第十五話 もうすぐ冬が来る
PVが順調に増えててうれしいです!
これからもがんばります!!
われの拠点にヴィムがやってきてから少し経つと、ちらちらと雪が降るようになった。
だがその程度では、われの行動を邪魔することはできない。今日も今日とて修行に探索にと、様々な活動を精力的に活動する。昼寝だけはきちんとするがな。
これは決してケイの料理を食べ過ぎて体が重くなったからではない。違うのだ。そう、あえて自らの体に重りをつけて修行時の負荷を増大させる計画が予想以上にうまくいきすぎてしまったためのやむを得ない対処なのだ。
つまり全てケイが悪い。そうに決まっている。
ちなみにヴィムは数日もすると体が完全に復調したのか元気に走り回っている。時々ケイと散歩に行ったり、昼寝したり、もふもふされたり、丸洗いされたり、ブラッシングされたり、畑を見回りしたりとがんばっている。…ケイはかまい過ぎではないか?
ブラドに魔力を強化しないのかと訪ねたが、もう少し成長してからとのことでヴィムはバクバクと大量にご飯を食べている。
うむ、ヴィムよ、その調子で精進するのだ。
でもそんなに遠慮せずに、たまにはわれにも特訓の申し入れをしてもよいのだぞ。
最初に雪が降った日、われはなんとなく大きな木の小動物たちの様子を見に行ったところ、木自体が火属性の魔力を持つらしく、木の周りだけ柔らかな温かさで包まれていた。
餌については木が栄養豊富な木の実を年中つけているし、草も枯れていない、虫たちも寒さに負けず動き回っているので問題ないようだ。
どうやらあやつらは冬でも何も問題ないらしい。
ぬ、これ、こっちに来るな。わしは別におぬしらが気になってここに来たのではないからな。リベンジの前におぬしらがくたばらないか気になっただけなのだ。
だからわれを囲んでにやにや踊りまわるのはやめろ!
さて、今日は何をするか。
ケイが作った、走ると足場が動き、走り続けてもその場に居続ける不思議な丸い道具は結構楽しく運動できるので気に入っているのだが、それを見たケイのなんとなく不憫な目が気になるので今日はやめておこう。自分が作ったくせになんなのだ、あれは、まったく。
では他には、木登り、狩り、魔法、昼寝。う~む。
よし、ブラドになにかないか訊いてみよう。
というわけでソファで昼寝していたブラドの腹にテーブルの上からダイブ!
『というわけで、なにかよいひまつb、修行はないか?』
『う~ん。運動を兼ねたひまつぶしなら、探し物なんてどうだ?』
『探し物? この森を走り回ってなにかを探すということか。うむ、よいではないか。
それで、何を探せばよいのだ?』
『そうだな。えっと、たしかここにあった気が。
ほら、この赤い実はどうだ? 木に生っているんだが、その木が少ないうえ実が生るのも珍しくてな。
それにきちんと処理をすると旨いぞ』
『よしわかった、探して来よう』
そう言い残してわれは拠点を飛び出した。
あれから数時間、探せども探せども見つからない。赤い果実はちょくちょく見かけるのだが、形も大きさも全然ちがう。
ふむ、たしかになかなか見つからないから良い運動にもなるし、旨いもののためだからやる気も継続する。
ブラドもたまにはいいことを言うではないか。普段は遊びに来ては寝るか食べるかケイと遊ぶかわれの邪魔をするかヴィムと戯れるかしかしないが、さすがに長くこの森を支配しているだけはある。
ん? あれは…。おおっ、ついに見つけたぞ!
拠点からは少し遠かったが、無事見つけることができた。
あとはこの木に登るだけ…。この木、枝が少ないし、妙にツルツルしてないか?
ふにゃ! つるっ。
むにゃん! つるつるっ。
…。
ブラドのやつ、これがわかっててやらせたな。あとでお仕置きが必要なようだ。顔面ダイブに加えてしっぽ往復ビンタの刑に処す。
だがあの実が旨いというのは本当かもしれん。それに見つからなかった、あるいは見つけたが採れなかったと言うのも癪に障る。なんとかして登るしかない。
何か手はないものか…。
そういえば魔力で肉体が強化されるとか言っていたような気がする。
であれば爪に魔力を集中させれば、あるいはいけるやもしれん。
では早速試してみるとしよう。ふん!
う~みゃああああ! がりっ!
おおっ! 爪が刺さったぞ!
予想通りだ。さすがわれ、超絶頭が良いな。
だが思ったより消耗が激しい。すぐに登らなくては。
にゃっ。みゃっ。うみゃっ。みゃああ!
ふう、ようやく目的の枝にたどり着いた。
あとはこのいくつか実の着いた先端の枝を切り落とすだけだ。
むん! よし。
ん?
隣の枝にも実が生っているのか。色は青いが、ついでだ、持って帰ろう。
さて、あとは降りるだけなのだが…。うむ、これしかない。
必殺、気合、ダーイブ!!!
シュタッ!
ふう、もう魔力がわずかしか残っていなかったからな。降りるにはこの手しかなかった。ちょっと高くて気が引けたが、われも成長したものだ。問題なく着地することができた。これも魔力のおかげかもしれない。
ということで枝を二つ持って、いざ帰還!
*****
「喜べケイ、今日のデザートは豪華だぞ」
自室でなんとか暖炉のような暖房器具を作れないか考えていると、急にブラドが乗り込んできて言い放った。
「なにがあったんだ? それとノックしろ」
「タマにいい修行はないかと訊かれてな。修行と称して希少な果実を取りに行かせたんだ」
「この寒くなってきた時期にか。鬼だな。いや、ドラゴンだったか」
「なに、まだ本格的な冬の前だ。もう少ししたら雪が腰まで積もるぞ」
「マジか。こりゃ本格的に寒さ対策と雪対策をしなくちゃだな。
なんかいい暖房器具知らない?」
「俺は必要としないからたいして詳しくないが、たしか他の森の住人が亀の魔物の甲羅を利用してたな」
「どんなものなんだ? というかやっぱり他にも森にすんでる人いたんだな」
「この森も広いからな。全部で千人はいるんじゃないか? みんな俺を怖がったり崇めたりするから近寄らないが。
それとその亀の甲羅は魔力を流すといい感じに温かい温度を保つって性質があるんだ。それで使う時だけ魔力流して暖房代わりにする感じだな」
十分詳しいじゃないか。さすがブラドは知識チートだな。困ったときのブラドさんだ。
「その魔物ってこの近くにもいるのか?」
「少し遠いがケイなら日帰りできるだろう。同じ森の住人だから俺は手を貸さないが、方角くらいは教えてやろう」
「助かる。お礼に今日のデザートはブラドの分多めにしてやろう」
「さすがケイ、話が早い」
なんとか冬を越す準備が整ってきたな。食べ物の心配をしなくていい分普通のサバイバルよりかは楽なんだろうけど、俺はきちんとした生活のための知識や技術があるわけじゃないからな。魔法とブラドのおかげでなんとかやりくりできてるだけだ。
その内他の住人を探してみるのも手かもな。
「そうだ、ちなみに一番近い住人の所までどれくらいかかるんだ?」
「俺なら30分くらい。ケイなら走り通して3日くらいじゃないか?」
うん、住人探しは諦めよう。
そしてタマが無事デザートの果実を持って帰って来たのでみんなでおいしくいただいた。めちゃくちゃおいしかった。
青い実は食べられないらしいので、家の近くに埋めてみることにした。
無事に芽が出て成長してくれればこの実を食べる機会も増えるだろう。
そんなことを考えつつ、亀討伐の準備を済ませて寝ることにした。
ケイがタマに作った走るための設備は、よくハムスターのカゴに入ってるやつの大きい版です。
あと言う必要はないかもですが、基本語り部はタマとケイだけです。
気分転換に書きたくなったら誰かの視点で書くかもしれませんが、現時点では予定にないですね。
あと今日久しぶりに猫の生の声を聞きました。テンション爆上げでした。僥倖。
お読みいただきありがとうございました。