古代文明の遺産
短編…のつもりでした(笑)
■未知の項・ルコラの依頼②
“遊戯迷宮”。
魔王でさえ知識としてしか知らない、古代文明の遺物。
人類が誕生する以前、約九千年前まで存在した古代文明。
彼らは、文明として行き着くところまで行ってしまったらしい。
武力も、医術も、そして娯楽でさえも。
強大な力を持ち、魔族に匹敵する長寿を誇りる彼らにとって、スリルを味わえる娯楽など数える程しかなかった。
そして作られたのが、悪夢のような遊技場。
それがこの魔法陣の正体だ。
「古代文明?そんなものが…」
メイシャは目を白黒させ、リリィロッシュですら驚きを隠せないでもいる。
魔族の中でも、上位者の一部しか知らない事実だ。
「それで、どうする?」
ラケインが促す。
「こちらの安全を考えると、下手に手出しせずに破壊する方が正解だろうね。」
古代文明の遺産とはいえ、基本的には遊具だ。
だから、取り込まれただけでは死にはしないはず。
しかし、その危険度を考えれば、調査隊の帰還の可能性を捨てでも破壊した方が確実だ。
「どうする?このまま遺跡ごと埋めるか?」
ラケインが大剣を構える。
「いや、遺跡自体は壊れても魔法陣が生きていると余計に厄介だ。
気は進まないけど、やっぱり入口から入って、魔法陣を直接壊した方がいい。」
遺跡の内部に入り、通路から広間を覗く。
「ここから見ると、ただのイタズラ書きにしか見えませんけどね。」
確かに、遠目にはただの巨大な蛇のようにしか見えない。
しかし、よく見てみればその線は、細かな呪文で描かれており、四角や丸の一つ一つが高度な魔法陣になっている。
「先輩~、これ、なんて書いてあるんです??」
メイシャが入口の門柱を指さす。
「こんな所に文字があったんだ。
えぇと、ロノソンエルルクホ…いや、これ古代語か。
“この門をくぐるとスタートです。”
…え?」
途端、図形の一部が光を放つ。
「しまった!自動作動式!?」
そのまま僕達は光の中に飲み込まれる。
光が収まり、当たりを見渡す。
特に変わった様子はない。
場所は遺跡だし、変わった魔法陣もそのままだ。
だが、僕には分かる。
ここは魔法で作られた異空間だ。
遺跡の内部を忠実に再現した、現実とは次元の異なる世界。
よく見れば、草や苔に覆われているが、広間の入口に模様が記されており、魔法陣となっている。
これがキーになっていたのか。
広間の中を見ると、列になっている魔法陣の端が僕達を待っているように光っており、その前に四つの光の玉が浮いている。
途端、目の前でコツン、と音がする。
視線を落とすと、どこからかダイスが現れ、転がっていた。
ダイスは、一つの面が五角形をした十二面体だ。
ダイスが止まる。
“6”。
すると、光の玉のうち一つが、ユルユルと資格の上を動き出す。
意味は分からないが、嫌な予感しかしない。
「みんな!何かが起きてる!
警戒して!!」
そう叫ぶと同時に、光の玉が止まった空間に、文字が浮かぶ。
古代語だが、なぜかすぐに意味がわかった。
僕がそれを読めるとかいう以前に、意味が体に伝わってきたのだ。
“闇に飛び交う黒い影、影は群れなし襲いくる”
次の瞬間、ドンッと背中に衝撃が走る。
ギギギッ!という鳴き声に上を見上げると、どこからとなく現れた、無数のコウモリが空を舞っている。
「黒い影、こいつらの事か!」
ラケインは、フルイーターを床に突き刺し、ラピスを右手に構える。
「メイシャ!盾を張って!
リリィロッシュは、僕と魔法迎撃!」
メイシャの守護魔法に守られながら、風の範囲魔法でコウモリたちを吹き飛ばした。
一難去り、周囲の確認が出来てから、光の玉がある場所へ皆を集める。
「どうだ、アロウ?
なにか分かったか?」
「うん、これはスゴロクだ。
それもかなり悪質なやつだね。
基本的なルールは、
①ダイスを振るとそれぞれの光の玉がマスへ動く。
②誰かがゴールして、“ジュマンジ”と叫べばクリア。
この二つみたいだ。」
言葉にすると単純な話だ。
だが、罠の危険度は文字通りの殺人級だ。
「本当にただのスゴロクなんですね。
罠は怖いけど、私たちなら何とかなりそうかも。
なんか心配して損しちゃったかも。」
メイシャが安堵したように笑顔になる。
しかし、この言葉に僕は首を横に降る。
「メイシャ、罠に引っかかった僕が言うのもなんだけど、古代文明の罠を舐めすぎ。
各マスを見たけど、どの罠もかなり複雑で読み解けやしない。
奥の方へ行くほどに難しくなっているみたいだし、楽観できないよ。」
スゴロクのマスは、その一つ一つが連動しており、当然、ゴールである解放の転移陣は、そこにたどり着かなければ作動しない。
リリィロッシュも追い打ちをかける。
「ざっと見ただけでも、召喚系、転移系、発動系など、様々な罠がありました。
どのマスへ行っても気を抜いたらクリアどころか、生き延びることさえできません。」
「それともう一つ。
二日後には、僕達は依頼失敗と判断されて、遺跡ごと破壊される。
そうしたら帰還手段だけなくなって、永遠にここに閉じ込められることになるよ。」
そう、僕たちには時間制限もあるのだ。
僕達は改めて気を引き締め直し、スタート地点へと向かうのだった。
なお、筆者はジュマンジ見たことありません。
名前だけ聞いたことあるなぁくらい。
ネタバレサイトでストーリー検索した程度ですので、映画の方を知っている方はご容赦ください。