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もふぽて  作者: しーにゃ
第一章
11/121

第十一話 ねこと魔法

今回は説明回というのもあって7割方ケイと竜王の会話になります。

それではよろしくお願いします。


2018/01/05 タイトル改変しました。「タマと魔法」→「ねこと魔法」

 屋外の寝床タワーの上でごろごろしていると、ケイが外で何かしているのが見えた。相変わらず仕事好きのようだ。あやつがおとなしくしているところをあまり見たことがない。


 しばらくそんな作業風景を見ていると、ケイがどこからともなく火をだしたり、水を出したりしているのが目に映った。そう言えば温かい風を出すなんてこともやっていたな。よくよく思い出してみると明らかに大きなものや手に持っていなかったものを空中からいきなり取り出したりもしていた。

 ふむ、あの面妖な術、気になるな。もしわれがあれを使いこなせるようになれば、このわれの強さがさらに強大になるやもしれぬ。そんなことになれば、ふっふっふ。あの緑の虫けらや小さき獣どもに一泡吹かせるのも可能というもの。


 よし、そうと決まれば早速ケイに習ってみるとしよう。

 さあ、ケイよ。今こそお主の秘術の真髄をわれに教えよ!


「みゃおおおおおん!」


『ん、なんだタマ。今は魔法の練習中だからこっちくると危ないぞー。

 お、どうした今日は。やけに絡んでくるな。そうか、遊んでほしかったか。ようやくそっちからせがんでくるようになったな。俺はうれしいぞ。

 ほら、昨日の夜作ったばかりのねこじゃらしもどきだ。そ~ら、みょんみょんみょ~ん』


 われがケイに秘術の教えを乞うていると、何を勘違いしたのかケイは気持ち悪くにんまりと笑った後、どこからか奇妙な枝を取り出した。

 む、今はそんな枝はどうでもよいのだ。早くわれに秘術を…。むん!


 なぜか無性にぷらぷらとゆれる枝の先端をはたきたくなったので、つい体が動いてしまった。く、われは何をやっているのだ。

 だが、あのふらふらと上下左右に動く物体がすごく気になる。いや、われはこんなことをしている場合では、いや、しかし。


「ふみゃあ! うにゃああ!」


 だめだ! まるで体が操られているかのように勝手に動いてしまう。これもケイの術なのか?

 くそ、そんなことを考える余裕すらなくなっていく。今はあれを何とかしてはたき落としたいと、体が心に訴えかけてくる。

 もうこうなったら、さっさとあの枝をはたき落として術を解き、それから本来の用を済ませるしかない。いくぞ、ケイよ。われを本気にさせたことを後悔するがよい!


「ふみゃうみゃああああ!!!」



*****


 家を作ったり周辺の探索をしたりするのに一区切りがついたので、今日はなんとなく魔法の練習をすることにしたのだが、途中からタマがじゃれついてきたのでかまってあげることにした。


 いつもはこっちからかまいに行かないと何もしてこないのに、今日はどうしたんだろう。まあいい。ちょうど昨日の夜、遊びで作っていたねこじゃらしもどきが完成したのだ。この恐怖をたっぷりと味わうがいい。


 ほれ。にゃうん。ぺしーん。

 こっちだ。みゃふん。ぺしぺしーん。

 これならどうだ。みゃおおん。ぺっしーん。


 かれこれ一時間は遊んでいただろうか。ついにタマの体力が尽きて遊びの時間は終わりを迎えた。タマは力なく地面の上で大の字?しっぽがあるから木の字?になっている。

 うむ、やはりじゃれつく猫はかわゆいな。一気に疲れが吹き飛んだ気がする。今日は素晴らしい休日になったな。


 などと考えていると、少し久しぶりの感覚がやってきた。


「お、ブラドか。そうか、あれからもう一か月くらいか」


 空から舞い降りた竜王ブラドは前回の宣言通りふわっと着地した。


「おう、ケイ、飯食いに来たぞ!」


「一か月ぶり、ブラド。いくつかこの森の食材を使った料理を作ってみたからぜひ食べてみてくれ」


 そんな感じで竜王との再会は始まった。



 料理の下拵えは週に一回くらいの頻度でまとめてやって亜空間に放り込んでいるので、料理の時間はそんなにかからない。ということでブラドを新築に招いてお茶と試作したお茶菓子でもてなしつつ、俺は料理を開始した。


「一か月で作ったにしてはなかなか立派な家じゃないか。魔法を使ったのか?」


 キッチンで料理をしている俺に向かってリビングからブラドが話しかけてくる。


「ああ、空間魔法がすげえ役に立ったな。材料作ったら運ぶのに手間がかからなくて楽だった。設置もある程度自由が利くから柱を立てるのも楽だったし、ほんとに魔法って便利だよな」


「ほう、空間魔法か。そう言えば勇者の荷物持ちをしていたんだったか」


「そうそう。この魔法のせいでちょっと大変な目にあった気もするけど、これに助けられたことの方が多いから、素直にありがたいと思っているよ。

 他のは火、風、水の簡単なのしか使えないけどな」


「使えるだけまし、と思うのが良いのであろう。まれにだが全く魔力を使えない者や、魔力量が少なすぎる者もいるからな」


「たしかにな。

 ああ、それと勇者たちからかっぱらってきたものだが、魔剣がすごい役に立ったな。これがあるだけで戦闘の質が大きく変わりそうだ。今回は木の切りだしとかにしか使わなかったが」


「ふっ、ずいぶん贅沢な魔剣の使い方だな。それを使えばわれの鱗に傷位ならつけられるかもしれんぞ」


 ブラドが苦笑しつつ変なことを言ってくる。


「友達に切りかかるわけないだろ? 変なこと聞くなよ」


 そう返してやるとブラドは一瞬猫だましをくらったような顔をしたが、すぐに道端で野良猫に遭遇したような笑みを浮かべた。


「ありがとう。そうして俺を友と呼んでくれる存在は久しぶりだ。

 一か月の森の生活も問題なかったし、これでケイを立派な森の住人として、いや、俺の友人として認めようと思う。改めて、これからもよろしくな、ケイ。

 ふふふ、今日は実に良い日だ」


 そういってブラドは実にうれしそうに菓子を頬張った。


 それからも色々と取り留めもなく喋っているうちに料理ができた。

 そしてタイミングを計ったようにタマがタマ専用入り口から家の中に入ってきた。一度注意しただけでちゃんと足を自分で拭いてくれるのが地味にすごいと思う。


「よし、料理できたぞ。タマも戻ってきたし、夕飯にしよう」


「おお、待ってました!」


 そんなこんなで楽しく夕食の時間は過ぎて行った。

 ちなみにタマが平然と食べていたので試しに出した料理は、やはりブラド、というよりは普通の味覚の持ち主には辛すぎたり酸っぱすぎたりしたようで、ダメ出しもとい改善要求された。それでも残さず食べてくれたのがうれしかったな。


 それから楽しいティータイムに移り、また色々と雑談を開始したのだが、珍しくタマの方からブラドに話しかけていた。


「タマはなんて言ってるんだ?」


「うむ、今日の昼にケイが魔法を使っているのを見て自分も使えないかと聞いてきたようだ」


「あれ、遊んでほしかったんじゃなかったのか。その割にはだいぶ楽しそうにねこじゃらしにじゃれついてたんだけどな」


「それについてもケイの術のせいだと言っているぞ。自分の体の自由が利かなくなったらしい。そんな魔法が使えるのか?」


「まさか。多分本能に支配されてしまったんだろ。こっちの世界じゃほとんどの猫がそうだった。

 っていうか今更だがタマは猫でいいのか? 一応魔物の一種なんだよな?」


「似たような魔物にインペリアルグレートタイガーとかいうふざけた名前を付けられたやつならいるぞ?

 ただタマはそれと比べるとサイズと魔力が小さすぎるがな」


「ひどい名前だ。もしかしたらそれの不完全個体というか変異種なのかもな。

 それで群れから追い出されたとか」


「自分から旅立ったと言っているが、実情はそうだったのかもしれんな」


 タマが竜王をぺしぺしたたいている。余計なことを言うな、とか早く魔法教えろって言ってるのかな。


「それで、タマに魔法は使えるのか? どう教えたらいい? 人間と同じでいいのか?」


「基本は魔力操作さえできればあとは触媒を用いて属性を確認、それからはひたすら魔力の効率運用と想像力の強化、あとは慣れだな。

 ケイはすぐに魔法が使えたのか?」


「ああ、元の世界には魔力がなかったせいか、魔力の感知は問題なかったからな。操作するのにはちょっと時間がかかったけど、数時間で簡単な魔法を使えるようになったぞ。

 勇者たちはいきなりドカンドカン魔法を撃っていたけどな」


「なるほど。人族のわりには魔法適正が高かったようだな。なに、その内勇者たちのような魔法も使えるようになる、心配するな」


 そのブラドのセリフに俺は固まった。


「あれ、魔力量は成人くらいで限界が成長が止まるからそんなに強力な魔法は使えるようにならないんじゃないのか?」


「ああ、それは迷信だな。たしかに基本的な生物としての機能では体の大きさと魔力量は正の相関関係にあるが、成長が止まった後も魔力量は大きくすることはできる」


「ちなみに俺でもできるのか?」


「魔力が濃いこの森で暮らしてたら勝手に大きくなるんじゃないか? 原理としては魔力を含んだものを食べるとそのうちのいくらかが体に還元される感じだからな」


「なにそれ初耳なんだけど。ああ、そうか。この世界の魔物、つまり魔力を持った動物はまずい奴が多くて、食べられるやつも強すぎるか個体数が少なすぎるかで貴族でも滅多に食べられないって聞いたことがある。

 つまり検証が進まなかったせいで知られていないんだな」


「そうだろうな。俺みたいに数百年以上の間なんでも残さず食べていれば下位ドラゴン程度簡単に狩れるようになるのにな」


「比較対象がいろいろ間違ってる」


「知ってる」


 この野郎。小粋なジョークを挟みやがって。


「それで、話を戻さないとタマがかみつきそうだから戻すけど、タマは魔法を使えるのか?」


「すこし魔力が少なすぎるな。これだと魔法として具象化するほど魔力が集まらん。」


「じゃあ魔力が増えるのを待つってことか」


「いや、他にも方法はあるぞ。例えばだな…」


 そう言ってブラドはタマを外に連れて行く。俺もその後を追う。


「人間にはおススメできないが、体内に魔石をもつ魔物であればこんな方法でも魔力は強化できる」


 その言葉と同時にブラドから大量の魔力が迸り、それはタマの額に触れている右人差し指に凝縮され始めた。

 どうやら魔力をタマに送り込んでいるようだ。


「おいおい、それ本当に大丈夫なのか?

 タマが凶暴化したり、鱗が生えたりするのは俺嫌だぞ」


「なに、知性の低い下位の魔物ならその可能性もあるが、こやつなら大丈夫だろう」


 そんなこと言いながら容赦なく魔力を送り続けている。

 するとタマが急に毛を逆立てて震え始めた。


「みゃ、みゃあ!? みゃあああああああ!!!」


 タマが叫びだすのと同時にタマの全身から雷光が放たれた。

 そして力尽きた様にタマは倒れこむ。


「タマ! おい、大丈夫なのか?」


「ああ、ずいぶん魔力の蓄積に時間がかかったから心配だったが、無事魔法発動できるだけの魔力が扱える器になったようだ。今は寝てるだけだ。

 性格の変化とかは、まあ、大丈夫だろ」


 どうやらブラドは深く考えずに行動を起こしたらしい。

 これでタマに異常が出たら今後激辛料理だけ食わせてやる。


「それにしても、インペリアルグレートタイガーは風を操るはずだったが、タマは雷属性だな。もしかしたら本当に変異種なのかもしれん」


「そうかもな。よし、今後はタマと俺の強化を目指して魔力が詰まってそうな食材を優先的に食べるか」


「それがいいだろう。魔物相手に返り討ちにならないように気を付けることだ。

 俺も返り討ちは禁じていないからな」


「わかってるよ。気を付ける。

 そういえばこの森はやたらと魔力が濃いよな。なんでなんだ?」


「最初は普通の森だったのだがな。

 俺が住み始めたら数百年かけて魔力が濃くなった。多分俺の魔力で大気中の魔力濃度が上がり、それに耐えられる動植物だけが残り、それでまた大気中の魔力濃度が上がり、の繰り返しだな」


「全部お前のせいじゃねーか。

 じゃあこの森に住み始めた理由って何かあるのか?」


「あるぞ、大きな理由が。

 世界各地を回っていたのだが、俺の食欲を満たし、かつ一番うまい果実を実らせていたのがこの森なんだ」


「あさっ! 思った以上に浅い理由だった!

 そこは魔神の封印とか古代遺跡の管理とか世界樹の守護とかそういう理由があるもんだろ! テンプレさんにあやまれ!」


「テンプレなぞ知らん! 別に俺みたいななんちゃって竜王がいたっていいじゃないか!

 あとさっきタマに鱗が生えたらやだって言ってたけど鱗は嫌いなのか!?」


 こんな感じで俺と竜王の騒がしい夜は更けていった。


世界観説明いこーるケイ視点になってしまいますね。

タマじゃできないので(笑)

説明回は読み手がだるくなるので軽い感じでできるよう挑戦してみたのですが、自分で書いてるとわからないもんですね。これからも精進します。


お読みいただきありがとうございました。

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