いながら、ブラドに様子を見るのを頼みつつ俺は夕飯を作ることにした。
作者的幸せになってほしいキャラ堂々の第一位のフレイさんのことを考えていたら長くなってしまいましたので、第二十話に続きます。
お読みいただきありがとうございました。