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ラテリアちゃんはチュートリアルちゅう?  作者: 篠原 篠
ディア・セイナ
67/119

14


 イトナはニアの前で正座させられていた。ニアの後ろには啜り泣くラテリア。セイナはなんとかしてセイナの部屋に閉じ込めることに成功した。


「……ふぇッ……ぐずッ……」


 心が痛い。


 ラテリアの鳴く声を聞くだけで、心が抉られたかのように痛い。


 イトナは声を大にして事故だったと言いたいけど、ニア発する空気がそれを許してくれなかった。


「事情は分かったわ」


 イトナの知る限りの事の成り行きを説明すると、ニアは理解はしたけど納得はしていないような微妙な顔を作った。


「つまり、ラテリアちゃんから緊急事態の連絡が入ったから、私に一言も、なにも言わずに、でも見知らぬ男性NPCにはご丁寧に私の水着の感想を言うようにお願いして、イトナくんは助けに向かったと」


 言葉に棘があるってレベルじゃなかった。言葉が荊の鞭となってイトナを打ちのめす。


 普段怒らない人が怒ると物凄く怖い。それを目の当たりにしていた。


「あの後どうなったか分かる? カーテンを開けたら知らない男の人がいて、しかもその時私が着ていたのが……ああ、ダメ。思い出してきたら頭が痛くなってきた」


 本当に頭が痛そうに、額に手を置く。


「ごめんなさい……」


 なにも言い返せなかった。今冷静に考えてみれば、あの時ニアに連絡する方法なんていくらでもあったからだ。


 心の底から反省し、イトナはしょんぼりとうな垂れた。

 ニアを怒らせてしまうなんて相当だ。思えば不本意に自分の水着姿を知らない男の子の前で披露するなんて、恥ずかしいに決まってる。

 焦っていたとしてもイトナの故意でそんな状況を作ってしまったのだ。ニアがイトナに怒るのは当然のこと。


 過ぎてしまったことはやり直せない。正座をして、頭を下げ、誠心誠意謝罪するしかなかった。


「っう……」


 そんなイトナを見て、怒っていたニアの表情が少し怯んだように見えた。


「ニア?」


「と、とにかく! 今回は許してあげるけど、今後は気をつけること。分かった?」


「分かりました……」


 今後こんな異常な状況を繰り返すとは思えないイトナだったけど、素直に返事をし、心に固く刻むことにした。今度から女の子の試着をご一緒したら途中でいなくならないことを。


「それより、私よりも謝らないといけない人がいるでしょ」


 そう言ってニアが後ろを振り向く。その言葉にラテリアの肩がビクリと揺れた。


「ラテリアもごめん」


「いえ、びっくりしちゃっただけです。イトナくんは悪くないので……。すみません、こんなことで泣いちゃって……」


「ラテリア……」


 きっとラテリアは本当にそう思ってくれているのだろう。他の人から見れても事故。でも、男が女の子のあられもない姿を見てしまったら無条件で男が悪になってしまう。


 ただ、今回はイトナに限ってはそうでもない。


 このフィーニスアイランドというゲームの世界で、敏捷のステータスに多く割り振り、速さに慣れたイトナの反射神経なら、あの瞬間を見ないように視線をズラすことくらいは可能だったはず。


 けど、それをしなかった。出来なかったのだ。男の本能が一瞬の判断を狂わせ、自然と視線がスカートの中に吸い込まれてしまったのだ。


 男の本能のせい。そんな野蛮な理由で見てしまっただけに、イトナも申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。


「ダメよラテリアちゃん。こういう時はイトナくんになにか要求しないと。じゃないとイトナくんもスッキリしないんだから」


「そ、そうだね。事故でも僕が悪いんだし、僕が出来ることならなんでもするからさ。なにか欲しいものとかあったら……」


 すると、ラテリアの啜り泣く声がぴたりと止まった。


「なんでも、ですか?」


「うん。僕で出来ることなら」


「どんなことでもですか?」


「え、うん。僕に出来ることならね?」


 なぜか念を押すラテリアが少し怖い。いったいなにを要求するつもりなのだろうか。


「えへへ……」


 まだ頬に涙を流したまま、ラテリアが笑顔を作ってくれる。多分これで許してくれたのだろうか。よかった。でも、もっと問題なのは……。


 次に見るのはテーブルの上に座る黒いデブ猫。でもそれはイトナの知っているいつも眠そうにしている猫ではなかった。物凄い威圧を発して、怒りの眼孔がイトナを貫いていた。


 まだラテリアから詳しいことは聞いていないけど、今はこのデブ猫がセイナらしい。


 そのすぐ隣に視線を移せば、薄緑色の布。セイナの最終防衛ラインがそこにそっと置いてあった。


 さっきのことを思い出しそうになって、慌ててセイナに向き直る。


「えっと、セイナ?」


 恐る恐る近づくと、目の高さを合わせるために膝を折る。


「セイナもごめん。僕でよければなんでもぉッ!?」


 最後まで言い切る前に、漆黒の猫パンチがイトナの頬に直撃した。


 セイナはなにも言わない。多分喋ろうとしても猫の鳴き声になるだけだからだろう。だから無言で、怖い顔を作って、ひたすらにイトナの顔目掛けて猫パンチの応酬が放たれた。


 イトナには分かる。喋れないからイトナに要求することを態度で表現しているんだ。もしセイナが喋れていたらこう言っていただろう。「なんでも? じゃあ今すぐ死んで」と。怖い。


 でもセイナの猫パンチは長くは続かなかった。


 すぐに息が切れ、パンチの勢いが著しく低下する。

 今まで出来るだけ動かないで生きてきたディアの体は、素早く動くように作られていない。培ってきた怠惰によって完成したワガママボディはセイナの思い通りに動くはずがなかった。


 代わりに身軽なセイナの体を手に入れたディアは、セイナの部屋から脱出しようとしているのか、ドッタンバッタン元気な音が聞こえてくる。


「許してもらった?」


 そんな一部始終を見てたのか見てなかったのか、ニアがひょっこり顔を出して仲直りしたかの確認をしてくる。


「いや、どうかな……」


 息を切らしてぐったりするディアの体だったけど、目は恨めしそうにイトナを見ていた。絶対に許してないやつだ。


 本格的な謝罪、もとい処罰はセイナが戻ってからにすることにしよう。今はそう決めとくことにした。


「聞いていいかなラテリア、どうしてこんなことになってるのか」


 落ち着きを取り戻したラテリアに尋ねる。そして、ラテリアがこうなった経過を説明してくれた。


÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷


「本当にそんなことが?」


 ラテリアから聞いた話は信じがたいものだった。


「永続付与のオプション、か……」


 でも、目の前で起こっている現象を見るに、信じるしかない。


 相当運が悪かったのだろう。永続付与オプションという新薬が予期しない様々な薬品と混ざ合い、入れ替わりというもう一つの新薬が生まれてしまったわけだ。しかも永続付与オプション付きで。


「しかし困ったな……」


 セイナについた状態を見て顔をしかめる。今回の問題はかなりの難問である。


「入れ替わりの状態がデバフじゃなくてバフの判定……か」


 隣で同じくディア……の体をしたセイナの状態を見るニアが言葉を零す。


 そう。今回のなにより想定外だったのが、入れ替わりがデバフ、つまり能力を下げる状態異常でないことだ。デバフであれば、解除するスキルやアイテムがいくつか思い浮かぶ。でも、これはバフの判定になっている。


 バフは能力を上昇させていることを意味している。アイテムでマイナスの効果を取り払うものがあっても、プラスの効果を消すものはない。

 スキルも同じ。プラスを消す手段としては、同等のデバフを与えて、プラスマイナスゼロにすることが挙げられる。

 でも、今回は上昇でも減少でもなく入れ替わり。プラスマイナスゼロの考え方なら、単純にもう一度入れ替わりの薬を使用すればいいのだけれど……。


 散らかっていた床を見る。さっきニアが簡単に片付けてくれて薬は無くなってしまっている。仮に残っていたとしても薬の再現は難しいだろう。


「ニアはなんか思いつく?」


「難しいわね……。こういうのは薬に詳しい人に聞いた方がいいんだろうけど……」


 薬に詳しい人で思い浮かぶ人はイトナの中で一人しかいない。


 イトナとニアが黒猫を凝視する。その薬のスペシャリストが今回の被害者なのだけど……。


「セイナさんなら分かる? このバフの解除方法」


 猫になり返事ができないセイナにニアは語りかける。猫パンチでグッタリしていたセイナがむくりと起き上がった。何か言いたげなように見えるが、セイナに伝える術はない。


「ニア無理だよ。今のセイナじゃ……」


 まぁ見ててとニアがアイコンタクトを送ってくると、両手をセイナの前に出した。


「解除方法が思い当たるなら右手、ないなら左手にタッチして」


 なるほど。これなら喋れなくとも簡単な意思疎通なら可能だ。


 セイナは耳をピクリと反応させて、ニアの右手に肉球を当てた。


 セイナの答えはイエス。解除方法が分かると答えた。


 するとセイナは首を別の方へ向け、可愛い手である方向を指した。


「本棚?」


 セイナのジェスチャーを読み取り、ニアがセイナを抱いて本棚の前に移動する。

 それから上の段から順に、セイナを本の前へ持っていく。目当ての本の前になったらセイナが合図をする寸法だ。


「これね?」


 セイナが選んだのはこれまた難しそうな厚い本だった。タイトルの記載がない、濃い緑色をした本。


「あ、その本、私知ってます」


「え、ラテリアが?」


「はい。セイナさんが本に集中してて、私の話を聞いてくれなかった時にその本をちょと読んだことがあるんです。見た目はむつかしそうですけど、面白かったですよ?」


「そうなんだ……」


 サラッとラテリアの可哀想な日常を知ってしまった気がする。セイナはまるでそれが聞こえなかったかのように知らん顔を決めていた。


「確か伝説級の秘薬について書かれていました。素材も七大クエストボスモンスターのドロップアイテムばっかりで、作るのは難しい夢みたいな秘薬ばかりでしたけど……」


 つまり、いつも持ち歩くような量産できる薬とは違う単発で使う特別な薬の調合方法がここに記されているということか。


 そのタイトルの無い本とセイナをテーブルの上に下ろすと、セイナが猫の手を使い辛そうに使って、本のページを捲り始めた。


「ここ?」


 捲るのが止まるとイトナとニア、そしてラテリアがそのページを覗き込む。


「リセットの秘薬……か」


 そこに書かれていた秘薬はレベル、スキル以外全てをリセットするものらしい。きっとステータスの再振り分けや、亜人種の解除を目的としたアイテムなのだろう。


「でもこれ……」


 凄まじい効果を持ったアイテム。でも、それを作製するのに必要な素材はラテリアの言っていたとおり、伝説級だった。


「白蛇神の激毒、百獣の王の鬣、白の騎士の核、白骸の骨粉に白灰の魔女の髪。そして黄金の卵の殻……これ全部七大クエストのボスモンスターからドロップするアイテムじゃない」


 ぼくの考えた最強素材と言わんばかりの超入手困難素材の名前が必要素材の欄に羅列していた。


「こんなの無理よ。セイナさんが焦るのは分かるけど無謀すぎ。攻略されたボスモンスターを倒すのだって準備に時間がかかるのに、未開地のボスモンスターのアイテムがあと三種類も必要だなんて現実的じゃないわ。あ、白蛇神の激毒はあるんだっけ? それでもあと二種類」


 ニアが冷静にセイナの案を否定する。


「……いや、。白灰の魔女の髪はもうあるんだ」


「え、攻略したの!? トゥルーデを!?」


 聞いてないんだけどと、問い詰められるようにしてニアの顔が急接近してきた。


「い、いや、倒せてないよ。前に挑んだときに手に入れたんだ。ほら、ドロップアイテムって別に倒さなくても入手できるのもあるから」


「確かに、髪とかはそうだけど……そもそも挑んだってまさか黎明と共同で?」


「違う違う。ソロだよ」


 抜け駆けされたんじゃないかと勘ぐられたのを慌てて正しておく。


「Lv.150相手にソロって、イトナくんレベルいくつなのよ……」


「ま、まぁ、とりあえず髪の毛を含めて、それ以下の七大ボスモンスターの素材もあるはずだから、あとは黄金の卵の殻だけだね」


「その黄金の卵の殻って、適正Lv.175白鶏王のアイテムよね? これが一番の問題じゃない。レベルもそうだけど、どうやってあのダンジョンに行くのよ」


 そう。難易度、レベルなど諸々の問題もあるけど、まずダンジョンに到達することが困難だったりする。


「ダンジョンに行くって点は僕に考えがあるんだ。だからパレンテのクエストとしてメンバーを集めれば……」


「話は聞かせてもらったぜ!」


 そこで男の声と、バーンとパレンテホールのドアを開ける大きな音が響いた。


「あ……」


「ちょっとなにやってるのよ!」


「わ、わりぃ……ドア壊れちゃった……」


 派手に登場したのは、ついさっきホワイトアイランド序列一位に返り咲いた黎明の剣ギルドマスター、勇者テトだった。


 力のステータスが有り余ってか、はたまたカッコよく登場しようとしたのか、空回りしてドアが外れてしまっている。


 外れたドアを元の場所に慎重に立てると。「よし!」と何故か指差し確認をした。


「いや、直ってないからね」

 

「ごめん。弁償する……」


「なんであなたがここにいるのよ」


 テトの突然の登場を嫌がるようにニアが言う。


「いや、フレンドリスト見たらニアがここにいたから祝勝会に誘おうと思って」


「なにが好きで敵ギルドの祝勝会に参加しなくちゃいけないのよ」


 ニアに冷たくあしらわれ真面目に凹むテトがラテリアと目が合う。


「お、あの時の」


「あの時はどうも……」


 ラテリアに興味を持ったテト。ラテリアはそれに軽くお辞儀すると、そそくさと隠れるようにしてイトナとニアの後ろに移動した。


「あれ、ラテリアと会ったことあるの?」


「ああ、リエゾンのクエストの時にな。その子は?」


「ラテリアは最近入ったパレンテのメンバーなんだ」


「え、パレンテに入ったのか」


 ほーんとテトはラテリアを興味深そうに凝視し始める。その横でニアに脇をつつかれた。


「リエゾンのクエストってなんの話?」


「えっと、話すと長くなるんだけど……」


「あ、あの!」


 ラテリアの声に三人がラテリアの方を向く。


「今はセイナさんの話をしませんか?」


 お互いに近況を知らないせいで話が逸れて先に進まないのを、ラテリアが区切りをつけてくれる。


「それそれ。なんかよく分からないけど、みんなで未開地行くんだろ? 俺も入れてくれよ」


「話は聞かせてもらったって、全然分かってないじゃない」


「あれ、違うのか?」


「まぁ違わないけど、テトが参加してくれるのは力強いよ。とりあえず、説明しようか」


÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷-÷


「なるほど。つまりみんなで未開地に行くってことだな?」


 一通りの説明をして、テトが完璧に理解したと頷いた。


「本当に理解したの?」


 セリフが説明する前と全く変わっていないことにニアが不信を唱える。


「とにかく、今すぐにでも行きたいんだ。できれば勇者パーティにお願いしたいんだけど……」


「ああ、勇者パーティなら空いてるぜ。祝勝会にみんな集まってるはずだし」


「ありがとう。お祝いモードの時にに頼んじゃってゴメンね。あ、言いそびれてたけど、現一位おめでとう」


「いいってことよ。クエストってことは報酬も出るんだろ? パレンテの依頼って言ったらあいつらも張り切る。特にガトウが」


「助かるよ」


 そう言って、早速テトが念話をしてくれる。


「それじゃ、私の方も確認してみるわ。出る前はみんなホールにいたから呼んだら来てくれるかも」


「いや、今回はテトの方だけに頼もうかと……」


「え、なんで。未開地よ? 勇者パーティとヴァルキュリアだけじゃ足りないくらいなのに」


「実は僕の考えてるダンジョンの行き方だと一パーティしか行けないんだ。この前はサダメリにお世話になっちゃったし、今回は黎明の方にお願いしようかなと……」


 同じギルドに何回も借りを作るのは避けておきたい……なんていうのは方便で、イトナは勇者パーティの方がダンジョンにたどり着く可能性が高いと思っている。


 ヴァルキュリアよりも勇者パーティの方がと比べるような発言をすると、ニアからすれば気分のいいものではない。だから正直な理由を伏せておく。それでもニアは納得のいかないような顔をしていた。


「わりぃイトナ。フレデリカは来ないって。なんか掲示板確認しなくちゃいけないって言われた。後の四人はこっち来るように言っといた」


「フレデリカ不参戦か……」


 今回のミッションはあくまでアイテム金の卵の殻の入手。攻略ではない。それだけにトリッキーなスキルが豊富なフレデリカがいないのは少し痛いかもしれない。


「ちょうどいいじゃない。一パーティしか行けないならフレデリカの枠にイトナくんが入れば」


「……いや、その枠には僕じゃなくてラテリアに入ってもらおうって考えてるんだ」


「……ふぇ?」


 未開地の話で蚊帳の外だったラテリアの名前が突然上がったせいか、本人から変な声が聞こえてきた。


「ラテリアちゃん? 普通に考えたら私かイトナくんじゃないの?」


「いや、あのダンジョンに行くにはラテリアが必要なんだ」


 ニアのいうとおり、レベルを見るならイトナも行った方がいいだろう。でも、今回のダンジョンは特殊な場所にあるため、どうしてもラテリアの力が必要になる。


 最初の想定ではレベルが一番低そうなオオカミ少年を外してラテリアを入れてもらおうと考えていたけど、フレデリカの都合がつかないなら仕方が無い。


「ラテリアちゃんじゃないと行けない? さっきから気になってたけど、あのダンジョンにどうやっていくの?」


「あ、あの! よく分かってないんですけど、そのダンジョンってどこにあるんですか?」


「俺も知りたい。あのダンジョンってまだ誰も入れたこと無いんだろ? どうやっていくんだ?」


 三人いっぺんに質問が投げられて、イトナはたじろぐ。


「えっと、詳しくは勇者パーティが到着してから話そうと思うんだけど、ラテリアは知らないだろうから簡単に。一旦外に出ようか。ここからでもダンジョン見えるから」


「え?」


 疑問の声がラテリアだけから上がる。残された三つのうちの一つ、適正Lv.175のダンジョンの在りかは七大クエストの依頼書を手にしたことのあるプレイヤーのみが知っている。


「あれだよ」


 ラテリアを連れて外に出ると、イトナは遥か遠くの空に浮かぶ島を指差した。


「巨なる者が住まう島、スカイアイランド」


 多くのプレイヤーはあれを幻想的な背景と思っているが、違う。あれこそが七大クエストダンジョンの一つ。


「ラテリアにはあそこまで飛んで行ってもらおうと考えてるんだ」

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