脱出、ジュマンジ
■未知の項・ルコラの依頼⑥
僕達四人は、円陣を組む。
何も士気をあげようとしている訳では無い。
ここから先は、罠をクリアせず、無理矢理にでもダイスを回してゴールを目指すのだ。
“ふりだしにもどる”
なんて罠でもなければ、あと2週以内にクリア出来るはずだ。
この円陣は、ダイスがどこに転ぼうと、どんな罠が出てこようと対処するための陣形だ。
調査団の三人は、既に心を折られており、戦う意志さえ見せない。
このままだと、罠が発動した瞬間に脱落してしまうだろう。
「メイシャ、守護魔法をかけてやれ。」
メイシャが魔法のバリアをかける。
しかし、元から戦う気がない以上、どこまで役に立つか。
後は本人達次第だ。
「それじゃあ、いくぞ!」
さっきは、ラケインが5を引いてメイシャを救出した。
だから、次はリリィロッシュ、メイシャ、僕の順だ。
残りマスは、リリィロッシュが12、メイシャが5、僕が9、ラケインが5だ。
このうち誰かがゴールして、「ジュマンジ」と呟けばクリア、のはずだ。
全員がお互いを見つめ、頷く。
これが最後の勝負だ。
リリィロッシュがダイスを振る。
“8”
落雷と小型の飛龍の群れが出現する。
「メイシャ!ダイスだ!」
雷避けの魔法を放ちながら、防御魔法を出そうとするメイシャに指示を出す。
メイシャがダイスを振る。
“2”
竜巻状の強風が吹き荒れ、風の中にはサメのような魔獣が見える。
竜巻は飛龍を巻き込んでくれたが、雷まで取り込み、恐ろしい見た目になっている。
僕もダイスを振る。
“7”
どうやら濃霧の罠だったようだが、竜巻が取り込んでしまう。
しかし、現れたのは巨大な四足獣。
一直線に僕らに突っ込んでくる。
「ラケインっ!」
ラケインがダイスを振る。
“6”
「っ!!」
光の玉がゆるゆると動く。
しかし、先ほどの巨獣がもうそこまで迫ってきた。
竜巻の中からサメの魔獣が飛び出し、大きな顎で僕らを飲み込もうとする。
玉が止まる。
現れた文字は、
“ジュマンジ”
「ジュマンジっっ!」
まさに刹那。
サメの顎は、もうメイシャの頭を覆っている。
巨獣の角が威嚇に放った炎弾を弾き、僕の眼前に迫っている。
しかし、ラケインの言葉の瞬間に、魔力の煙に代わり、ジュマンジの魔法陣へと吸い込まれていく。
雷も、竜巻も、飛龍も同様だ。
その吸引力に、僕達も引きづられないように踏みとどまる。
そして、ジュマンジに飲み込まれた時と同じ様に辺りを光が包む。
どうやら、現実へと帰れるようだ。
「対魔魔法部隊、構えぇーっ!」
帰還した僕達の前に現れたのは、約20名の魔法使いの団体。
どうやらギルドではなく、王国軍の部隊のようだ。
「放っ…「すとーっぷ!!」…待てぇーっ!」
まさに間一髪。
軍が中の僕らごと遺跡を消滅させる寸前だった。
本来、遺跡に刻まれているような永続性の高い魔法陣を力ずくで消し飛ばすのは悪手だ。
魔法が生きたまま残留することもありうるし、最悪、暴発して魔力爆発を起こす。
軍の担当者に、遺跡や罠の詳細を伝える。
基本的には、遺跡の通路を通らず、その手前から順に魔法を解除していけばいい。
そう言えばここは、先に発見されていた小さな遺跡のようだ。
道理で何も無いはずだ。
こっちは、ジュマンジの出口であり、クリア者のパーティ会場などだったのだろう。
そして、僕達はとぼとぼと帰路につく。
達成期限を守れず、軍が出動してしまったのだ。
当然報酬はなし。
オマケに助けたはずの調査隊たちも、見捨てただのなんだのと言いがかりを付けてくる。
全く、本来脱出できなかっただけじゃなく、守護魔法まで掛けてやったのに。
まさに踏んだり蹴ったりだ。
「おかえりぃ~♪心配したんだよぉ。」
しかし、それもこれも、ルコラさんの笑顔を見れば、苦笑するしかないものだな。
「ただいま、ルコラさん。
ごめんね、クエスト失敗しちゃった。」
僕達も一応依頼の報告はする。
「うん、それは残念だけど、アロウ君たちが戻ってきてくれただけでも万々歳なのさ♪
依頼の失敗は依頼で返す、これが《砂漠の鼠》の方針なのさ♪」
そう言って、僕達を暖かく迎えてくれる。
こんなギルドだから、僕達も頑張れるというものだ。
僕達が帰ろうとすると、ルコラさんが思い出したように、僕らを呼び止めた。
「そういえば、のみの市でスゴロクなんて拾ったんだけど、みんなで遊ぶ?」
「やるかぁーっ!!」
はぁ、ようやく完結できました。
ただの記念作のはずだったのに。
ちなみに、原作のジュマンジでは、26年もジャングルに閉じ込められたり、街中をライオンや虎が暴れ回ったりするそうです。
あくまで発想だけお借りしたので、原作ファンの方はお許しください。
これにて、ペンネの依頼、完結です。
本編「世界を救うのが勇者だなんて誰が決めた!?魔王再臨!!」の方も、引き続きご支援ください。




