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もふぽて  作者: しーにゃ
第二章
108/121

第8話 ねこ耳幼女、誕生日を祝われる

昨日は更新できずすみませんでした(泣

とりあえずまだ毎日更新はできそうなので、無理しない程度にこれからもがんばります。

よろしくお願いします。

 暑さがまだまだ衰えない夏の今日、われは拠点内に放置されている一つの小屋の中にいた。他に小屋の中にいるのはミリア、ミナ、ヴィム、ルーア、そして狐だ。われたちは少し低めのテーブルに用意された料理を囲んで座っている。


 テーブルの上を見渡して全ての準備が整ったことを確認したミリアが、われたちに目線をよこしてから笑顔で高らかに言葉を告げる。


「ミナ、おたんじょーび、おめでとー!」



 われの拠点の近くに居を構える猫人族の獣人家族、その一人娘であるミナは夏生まれだ。ミリアと違って正確な誕生日はわからない。というか、ケイとミリア以外、自分の誕生日を正確に把握しているものなど他にいない。普通は冬を越えた回数なり、生まれた季節が来るなりしたら歳を一つ足すものだからだ。


 しかしミナをきちんと祝いたいミリアがケイとフレイに懇願し、ミナの両親であるアウルとテナと協議を重ねた結果、ミナの誕生日は決定されたのだ。そして本日がその誕生日というわけだ。


 ミリアの声に続いてわれたちがミナに祝福の言葉をかける。ミナは嬉しそうに顔を赤らめてお礼を返してくる。明るい茶色の三角耳としっぽをぴこぴこと動いているあたり、本当に嬉しそうな様子だ。


 ミリアが机の上に置かれた一本のろうそくに魔道具で火を付け、ヴィムが魔法で小屋の中を気持ち暗くする。そして仄かな明かりで小屋の中を灯すろうそくの火を、ミナが優しく吹き消す。


 これはケイが広めた習慣で、なんでもろうそくはその人物の寿命を意味し、その寿命を溶かす火を誕生日に吹き消すことで長寿を願う、という風習がケイのいた世界にはあったらしい。それを気に入ったフレイや獣人親子が取り入れた結果、今ではこの拠点ではこれが誕生と長寿を祝う常識となっている。


 ろうそくの火が消えた後、ヴィムが魔法を解き明るくなった小屋にて改めて昼食会が始まった。夜はミナは家族と祝うため、ミリアやわれたちとは昼に祝うことになっているのだ。


 ミリアはうきうきとした様子で料理を小皿に取り分けミナたちに配っていく。いつもなら二人で協力する所だが、今日はミナが主賓なのでミリアが全て行うようだ。


 ミリアが取り分けている料理の中には、実はケイが用意したものは一つもない。なんと今回の誕生会に合わせて二人は料理をそれぞれ親から習い、自分の手で料理したものを持ち寄ったのだ。


 普段ケイの料理を見ているものからすれば、たしかに彩りや見栄えは悪く感じるかもしれないが、強い想いの籠ったそれらの料理はどれも非常にうまそうに見える。


 ミリアが配膳を終えると、早速とばかりにミナが料理を口に入れる。そして目を見開いてミリアを見つめた。


「おいしい! ミリア、このお魚を焼いたやつ、すっごくおいしいよ!」


 どうやらミリアの作った魚料理はミナの口に合ったようだ。ミリアはその言葉に喜びを示した後、ミナの作った料理を口にして笑顔を見せる。


「ふわあ、おいしい! このスープ、あったかくてやさしーあじがするね!」


「でしょ!? それね、ママの得意りょうりなの!」


 そんな感じで二人はわいわいと感想を言い合いながらおいしそうに昼食を食べ始めた。われたちはそれを聞きつつ二人の作った料理を一緒に味わう。ふむ、うまい。


 どうやら工程は少ないものの、その分シンプルで素材の味を味わいやすい家庭料理を教えられたようだ。そこに少しだけ込められたおしゃれというのだろうか、野菜の形やソースのかけ方等に工夫が散りばめられており、誕生日の特別感を出そうとした二人の努力が見られる。


 われはじっくりと二人の料理を味わいつつ、時々話しかけられた質問に返事を返す。そうしてゆっくりとした時間が流れ、昼食会はのどかに進んでいった。



 今日のメンバーがこの場に居るものだけというのには、一応意味がある。まあ単なる子供たちのわがままなのだが。どうやら大人のいない所で少人数で祝いたいと思ったらしい。そこで保護者役としてわれが、ミリアの選んだ家族枠としてヴィムとルーアが、そしてミナの招待で動物たちの代表として狐がやってきたのだ。


 なんでも狐のやつはミナのお気に入りらしい。ふさふさの毛並みと落ち着いたお姉様といった雰囲気がミナの心を射抜いたようだ。狐のやつも子供たち全員を大事にしているが、ミナに甘えられるようになってからは拠点以外でもこっそりと一緒に遊んだり話したりする時間を設けていたようだ。


 われはそんな初耳なことをミナたちから聞かされていた。どうにも狐のやつが過大評価されている気がするが、子供の前でいい所を見せたい気持ちもわかるので突っ込まないでおくことにした。まあ後で狐のやつをこっそりとからかうことにしよう。


 ミナいわく、狐はいつも冷静で落ち着いていてクールらしい。それでいて周りのものの面倒を見る優しさがあり、自分の目指す理想の女性像そのものなのだそうだ。ミナの母はどちらかというとほんわりとした感じだから、あまり接したことのないタイプに理想を抱いているのかもしれんな。


 われの知っている狐はいつも後ろで体力を温存しつつ漁夫の利を狙う狡猾なやつで、一方最終的にへばった動物たちを引きずって連れて帰る面倒見のよいやつ、という印象なのだが。視点が違えばここまで印象が変わるものなのだな。


 われがうむうむと頷いていると、ミナが狐をなでなでしながら狐の自慢話を続けた。それを最初は笑顔でおとなしく聞いていたミリアだが、次第に我慢できなくなったのかミナに対抗し始めた。つまり、われを撫でながらわれの話を始めたのだ。


 われがどれだけ偉大で、懐が深く、知性に優れ、泰然としているかを、ミリアは語り始めた。うむ、ミリアよ。われの本質を見抜いている点については手放しで褒めたいのだが、若干話が誇張されてはいないだろうか。さすがにまだわれの実力では木を割り川を蒸発させることはできんぞ。


 そんな感じでミリアとミナによる自慢対決をむずむずした顔で聞いていたわれたちだったが、最終的に二人はどっちもすごいということで決着が着いた。ふむ、仲良きことは美しきかな、というやつだな。競うことは重要だが、関係が拗れては元も子もないからな。


 そういえばミナよ。最初はわれを神だなんだと崇めていてくれたのに、今はわれよりも狐の方を尊敬しているのだろうか。崇められることに執着はないが、なにかこう、少し悲しいというか悔しいという気がするな。よし、これからも努力を怠らないようにしよう。そうしよう。


 われはそう気持ちを改めるのであった。



 昼食を食べ終え話に花を咲かせていたわれたちは、ここでプレゼントタイムへと移った。と言ってもあまり仰々しいものではない。狐が動物たちを代表して、森の幸の詰め合わせを少し大きめの木箱に入れて渡し、ヴィムが拠点を代表して新たなブラシやハンカチ、それから観賞に良さげな花等を入れた箱を渡しただけだ。


 そして最後にミリアが自分の描いたミナの家族の絵と、糸を編んで作った飾り紐を手渡した。飾り紐はどうやら色違いのものを自分用にも作ったらしく、一緒に腕に付けて見せ合っている。


「えへへ。ママからおそわって作ってみたんだ。これならつけはずしも簡単だし、じゃまにならないでしょ?」


 ミリアがそう言うと、ミナは腕に巻いた飾り紐をいろんな方向から眺めつつ笑顔で応えた。


「うん! これ、すっごくきれいでかわいい! 大事にするね!」


 ミナの言葉にミリアが笑顔で頷いた。そして言葉を付け加える。


「あのね、もしこのひもが切れちゃっても、それはわるいことじゃないんだって。それはせいちょーのあかしだから、切れたらまたあたらしーのを作って、まえのはとっておくんだって」


 ミリアの言葉にミナは真面目そうに頷く。そして再びミリアに笑いかけた。


「それじゃ、これが切れちゃったら、こんどはミナがミリアの分も作ってあげるね!」


「うん!」


 二人は笑顔で未来の予定を立てるのであった。



 それからしばらくの間、二人は料理や服、最近の趣味からサクヤのかわいさ、動物たちのもふり方まで、様々なことを楽し気に話し合った。


 われたちはそれに耳を傾け、時に返事を返し、時に会話に割り込み、平和な時間を過ごすのであった。


 うむ。こういったイベントは配下や隣人の成長を感じられるのいい機会なので、これからも参加することにするか。


 そう思うわれだった。



*****



 今日はわたしの誕生日だった。この森に来る前は誕生日なんてちゃんとは決まってなくって、なんとなく夏になったらママたちからおめでとうって言われて、夜ご飯が一品増えるくらいだった。だけど、この森に来てからはとっても嬉しい日なんだって思うようになったの。


 たくさんおいしいものが食べられて、特別なプレゼントをもらえて、みんなからおめでとうって祝ってもらえるのが、とっても嬉しい。


 今年は自分で料理をしてみて、親友で妹みたいなミリアと自分の作った料理の食べさせっこをして、大好きなタマさまや狐さんたちといっぱいお喋りして、ちょっと口喧嘩しちゃったけどすぐに仲直りできて、それでそれで、とっても素敵なプレゼントをもらえた。



 今でも時々この森に来る前のことは思い出すし、仲の良かった人たちに会いたいって思うこともあるけど、最初の頃に比べたら少しずつ大丈夫になってきた。なぜかというと、今日みたいな日は特に、ここに来れたのはすっごく幸せなことだったんだって思うから。


 あの日、とっても辛くて大変だったあの日に、タマさまに会えてなかったら今の生活はなかったのかな。そう思うととっても胸が苦しくなる。


 ここで出会った人たちはみんな優しくていい人。食べ物はおいしいものがたくさんある。パパとママと過ごす時間も増えたし、笑顔が増えた。それになにより猫のタマさまと親友兼妹のミリアと出会えた。


 今ではもう、ミリアや動物さんたちのいない生活なんて考えられない。パパたちは猫人族はあちこちを旅する一族だって言ってたけど、私はずっとここにいたいって思ってる。そのために最悪の場合一人でも生活できるように、パパから森での生き方を、ママから家事を教えてもらって必死に覚えているのは、まだパパたちには内緒。


 猫人族の性としていつかはここを離れたくなる日が来るかもしれないし、パパたちから言われて旅立つことになるのかもしれない。だけど、それは少なくとも今じゃない。


 私はここが好き。大好きだ。誰に何と言われようと、私はここから離れたくない。


 だから今はみんなとたくさん遊んで、たくさん学んで、たくさん笑って、たくさん思い出を作るの。前みたいに、誰かに追い出されるなんてことがないように、力も付ける。


 それで、すっごい幸せな日々を過ごしてやるんだ。


 だから、八歳になったこれからも、また一生懸命がんばろう。



 ひとまずの目標は、ミリアに「お姉ちゃん」って言わせることかな。


 弟のサクヤが産まれてきちんとしたお姉ちゃんになったミリアが実はとっても羨ましいけど、いつか血のつながりなんて関係なく、ミリアが年上の私のことを頼れるお姉ちゃんって呼びたくなるくらい、すっごくなってやるんだから。


 私、がんばるから。ちゃんと見ててよね!


昨日は更新できずすみません。やる気の問題ではなく私用の都合上時間がとれなかっただけなので、これからもがんばっていきます。

今回はミナに焦点が当たりましたね。最後の方のミリアにお姉ちゃんと呼ばせるっていうのが、個人的に一番書きたかったポイントです(笑)

誕生日のケーキとろうそくの話はでたらめなので信用しないでくださいね。実際は神様のアルテミスがあーだこーだらしいです。気になった方は調べてみてください。


お読みいただきありがとうございました。

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