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八話

 気付けば、残っているのは俺一人になっていた。


放心状態になるほど痺れたぜ・・・魂を刺激される瞬間って奴をよ・・・神秘を味わったっていうんだろーなあーいうのをよ。


気の所為か、普段でも発動する【悪神の恩寵】が発動している際腕に浮き出ている刻印の様な線が何かのたうち回ってる気がするが・・・何だろうな?


というか、発動してたのか?ダンジョン関係の奴は今日持ってきてなかった筈だが・・・なんかバッグかなんかに入ってたのに発動したんだろうか?


コイツの発動条件は何時もながら分からん事ばかりだ。



「おーい!東ー!」


「ん?おお、春樹(はるき)か」


染めた金髪と人懐っこい顔で手を振りながら話しかけて来た野郎は、篠原しのはら 春樹はるき俺がまだ養子として引き取られて間もなかった頃、隣に住んでいた幼馴染だ。


それから何年か一緒に遊んだりしていた友達だったんだが、ある日突然引っ越していってしまってそれきりだった。


偶々大学で俺を見かけた春樹が俺に声を掛け、こうしてまた一緒に学校に通っている。


最初は全く分からなかったが、何故か此奴は一発で俺だと分かったのが軽いホラーだが、知り合いが全くいない所まで一人暮らしの為に来ていた俺にとって知り合いがいるというのは有難い事で、安心したのもまた事実。


という訳で大学では・・・。



「ほい、これあの教授の授業のノート」


「お、じゃあこっちもあの眼鏡のノート」



と、こうして知り合いがいる事の利点を活用している。



「いやー!毎度お前のノートは助かるぜ!要点もキチっと纏められてるから見やすいし、テストに出そうな所はマークしてるし解説もある!!もうこれお前のノート教科書だろ!」


「おう、お前も代返任せてすまんな、俺魔法使えねーからさ、他の奴みたいにズル出来んのよ」


「まー偽装魔法使って代返してる奴も中々いねーけどな、単位取れても授業理解できてる奴なんぞそういねーし、出来る奴はそもそも代返とかしねーし」


「俺は其処らへんは効率良くしてーの、ダンジョンに潜ってるって言ったろ?」


「げー。バイトにしてもそっちは効率よくねーだろ。割の良いバイトなら飲み屋のとこ知ってっから冒険者とか止めた方がいいって!死ぬ可能性とかあっし!!」


「うっせ、出来高で人と関わらなくて良くて休みも自由。勤務時間も自由の神職業だ、お前もこの時代自衛の力ぐらい付けてもバチはあたらんぞ?」


「俺、苦労したくねーの!人と話すの別に苦じゃねーし!お前と違って」


「へいへい」



今日何処で飯を食いに行く?と会話をしながら教室を出て廊下を歩いていく。


すると、人だかりができているのを発見して足の歩みが止まった。



「どうしたんだ?」


「え?お前知らねーの?夢さんと桜さんだぞ?同期の中で断トツの美人を!?奇跡を!?お前ホントに青春真っ盛りの大学生?」


「生憎知らんが・・・何だろな、どっかでは聞いたことが・・・」


「おーい!」


その時、此方に向かって声が聞こえたので思考を中断して声の方向を向くと、肩まである明るいピンク色の髪をした背の小さいが一部がデカい、いや正確に言うと二部といえばいいのだろうか?そう、ロリ巨乳を体現した奇跡の存在がそこにいた。


ニパーッとした笑顔で手を振る彼女の目線の先は―――これまた気持ち悪い笑顔(主観)で手を振っている隣の野郎に注がれていた。



「さくr「神の怒りを今ここに!」っぶ!!」



手を振り上げて全力で横に振り抜く。それだけの動作、だが何よりも速い、そう疾風、いや。稲妻のごとく。


いや、おれじゃねぇのかよ、ほんの少し期待しちまったじゃねぇか、つうかテメェはなんで知り合ってんだよ。

腕には黒く浮き上がった線が出ているのは感情の発露か。


心なしか怒り狂っている様に俺の腕を這っている様に感じる、俺はここまで怒っていたのだろうか?


まぁそれはともかく目の前の裏切り者を処罰せよと振り抜いた後に残ったのはふらふらとしているクソ野郎の姿。



「ぐおおぉ、何しやがるボケェ!」


「それはこっちの台詞だ!どんな手を使いやがった!!なろうか!なろう(動詞)したんだな!この俺を置いて!俺以外の奴と!!」


「何を言ってるんだお前!?」


「あはは、仲良いんだね?」



体から力が抜けてるんだけど、ちょっとなにこれ?お前どんだけ力込めたの?という声が聞こえるがガン無視で取り敢えず置いてけぼりにしてしまったロリ巨乳さんに話しかける。



「初めまして、東 颯です。よろしく」


「《《会う》》のは初めてだね、市川 桜(いちかわ さくら)です。これからもよろしくね?」


「さくら?・・・会うのは・・・?・・・あ!アンタもしや――」


「おっと!ってアイタタ・・・そこから先は俺が改めて説明しよう!」


「・・・お前、俺のノート勝手に貸してたろ!それもこの前のテスト期間の時に!!どーりで名前を聞いた事は・・・っつーか見た事はあると!」


どおりで帰って来たノートの端っこにありがと!by桜&夢!って書いてあった訳だ!春樹がテストで追い詰められすぎて頭おかしくなったと思って速攻で消したけど。


妙に丸文字だったからやけに手が込んでてきっしょって思ってたわ。


「俺が説明するっていったのに・・・勘が鋭いな、流石!いやー悪い悪い!彼女、大学も休みがちらしくてさ、お前のノート教室に忘れた時に見られちまって是非貸して欲しいって・・・ノートのコピーまでだから許せよ」


「一言ぐらい言っとけアホ」


「だーからわりぃーって」


「ほんとーっに助かったよ!私と後・・・」


「ちょっと!桜!まってって!」


「あ!夢ちゃん!!」



人ごみをかき分けてきた比較的身長が低い市川さんと違い、俺ら男子集には劣るもののそこそこに背はあるせいで遅れて来た女性は緩くカールをかけたポニーテールではない茶髪の髪を腰まで下げた長髪の麗人と言えばいいのだろうか。


可愛らしさよりの市川さんと綺麗系の夢ちゃんさんなる人らしくすっきりとした目鼻立ちに凛とした佇まいの大和撫子の様な印象を受ける美人さんがいた。


成程、奇跡。


俺はうん、と頷くとこれまた豊かな山の恵みを二つ程視界にいれ、またうんと頷いた。


成程、奇跡。



「紹介するね!私の友達で相棒の皆原 夢ちゃんだよ!今日はね、テストのお礼を言いに来たんだ!!」


「ふぅ・・・紹介も何も貴方《《は》》今日東君とはあったばかりでしょうに・・・さて《《初めまして》》皆原 夢です。よろしくね?」


「あーっと!邪魔になるとアレだし、丁度昼だし飯食いながら話さないか?テスト後の授業だからあんま今日授業ないし」


「はいはーい!さんせー!!」


「そうゆう事なら、喜んで」


「そだな、どっか適当なとこ行くか」



そういう訳で俺達は周りの視線を浴びながら学校近くの比較的手ごろなファミレスに移動し、飯を食いながら今回の事について改めて話をする事になった。



「んじゃあ、まずはテストお疲れ様でした!あーん、ど!赤点なしおめでとーー!!助かったよー!!」


「ええ、対策問題って書いてあった殆どが出るなんてちょっと吃驚したわ、私」


「そーそー!!やっぱ勘がいいよな!お前!」


「ええ!?あんなの勘じゃないよー!!東君のノート凄い見やすいし分かりやすいし見た時はわたし、てんさいかー!って思ったもん」


「いやいや、いちかわさん。そりゃない、だってこいつバカだもん」


「・・・ちょっと、幾らなんでもそれは嫉妬が見苦しいわよ?篠原君」


「・・・今回に限り誠に癪だが春樹(コイツ)が正しいんだよなぁ・・・」



そういうと二人は揃って疑問の言葉を口にした。


既にファミレスでドリンクバーを頼んだ後、思い思いの飲み物を手元に持ってきた状態で始まったこの集まり、どうやら俺のノートで辛いテストを乗り切った祝いの場みたいだが、話の流れで俺が天才の扱いを受けるのはどうにも納得がいかなかったので声をあげた。


というか天才だったならこんな大学には来ていない、もっといい大学に行っている。



「え!?で、でもあんなに・・・」


「そ、そうよ!幾ら勘って言ってもあんなに全部の教科で問題が当たる訳ないわ!」


「あーー・・・なんつーっかなー。分かってるんじゃなくて授業を受けると知ってたって感覚になる時があって・・・それで、こういう問題もテストででるなって思った所がでるんだ、ま。勘であってると思う。つーかそーじゃなきゃ俺も分からんし・・・ノートの纏めについては俺自身が出来が良くないからな、俺にも分かる様にまとめると自然とそうなるだけだ」


「わーいつ聞いても俺は天才です発言にしか聞こえないわーこういうとこバカだよなー」


「お前ここの会計奢りな」



ひっでぇ!という声を無視して店員に昼飯としてビーフシチューオムライスを注文する。


勿論その後伝票は春樹の近くにワザと置く。


言い訳は聞かん、ノートの罰だとでも思え、後自分で自分をバカというのはいいが他人に言われるとムカつく。



「それでも!助かったのは事実だし、お礼を言わせて!ありがと!こういっちゃなんだけど篠原君がノートを忘れてくれてかなり助かったよ!・・・あ!店員さーん私この季節限定パスタ!」


「あ、私もおな・・・や、やっぱりビーフシチューオムライスでおねがいしまひゅ・・・っううん!・・・私からもお礼を。今回はちょっと事情があってあの眼鏡のテスト、落としたら不味かったから」



あ、噛んだ、かわいい。



「へぇ~けど、二人共そんなにヤバいの?いっつも赤点で補修とか?そんな噂聞いたこと無いしお二人と一緒なら、クラスの馬鹿どもが揃って全教科赤点にして補修を受けにいく筈だから違うと思うんだけど・・・?」


「な、なんなのその推測は・・・?」


「えーとね、私達・・・冒険者やってるんだ」


「え?」


「は?」



俺と春樹は二人して顔を見合わせそして・・・



「「えええぇぇぇ」」



そんな間の抜けた声をだした。


何故そんな声を出したか、答えは単純で俺は冒険者、それもレベルが上がらないハードモード。


必然的に俺が愚痴る冒険者の話は聞いててスカッとしないドロドロとした苦労話ばかりである。


ソレを聞かされているのが春樹であり、要するに・・・



((に、似合わねぇ・・・))



と、そんなのが俺達の感想であった。


するとそんな俺達の微妙なリアクションを、話を信じていないものだと思った市川さんが、頬を膨らませながら鞄を漁り、ある雑誌を取り出した。



「むっー!信じてないでしょ!二人共!一応期待の新人として雑誌にも載ったんだからね!ホラ!」



雑誌TP(トリプルキャノン)『冒険スクープ!』



「おお!すっげぇ!」


「すごい・・・が、これいつも持ち歩いているのか?」


「えへへ、自慢したくって。友達にしか見せてないけど・・・」


「きゃあああああ!ちょっと!サク!アンタまだそれ持ち歩いてたの!いい加減よしなさいってば!コラ!」


「あ、ちょ、俺まだ見てなかったのに!」


春樹が雑誌を手に取り読んでいる最中に奪われたので俺が拝見する事は叶わず。


皆原さんが取り上げてしまったその雑誌にちらりと見えたその写真は、何処かで見たような眼が隠れる程前髪を伸ばした女の子が見えたが、何せ一瞬の事だったので良く分からなかった、それに皆原さんが手で押さえていたのがそのページだったので、良く見せてもらおうと頼むと・・・顔を真っ赤にしながらダメと言われてしまった。(かわいい)(これでポニーテールならば)



「ごほん!これでまぁ私達が冒険者だと信じた所で!」


「おれまだみてn・・・」


「し!ん!じ!た!ところで!」


「・・・はい」


「冒険者で活動してて中々テスト対策が出来なくて・・・でもでもすっごくノートのお陰で助かったのでお礼やお疲れ様会や友達になれた記念や諸々含めて!


・・・ダンジョンに!みんなで!お花見に!行きませんか!!」




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