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ラテリアちゃんはチュートリアルちゅう?  作者: 篠原 篠
ドールマスター
93/119

18

 ニタリとした不気味な笑顔のまま停止したトゥルーデがそこにいた。

 大樹を背に、ただ浮いている。


 動く気配はない。

 プレイヤー達もまた、動けていない。

 もうだいぶ動いてない気がする。

 ジリジリとした時間がより長く感じる。


 痺れを切らす者はいない。

 小梅もテトもトゥルーデの変化に慎重だ。


「いいタイミングだったかな」


 そこにイトナが合流する。

 使い魔の処理を終えて、ニアのいる隣の枝に立つと、トゥルーデから目を離さずニアが口を開いた。


「どう思う?」

「デスタイラントの時を思い出すよ」


 前の七大クエストボスであるデスタイラントのHPがイエローになった時も、大きな変化を見せた。

 全身が骨で構成されているデスタイラント。イエローになった途端、その骨全てが分裂して、それらが攻撃を仕掛けてきた。

 全350の骨が宙に舞い、襲いかかってくるのはなかなか壮絶だった。


 それがLv.130のデスタイラント。Lv.150ならそれを上回ってもおかしくはないが……。


 ここにいる皆がそれを一度は経験し、知っている。故に手を出しづらいのだろう。

 下手に出ればやられる。

 思えばニアの「どう思う?」はどうすればいいか聞いたのかもしれない。


「……やるしかないよね」


 そう、やるしかないのだ。

 トゥルーデがどのように変化したかはまだ定かでは無いが、相手が動こうとしない以上、こちらから仕掛けるしかない。

 指示はニアに任せる。

 一応、サダルメリクがトゥルーデの攻略をしてる程だからね。


「……小梅が攻撃に入って。イトナくんはそのサポート。いける?」


 ニアは自信なく言った。

 全員で突っ込んで全滅といった最悪の事態を避けるために、最小限の人数で最も安全な方法で攻めて、様子を見るつもりだ。

 うん。悪くない。


「はい!」

「うん」


 未知との戦い。

 この指示がベストなのかもしれないし、全員で攻めた方がうまく行くかもしれない。

 それは誰もわからない。

 ニアの指示が悪かった場合に、どういい方向に持っていけるかが重要になる。


 トゥルーデのレベルはこのパーティの平均レベルよりも一回りも二回りも高い。

 だが、先の戦いぶりを見れば、それ程無謀な差ではないようにも思える。


 動かなければ始まらない。


 小梅は力強く飛び上がった。

 指示通りに貼り付けたような笑みを浮かべるトゥルーデへ邁進する。

 フェイントなしの一直線、ひとっ飛び。

 イトナはその背中にぴったりとくっつき、追随する。


 すると、トゥルーデは手をかざした。

 ゆらりと、ゆっくりと。

 三本の爪を力無く伸ばす。


 今までになかったモーション。

 もしかして、魔法?


 警戒を強めながらも、小梅の接近速度は変わらない。

 なにがあろうと、一発攻撃を入れるつもりだ。

 問題ない。フォローがイトナの仕事だ。


 トゥルーデの手が光る。

 淡い白い光。

 それがイトナ達を照らした。


「たあああああぁぁぁ!」


 それと同時に小梅の拳が入る。

 拳がトゥルーデのにやけた顔を歪める。

 HPも削れた。


 何事もなく、攻撃に成功。

 ならイトナも追撃を……と思うも、状況の確認を優先する。


 いくらなんでも何も起こってないなんてことはないはず。

 HPを確認。小梅、イトナ共に変わりない。

 状態異常は……。

 ついている。


「なにか状態異常をもらってる!」


 見ればHPバーの上に黒と白の矢印が回るアイコンがあった。

 見たことのない状態アイコン。

 しかし、身体のだるさや、ステータスの変化はない。


「これは?」

「大丈夫。様子を見よう。小梅、一旦引いて」


 落ち着いて小梅に指示する。

 そこで、唐突にトゥルーデが反撃を仕掛けてきた。

 爪による斬撃ではない。

 今回は魔女に相応しく、魔法攻撃で。


 トゥルーデの周りに幾つかの渦を巻く黒い靄が発生する。

 黒雲のようなそれは、バチバチと音を立てながら、イトナに殺意を向けた。


「僕が相殺する。小梅は着地に意識して」

「了解です!」


 ゴッと低い音が鳴った。

 その音と共に、光がイトナに向かってくる。

 黒雷。

 雷速で伸びるイカヅチは全てで五本。

 小梅のゼンマイを掴み、落下速度を高めてトリガーを絞る。


 バチンッと弾けた音が鳴った。

 雷の性質か、一つ撃っただけで五本全てが銃弾に収束したのだ。

 イトナの放った銃弾は消えたが、結果的に攻撃を防ぐことに成功した。


 攻撃が間に合えばイトナとの相性は悪くない。

 だが、収束したという事はこの攻撃はある程度の追尾があるという事だ。

 となれば皆んなとは相性が最悪か。

 避けるのは難しい。

 かといって、剣などの得物で相殺しようとすれば、感電してダメージを負う可能性は高い。

 防ぎようがないってことだ。

 このパーティ構成では厄介だ。


 もうすぐ着地。

 たかが着地だが、このダンジョンで着地を失敗すれば、命にかかわる。


 小梅とほぼ同時に着地する。

 丁寧の着地だった。

 小梅の重さで少し揺れるが、問題ない。

 膝を降り着地の衝撃を吸収する。


 着地の成功を確信して、

 そして、

 着地に失敗した。


 着地した瞬間、世界が大きく傾いた。


「ん!?」

「へ?」


 比喩ではない。

 文字通り全てが斜め。

 暗闇の底から伸びる大樹が、斜めから伸びている。ように見える。


 着地した枝が角度の強い斜面になり、ずれ落ちる。

 咄嗟に銃からバゼラートに装備を変え、それを枝に突き刺して落下を防ぐ。


 なんだ? これは?


「小梅!」


 遠くで聞こえたラヴィの叫び声に、小梅の姿を探す。

 すぐ側に着地した筈の小梅は、上へ落ちていた(・・・・・・・)


 自ら飛び上がったようには見えない。

 小梅は明らかに重力によって、上へ落下している。


「なんなんだ!」


 周りを見れば皆、大きく傾いた枝に平然と立っている。

 到底立ってはいられない斜面の上に。

 イトナの目にはそう映った。


 この現象の理由にそう候補はない。

 これはほぼ間違いなく、


「異常状態! 重力の方向が変わる!」

「なんだそれ!?」


 まだ確かな詳細な事はわからない。

 だが、現状を見る限り、そうである可能性が高い。

 何が起こってもおかしくない仮想世界では、今起こっていることを素直に受け入れることが重要だ。

 受け入れて、分析する。


 この状態異常を貰ったのはトゥルーデの手が光った時だ。

 そして、この状態になったのは接近していたイトナと小梅だけ。

 つまり、トゥルーデを中心とした一定範囲が当たり判定になる。

 回避は……難しい。と言うか無理だな。

 そもそもあんなエフェクトだけでは反応するにも、アイコンを確認するまで気づけなかった。

 イエローゲージからは、この状態で戦えってことだ。


 しかし、状態異常を貰った直後はちゃんと真下に重力を感じていた。

 なら、重力変動には何かしらのフラグがある。

 状態異常を貰ってから先の行動はそう多くはない。

 攻撃して着地。

 攻撃した直後は下に向かって落ちた。即ち……。


 足の裏を枝につける。

 すると、世界が逆さまになった。

 次に手のひらを付けてみる。

 変わらない。

 なるほどね。


『着地すると、重力の方向が変わる。常に移動を!』


 イトナの念話に返事はない。

 返事をする暇がなかったのだ。


 トゥルーデが小梅に攻撃を向けている。

 ただ落ちるだけの今の小梅は絶好の獲物だ。

 テト、風香、ラヴィはそのフォローに向かっていた。

 上へ落ちる小梅は次に足をつくまで無防備になる。


 魔女が腕を一振りすると、黒雲が生まれる。


「任せて!」


 雷雲がバチンッと鳴った所で、風香が何かを投擲した。

 手裏剣だ。

 それが小梅とトゥルーデの間に滑り込む。

 直後、カッと光ると、黒雷は手裏剣に収束された。


 理解が早い。

 風香はちゃんと先のやり取りを見ていたのだ。


 黒雷はイトナと風香で対処可能。

 いける。

 

 小梅が無事に枝に着地し、反撃体制に戻る。

 やる事はさっきと同じ。

 テトと小梅でダメージを与え、風香とラヴィでトゥルーデの攻撃をパリィする。

 常に移動していれば、重力変動はほぼ関係ない。

 攻撃パターンに黒雷が増えたが、イトナが加わった事で上手く回せるはずだ。

 イトナと風香で対処できる。


「行くぞ!」


 テトが叫び、それが合図となる。

 皆、トゥルーデを囲うようにポジションに着き一斉に跳躍。

 トゥルーデの笑った目がギョロリと辺りを見渡した。


「なにかきます!」


 風香が警戒を呼びかける。

 トゥルーデの周りに黒雲。

 想定通り。

 すかさず、イトナと風香が構えると、トゥルーデは両腕を上げた。


 すると黒雷がトゥルーデの爪に落ちた。


「なんだあれ!」


 避雷針の代わりとなった爪が、全ての黒雷を集めている。

 そして、黒雷が爪に纏い、帯電した。


 それを見てトゥルーデがなにをしたいかは全員が理解した。

 あの帯電した爪と刃を合わせればそれだけでダメージを受ける事になる。

 これは……。


「おいおいまずいぞ!」

「変に意識しても仕方ありません! あれでゲームオーバーにならない事を祈ってパリィを……!」


 跳躍した皆は止まる事はできない。

 もう、止まれない。やるしかないのだ。


「「っ!」」


 バチンッと音と光が跳ねた。

 斬撃を受け流す。

 だが、刃が、鎖が爪に触れた瞬間、二人の動きが鈍った。

 やはりダメージを受ける事に意識してしまったか、それとも、感電の効果か。

 二人のパリィは不完全になり、脇腹を抉られる。


「っっぎ……! くそっ! マズイぞこれ!」


 二人は大ダメージを受けていた。

 脇腹を抑えるラヴィのHPはレッドラインに近い。

 それに加えて、感電の異常状態に犯されている。

 動きが鈍くなる異常状態だ。

 そして重力変動。

 常に動き回らなければならない上に感電。

 非常に辛い状態だ。


 風香もほぼ変わりない。

 ラヴィより傷は浅いようだったが、HPは残り三割か。


 マズイ。

 形成は逆転した。

 一発でこれでは立て直しも厳しいか。


 ニアは顔を引きつりながら思考を巡らせている。

 テトと小梅は二人のフォローに躊躇している。

 風香とラヴィは逃げ回るしかない。


 HPイエローのトゥルーデは、このパーティでは不利すぎる。

 HPがグリーンの時は有利でも、イエローからは全くの別物。

 イトナのような中距離以上の攻撃手段がないと厳しい。

 しかし、ないものを考えても仕方ない。

 この状況の打開をするならば……。


『ニア、撤退を考えた方がいい』

『ま、待って!』


 ニアが待ったをかける。

 まだ諦めたくないのか。

 しかし、考えがないなら粘ったとしても結果は変わらないだろう。犠牲者が出るだけだ。

 これは一方的すぎる。


『まだ、私、なにもしてないのよ』


 悔しそうに言った。

 ニアは指示はしても、戦闘に参加することが叶っていない。

 奥の手として温存していたが、この一方的をニアがカバーできるかというと、難しい。


『……これで全滅したら申し訳ないんだけど、一つ、案がある』

『案?』

『このメンバーなら、残り、削りきれるんじゃないかな』


 トゥルーデの残りHPは半分。

 それを削りきる。

 あと一撃。

 または一連の連携で仕留めると言ったニュアンスに聞こえるが、それを実現させるには……。


『削りきれなかったら全滅……ううん。削りきれなかったら私が守る。全員の難易度5スキルをぶつければ……』


 つまり、力技だ。

 とてもシンプルで、ゲームではよく使う攻略手法。

 続けてもやられる。

 なら、やられる前にやってやろうって考えだ。

 考えることも少ない。

 一番強いスキルをぶっ放せば良いだけなのだから。


 でも仕留めきれなかったら?

 難易度5のスキルは強大だが、リスクが大きい。

 例を挙げればテトの《極光剣》だ。

 発動するまでの30秒間なにもできなくなる。

 ゲームでの、戦闘での1秒、コンマ1秒は生死を分ける。

 それが30秒だ。

 テトの極光剣だけではない。

 難易度5スキルのスキルはイトナの知る限り、必ずデメリットがついてくる。

 仕留めきれなかった場合、その後の一時の間、デメリットを全員が背負う事になる。

 それは間違いなく全滅に繋がるだろう。


 無謀とまでは言わないが、無茶だ。


『いいじゃねぇか! それ乗った!』


 イトナがその案を否定する前に、テトが声を上げる。


『それしか、手はありませんね』

『やってやります!』


 それに続くサダルメリクメンバーの皆も乗り気だ。

 浮かない顔をしているのはイトナだけ。


 皆、熱くなりすぎている。ニアは焦りか。

 少し安直な作戦だ。

 今は一旦引いて、戦い方を考えるという安全な選択肢があるのに。

 無茶して今やるべき事なのだろうか。

 チャンスは明日だって、来週だってあるのに。

 しかし、こうなってはイトナ一人で反対したところで止まらない。


 仕方ない。

 考えを切り替える。

 イトナのやれる事は難易度5スキルで生まれた隙をフォローする事。

 

 やる事が決まれば手順の組み立て。

 せーので発動するより、順々で発動させていった方が、時間が稼げる。

 なによりテトの極光剣のタメ時間。これを稼げなければ勝ちはない。


 あとは攻撃の入り口。

 最初の攻撃を確実に当て、怯ませるなり吹っ飛ばすなりして、トゥルーデにガードや回避をさせない必要がある。


 最初。

 最初が肝心だ。


 ならばとイトナが前に出る。

 残りHPが少ないラヴィに襲いかかっていたトゥルーデたが、前に出るイトナに気づくと、嬉しそうにイトナにターゲットを移してくれた。


「ガアァァ!」


 ラヴィとの間に割り込み、皆から離れるように跳躍して引き付ける。

 トゥルーデは帯電した爪を切る見せびらかすようにして、イトナに向かって構え、イトナの後を追う。


「すまん! 助かった!」

『最初は風香のスキルから行こうと思うけど、いける?』

『大丈夫です!』


 その時、風香は既に距離をとった位置でトゥルーデの背後を取っていた。


 風香が光の渦に囲まれる。

 難易度5スキルの発動。

 トゥルーデはそれを一瞥するも、イトナからターゲットを外さない。


 好都合。

 前の戦いでイトナの事を評価してくれたのか。

 なんにしても、邪魔が入らないのは願ったり叶ったりだ。


『テト!』

『わかってる!』


 テトも極光剣の準備に入る。

 重力変動により、立っていられない状況で、スキルを発動させた。

 頭上にある枝に剣を突き刺して、ぶら下がった状態で。

 不恰好だが、これで重力変動は起こらない。

 

 二つの難易度5スキルの輝きをトゥルーデは気にもしない。

 ほっといてもどうとでもなると思っているかのように、イトナに一途だ。


『ニア。ミスったらフォローよろしく』

『任せて!』


 追いついた。トゥルーデが帯電した量腕の爪を振り下ろしてくる。

 それに、振り返り、イトナも銃を向けた。


 スキルの光が短く発光。

 銃口から放たれたから銃弾は、振り下ろされる爪に当たる。

 そして、振り下ろす半ばのトゥルーデの爪はイトナの頭上でクロスした。


「ぎ!?」


 銃弾により押し出さたのだ。

 銃弾でパリィもどき。なんてこともできる。ゲームの中ならね。

 続けて、すかさずトゥルーデの眉間に銃を押し付ける。


「《フェイタルストライク》」

「ぐぎっ!?」


 強力な一撃をお見舞いする。

 トゥルーデの巨大な顔が大きく仰け反った。


 今だ。


『風香!』


 風香は弓を構えていた。

 風香のクラスに似つかわしくない武器。

 それはスキルによって生成されたものか、

 姿勢良く構えられた凛とした姿は、様になっていた。


「《諸刃ノ燕雀》!」


 射られたのは矢ではない。

 普段風香が武器としている見えないほど薄く研ぎ澄まされた刃。

 それがスキルの輝きを纏い、鳥のような形をして、トゥルーデに迫る。


「ッッッ!?」


 それがトゥルーデの後頭部に直撃し、貫通。

 口から刃が通過する。

 それに詰まったような悲鳴をあげる。


 HPはそれ程減っていない。

 でも、風香のスキル《諸刃の燕雀》はここからが真骨頂である。

 貫通した刃は燕返しをし、再びトゥルーデを斬り裂く。


 斬り裂き。

 燕返し。

 斬り裂き。

 燕返し。


 それを繰り返す度に速度が乗っていく。

 次第には刃の目視は難しくなり、いつしか鎌鼬のように、突然トゥルーデに傷が刻まれるような現象が生まれる。


「がっ……ぎ……?」


 わけもわからなくガリガリとHPが削れていくトゥルーデの顔から焦りが見えた。

 ニタリと貼りついたような笑みは変わらない。

 でも、その笑みの中に、怯えのようなものがあるように感じた。


 死に恐怖している?

 防ぎようのない斬撃と、失っていくHPを前に危機を感じている?

 もしかして罠?

 いや、そうは見えない。


 だとすれば、

 この勝負、いけるかもしれない。


 そろそろ風香の武器が尽きる。

 《諸刃の燕雀》の発動期間は武器の耐久がなくなるまで。

 発動すれば武器が壊れるまで飛び続けるため、これから先は風香は戦力に数えられなくなる。


『次、小梅!』

『承知です!』


 小梅は嬉しそうに手を挙げて返事をする。

 連携の入り口は成功したが、小梅のスキルには少し不安がある。

 派手なエフェクトが気に入り、少し前まで小梅は難易度5スキルを乱用していた。

 弱いモンスターにもバンバン使っていたのをイトナは知っている。

 そして、イトナの知る限りではそのうちの半分は外している。

 命中不安定なのだ。


『小梅、4つ《パージ》して《ベルセルクモーター》を1回使っておけ。あたしが動きを封じるからゼロ距離でぶっ放せ。いいか、ゼロ距離だ。それならはずさねぇ!』


 ラヴィが小梅に細かく指示を出す。

 《ベルセルクモーター》でステータスを底上げしてからの難易度5スキルで、今出せる小梅の最大ダメージ。

 それをゼロ距離で撃てれば外すこともない。


 次に光ったのはラヴィだった。

 常にダメージを負い、怯み続けるトゥルーデの頭上で、モーニングを振り回す。

 輝きの強さは難易度5のものではない。


「おらぁ!」


 四方の大樹から鎖が伸び、ガッシリと力強くトゥルーデの手足を縛り付ける。


『あたしの難易度5は攻撃向けじゃないからな。フォローに回させてもらうぜ』


 イトナはラヴィの難易度5を見たことがない。少なくとも攻撃系ではないらしい。


 風香のスキルが消える。

 トゥルーデの残りHPは三割五分といったところか。


『行け!』


 小梅が突撃する。


「《パージ》!」


 スキル名を叫ぶ。

 4回のゼンマイが消費され、小梅の手足が切り離される。

 切り離された四肢は変形し、ウィンウィン音を立てて形を変えた。


 出来上がったのは小さな小梅。

 デフォルメがかった容姿をした小さな小梅が四体。

 それらが小梅の周りに着地する。

 失った本体の手足はガシャんと音を立てて、何事もなかったかのように再生した。


 《パージ》はサダルメリクの中でも大人気のスキル。

 ゼンマイを一つ消費し、最大四体の取り巻きを作成する。

 大人気の理由はチビ小梅が可愛いからだが、もちろんスキルとしての性能も高い。

 だが、ゼンマイ一つのコストは今のサダルメリクには難しく、普段は使用する機会は少ない。

 だが、今回はテトがいる。

 いつもはラヴィにより5回ゼンマイを巻いているが、テトがいることにより、今回は事前に8回巻けている。

 テトがいる時、小梅は最も強いのだ。


「突撃よーい!」


 小梅が手を挙げ可愛く号令を掛ける。

 チビ小梅らは一斉に腰を低くして突撃体勢に入った。


「突撃ー!」


 小梅の突撃に少し遅れて、チビ小梅らもそれを追う。


 その道中で小梅はラヴィの指示通り《ベルセルクモーター》を発動させた。

 チビ小梅らもそれに習う。

 チビ小梅もまた、小梅と同じスキルを持つのだ。


 ほのかに小梅の顔が赤くなる。

 ベルセルクモーターにゼンマイを一つ消費し、

 そして、

 更に残りのゼンマイ全てを消費する。

 すると、小梅と、チビ小梅らの右腕が強く光り、変形を始めた。


 小梅の戦闘スタイルは肉弾戦だ。

 そんな小梅が授かった難易度5のスキルは最もクラス《メカニック》らしいスキルだろう。


 五本の指が腕の中に沈み、腕がパラソルのように展開される。

 その姿形は、近未来兵器を彷彿させるようなものだ。


 そして、小梅がトゥルーデに到達する。

 身動きのできないトゥルーデに張り付くように肉薄した。

 チビ小梅もそれに続く。

 そのまま変形した腕を押し付け、スキル名を叫んだ。


「《ファランクスΩ》!」


 途端、衝撃波が襲った。


「ぐおっ!?」


 チュドンと高い音が聞こえたと思うと、トゥルーデを中心に全員が飛ばされる。

 縛られたトゥルーデを除いて、スキルを放った小梅もチビ小梅らも例外ではない。


 小梅の右腕から放出されるビームのようなもの。その反動で小梅を後ろに飛ばしているのだ。


 この反動と威力。

 パワー重視の小梅が左腕で抑えて向きを変えないようにするのがやっと。

 これが小梅が攻撃をよく外す理由だ。


 火力だけならテトの極光剣を、もしかしたらユピテルのブリューナクをも上回るかもしれない。


「ーーーーーー!」


 全員が衝撃に煽られながら枝に掴まる。

 やっとの思いで見てみれば。一人と四体、合計五つのレーザーが一つに集まっている。

 強い光でトゥルーデを視認できない。


 圧倒的火力。

 《パージ》と《ベルセルクモーター》の重ねがけでイトナの想像を超える火力を叩き出している。

 確認はできないが、トゥルーデのHPが多く削られているのは間違いない。


「よし! これで決めちまえ小梅!」

「やあああぁぁぁぁぁ!!」


 ラヴィの縛り付けた鎖がギシギシと悲鳴をあげている。

 鎖により固定され、飛ばされずダメージを与えられてるのも大きい。


 小梅の《ファランクスΩ》による攻撃は十数秒の間続いた。

 途中、威力に耐えられず、爆発してしまうチビ小梅だったが、トゥルーデは相当のダメージを負ったに違いない。

 光が晴れる。


「ぐ……が……」


 レーザーが止み、現れたボロボロのトゥルーデの残りHPは一割と半分くらい。

 あれ程の攻撃を受けてもなお、トゥルーデは健在。


『これでも死なないのかよ!』

『HPがイエローになってから確実に耐久力が増してますね』


 七大クエストボスの名に恥じないトゥルーデの生命力を前に、皆の驚きの声を出す。

 しかし、驚きの声のなかにもまだ余裕があった。


 風香は武器を失い、

 小梅は動力を全て使い果たした。

 残り戦力は四人。

 残りの五割から三割五分ほど削った。

 残り一割と五分。

 そして、まだこちらには手札が残っている。


 勝てる。


『テト!』

『決めろ!』


「《極光剣》だあああぁぁ!!」


 動力を失い、上へ落下していく小梅と入れ替わり、テトが突撃。


 もがくトゥルーデは未だ身動きが取れない。

 まだラヴィの鎖が生きている。


 一筋の光がトゥルーデと激突する。

 テトの構えは突き。

 火力を一点に集中させ、トゥルーデの額に突き刺した。


「うおおぉぉぉ!」

「ぎいいぃぃぃ!」


 テトとトゥルーデの叫び声が交差する。

 一方的にHPを削っていく。

 ゆっくりと、確実に、トゥルーデの生命力を削れていく。


 削って、

 削って、

 削って、

 そして……。


 トゥルーデのHPが残り一割切ったことを示すレッドへと色を変える。

 もちろん、イエローからレッドになった時も、ボスモンスターの行動は変化するが、今回は違う。


 死にものぐるいの最終形態になる前に、

 厄介な変化をさせる前に、トドメを刺す。

 それが理想ではあるが。


『全員警戒!』


 動きを封じられ、テトから大ダメージを受け、とても何かできるような状態ではないが、油断はしてはいけない。


 勝ちを目の前にして、四年進むことのなかった攻略を果たすことを目の前にしても、皆の油断はない。

 そのつもりだったが。


『お、おい! なんか変……』


 途端、縛り付けていたラヴィの鎖が飛び散った。

 

「ぬ!?」


 それと同時に、テトも吹き飛ばされる。


「っな!」


 吹き飛ばされるテトが握る剣は光を失っていた。

 まだ開始しても間もない《極光剣》がキャンセルされている。

 状況を確認しようと、トゥルーデを見るとーー。


 真っ赤な目をしたトゥルーデがこっちを見ていた。


 ぞっとした。

 ただ、目の色が変わっただけだというのに、ただただ、ぞっとした。


 奴は一体何をした?

 《極光剣》の効果はまだまだあったはずだ。

 それを無効化?

 魔法以外にもスキルなら無効にするのか?


 どちらにせよ、厳しい状況には間違いない。

 力を使い果たし、こちらの戦力は半分以下。

 動けるのは。

 小梅は機能停止。

 風香とラヴィは……跳躍しながら手を力無く上げて武器がないとジェスチャーしている。

 今戦えるのは、イトナ、テト、ニア。

 ペンタグラム三人だ。


 トゥルーデの残りHPはレッドになり一割。いや、一割も残っていない。

 見ればあとほんの少しなのだ。


 全員のトゥルーデを刮目する目はゲームオーバーを覚悟したように見えた。

 でも、ここまできたら、引けない。


『テト! 挟み込む!』

『おう!』


 跳躍する。

 険しい表情を浮かべ、真っ赤な目を見開くトゥルーデめがけて。


 あと一撃だ。

 イトナに気をとらせ、テトの重い攻撃が入ればそれで終わり。


 距離を詰める途中。

 唐突に。

 トゥルーデは吠えた。


「ガギガギガガガガグガガアァァァァァァ!」


 巨大な口を目一杯あけ、叫び散らす。


「ぃぃ!?」


 鼓膜を破きそうな暴音による攻撃。

 これはイトナの想定外だった。

 音による波動は敏捷を多く積んだイトナでも回避はできない。


 ビリビリと体に響く。

 視界が霞む。

 でも大丈夫。

 ダメージはない。

 状態異常もない。

 ただ、少し怯んだだけ。


 だがこれは……。


 改めて見れば、トゥルーデは笑っていた。

 イエロー時の貼りついたような笑みじゃない。

 勝利を確信したような、そんな笑みだ。


 途端。

 殺気を感じた。

 背筋がゾッと凍るような殺気。

 それが背後からねっとりとした温風に乗って、イトナの体を通り抜けていく。


 慌てて振り返る。

 そこにはニアがいた。

 唯一重力変動の状態異常を貰っていないニアが枝に立っている。

 両手で耳を塞ぎ、片目を瞑るニア。


 さっきのトゥルーデの叫び声にやられた様子だが、殺気の正体はそれじゃない。

 殺気は更にその奥の……。


「ニア跳べ!」

「え」


 イトナの叫びにニアは慌てながらも躊躇なく跳ぶ。


 その瞬間。


 世界が破裂した。


 少なくとも、イトナの目にはそう映った。

 このモノクロ樹海を形成している大樹、その全てが無数の鋭利な棘に変わり、伸びてくる。


 殺気は後ろから。

 そう思ったのは間違いだった。

 ダンジョンそのものが攻撃となっている。

 棘の嵐が迫ってくる。


 ニアがギョッとした目で足元を見た。


「スキルで足場! 手を!」


 頭に浮かんだ単語を途切れ途切れに叫ぶ。

 ニアは正しくイトナの言葉を理解した。

 スキルによるシールドで足場を作り、それを蹴っ飛ばして、伸ばしたイトナの手を握った。


 力強く握り返すと、思いっきりニアを引き寄せる。

 足場に作ったシールドはガラスのように砕けるのが見えた。

 ニアの作ったシールドがだ。

 二人揃って顔を青くする。


「……っ! 《ハームフルアンチウォール》!」


 バックラーが光った。

 ニアが慌ててスキルを発動。

 イトナとニアを守る障壁が現れる。

 そのすぐに、ガガガガっと伸びる棘が障壁にぶつかる音が鳴り響いた。


「ニア!」

「くっ……ちょ、これキツ……!」


 イトナの肩に腕を回し、バックラーのついた腕で、障壁を抑えている。

 苦しそうな声を漏らしながら、抑える腕はプルプル震えていた。


 ニアのスキルを持ってしても防ぐのがやっと。

 この棘が凄まじいダメージを持っていることが確信できる。

 視界の端にあるパーティメンバーのHPバーを見てみれば、既に皆、灰色になっていた。


「ガアァァァァ!」


 ニアが樹海からの攻撃を防ぐ中、反対からトゥルーデが容赦無く襲いかかってくる。


「クッソ!」


 両手腕の爪が振り下ろされる。

 避ける選択肢はない。

 避ければニアがやられる。

 ニアがやられれば棘を止める障壁を失い、イトナもやられる。

 お互いがお互いを守る形だ。


「うおぉぉぉ!」

 

 バゼラートを強く握る。

 それで爪を受け止めた。


「っぐ……ぎぃ……」


 幸い帯電はない。

 でも、膂力のないイトナを押しつぶす事なんて、トゥルーデには容易い。

 腕は震え、悲鳴を上げている。

 歯をくいしばる。

 凄まじく重い爪をなんとか持ちこたえる。


「グガアアアァァ! アアァァァァ!!」


 トゥルーデはイトナの事なんて見ていない。

 巨大な口を大きく開け、イトナの先、ニア、その先にある障壁を喰らわんとばかりに、涎を垂らしながら押し迫ってくる。


「い、ギィ……!」


 自分の腕がいつもよりか細く見えた。

 今にもへし折れそうな自分の腕に焦る。


 マズい。

 まさか。

 まさかLv.150程度のトゥルーデがここまでとは。


 今回の討伐。失敗するとは思っていた。

 だが、イトナはここでゲームオーバーになるつもりは微塵もなかった。

 イトナは、こんなところで死ねない。死ぬわけにはいかない。

 今はまだ例えニアを犠牲にしてでも生き延びなければ、今後のフィーニスアイランドはーー。


「……しかた、ないか」


 爪を抑えている腕の力を抜く。

 武器をバゼラートから銃に変え、抑えていたものがなくなり、爪が襲いかかる。


 その時だった。


「だらぁぁぁぁぁ!」


 トゥルーデが横に吹っ飛んだ。


「!?」


 気づけば。

 目の前にはトゥルーデの代わりに、一人のプレイヤーが棘の上に立っていた。


「テト……」


 そこにはテトがいた。

 HPは残っているように見えない。パッシブスキルの効果で残HPは1とかギリギリで生き延びているのだろうか。


 テトの姿は悲惨極まりなかった。

 様々な部分に棘が貫通している。

 中でも左眼に突き刺さった棘が痛々しい。

 テトはぜえぜえと息を荒げながらイトナを見る。


「……危機一髪だったな」


 テトは力無く笑う。

 だが。


 それを三本の爪が斬り裂いた。

 避けるも、防ぐもなく、

 無抵抗のまま、テトは散っていった。

 抵抗する力など残っていなかったのだろう。


 また、入れ替わりにトゥルーデが現れる。

 HPはさほど変わっていない。

 レッドHPになって、また防御力が上がったか。


「ふーっ! ふーっ!」


苦しそうに息を荒げるトゥルーデもまた、満身創痍だった。

 最初から見窄らしい姿をしていたが、今はやつれているようにも見える。


 棘が引いていく。

 ストンと落ちるように元あるべき場所に帰り、何事もなかったように元の樹海へと姿を戻す。


「ぎ……ぐ、グガアアアァァ! アアァァァァ!!」


 そして再びトゥルーデが吠えた。

 またアレが来る。


 二回目。いけるか!?


「ニア!」


「守護の神よーー」

「え?」


 ニアは詠唱を開始していた。

 それにイトナは驚く。


 ニアは基本、詠唱をしない。詠唱してからでは防御が間に合わないから。

 だからニアのスキルはスキル名のみで発動するものが殆どだ。

 そのニアが詠唱をしている。

 ちいさな声で、聞き取れないほどの高速詠唱で。


 ニアのバックラーが輝きを増す。

 それは難易度5の輝き。


「ーー《オプティカルキューブ》」


 寸前で、青く、透き通った立方体がイトナとニアを囲う。

 その後、棘の嵐が立方体と激突した。


 衝撃に備える。

 だが、衝撃はない。


 棘は立方体に飲み込まれるように、伸び続けていた。

 まるで水面のように。弾く事も防ぐ事もなく、受け入れている。

 だが、棘は中には侵入してこない。

 立方体を境界はまるで水面の様に、波紋を広げるだけ。


 ニアの難易度5スキルは初めて見る。

 いつも難易度2や3で事足りてしまうためだ。


 ともあれ、耐えることに成功した。

 ニアをパーティに入れておいて本当によかった。

 これ程の攻撃を防げるプレイヤーはホワイトアイランドではニアしかいない。

 つまり、トゥルーデの攻略はニア必須だったって事だ。


 トゥルーデが追って来る。

 イトナ達を囲う立方体を食おうと口を開けてーー。


「はい!」


 ガチンとトゥルーデの口が閉じられる寸前。

 立方体が消える。

 このために特訓してきたのだ。

 ニアの事前の特訓が、今ここで活きた。


 ニアのスキルが消え、立方体があった部分だけが切り抜かれた様に空間が存在している。


 落下する。

 そんな中、ニアのバックラーが再び輝く。


「《リバーシブル》!」


 次は赤い透き通った立方体がトゥルーデを囲った。そして、


 さっき飲み込んだ無数の棘が、今度は内側に現れた。


「ーーーーグァ?」


 そんなトゥルーデの声が聞こえた気がした。

 宙に浮く立方体は棘で満たされ、中が確認できない。


 やがて、

 立方体が消え、棘が消えると。トゥルーデが姿を現した。


 トゥルーデに体は付いていなかった。

 頭も奥の景色が見えるほど、穴だらけになっている。

 もちろんHPは残っていない。


 静まり返った樹海の中、トゥルーデはゆっくりと泣きそうな表情に顔を歪める。

 それを最後に、ボンッと音を立てて四散した。


 同時にニアの体を紅い光が包む。ファンファーレが鳴るのが聞こえた。

 レベルが上がったのだ。

 つまり。


「勝った……?」


 ニアは体を緊張させながら、トゥルーデのいた場所を見て言った。


 棘の嵐だった樹海が元の姿に戻っていく。

 イトナはニアを抱き支えながらゆっくりと着地する。

 重力変動の状態異常ももう無い。


「……倒したんだ」


 ニアは力無く、でも理解したかのように勝利を口にした。

 でも喜びは無いように見えた。


 着地し、足が枝についているのに、イトナを離さない。

 無言のままぎゅっと抱きしめてくる。

 ほんの少しだけ、そのままでいた。


 今、ニアにはどんな感情があるのだろう。


 四年間。かつてのパレンテしか攻略に成功していなかった。S級クエストの攻略。

 その偉業をニアは達成した。

 それは仲間を犠牲にしてまで手に入れたいものだったのだろうか。

 でも、今は犠牲を無駄にしなくてよかったと素直に喜べばよいのだろうか。

 そんな事を考えているのかもしれない。


 正直、イトナはこんな勝ち方はあまり好きじゃない。

 好きじゃないが、目的は達成した。トゥルーデ討伐という大きな目標を。


 もし、この勝利に納得いかないなら、次の目標は誰もゲームオーバーにならずに攻略とすればいい。


 きっと、この経験はサダルメリクを更に強くするものになるだろう。



 フィーニスアイランドの攻略に一歩近づいた。


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