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迷子の…  作者: 如月冬美
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 朝、目が覚めると気分がスッキリしていた。昨日のぐちゃぐちゃした気持ちが落ち着いたというか。どう思われてても好きなものは好き!って開き直ったカンジ。

 夢でお兄さんに告白した(コクった)せいかな?

 そんなことを考えながら朝食の支度をしているとお兄さんが顔を出した。

「おはようございます」

「…おはよう」

 笑顔で挨拶するとお兄さんは少し驚いた顔をしながら返してくれた。それにホッとして思い切り頭を下げた。

「あの…昨日はごめんなさい」

「…どれのことだ?」

 お兄さんの言葉に頭は下げたまま、視線だけ上げる。

 あれ?なんか表情が硬いような…気のせい?

「どれ?え、えと、水やり過ぎちゃったこととか、グラス割っちゃったこととか…役立たずだったことですけど…」

「ああ、そのことか」

 ん?ん?ん?表情、柔らかくなった?ん〜…なんだろう?なにかいつもと違う気が…あれ?

「もう終わったことだ。気にしなくていい」

 ぽんぽんと頭を撫でられる。いつもの笑顔、いつもの仕草。いつものお兄さんに些細な違和感なんてどうでもよくなる。

「ありがとうございます」

「今日は何だ?」

「チーズオムレツにしようと思ってるんですけど」

「ああ、あれか」

 あれも美味かったと微笑むお兄さんにつられて私も微笑む。

「昨日、迷惑をかけた分、メッチャ美味しいの作りますね!」

「張り切るのはいいが焦がすなよ?」

「それ、まだ言います?」

 初めて朝食作りを任されたときの大失敗を持ち出されて拗ねたふりして睨んでみる。ま、こんなやり取りができるぐらい打ち解けたってことなんだけど。

「あの衝撃は忘れようとしても忘れられないからな」

「ひど〜い!」

 わざとプッと頬をふくらませるとお兄さんに頬を突かれた。

「可愛いだけだからやめろ」

 大切な植物達を見るときみたいに目を細めて優しく笑うお兄さん。

 それ反則だからっ‼︎

 一気に頬が熱くなる。心臓がバクバクする。恥ずかしくて目が合わせられない。

「っ!…も、もうっ!からかわないでください」

「真っ赤だな」

「お兄さんっ‼︎」

「っ!………」

 お兄さんの動きが止まった。

「え?」

「あ、いや、悪かった……」

「い、いえ、私こそ……」

 さっきまで軽口を叩きあってたのが嘘みたいに気まずい空気が漂う。

「と、とにかくご飯の用意しますね」

「あ、ああ」

 誤魔化すように朝食作りを再開した。






 気まずい雰囲気の中でした食事は味がしなかった。会話もないのですぐに食べ終わる。お兄さんはなにも言わず研究室へと篭った。

「私、なにかマズった?」

 ダイニングテーブルに突っ伏したまま呟く。視線の先にある研究室のドアはかたく閉じたまま。まるでお兄さんの心を代弁しているみたい。知らず知らず溜息が出る。

 私はお兄さんが好きだ。どうしようもないほどに好きだ。だけど告白はしないと決めている。私はマロウドだし、お兄さんを困らせたくもないから。

 マロウド。この世界とは違う世界から来た人達の呼び名。いつかはいなくなる人達。私もその一人。

「いつ帰るかわからないのが厄介だよね」

 そう。マロウド達はいつ帰るかわからない。でもいつか絶対帰る。帰らなかったマロウドはいない。

「はぁ…………」

 悩んでいたってしかたない。マロウドのことは考えるだけ無駄。それよりも今はお兄さんだ。お兄さんをなんとかしなきゃ。

「………よし!」

 気合いを入れて体を起こすとペチッと両頬を叩いく。そしてお兄さんの機嫌をとるべくお茶の準備を始めた。

 どうか機嫌が直りますように!

エミは酔うと記憶をなくすタイプ。

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