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迷子の…  作者: 如月冬美
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晩ご飯をご馳走になった後、片付けをしてからすっかり忘れていた問題に取り組みます。

まずは自己紹介。まだしてませんでした。

「遅くなったけど、私は佐倉(えみ)。十八歳」

「ええ⁈十八歳?見えない!」

驚かれた。いくつと思われてたんだろう?

「あ…ごめん」

「別にいいよ」

気にしないから。うん、気にしちゃいけない。そう、気にしちゃ………。

「え、と…私はコニー・イブ・ジョルジュ。十六歳。コニーって呼んでね」

え?年下?見えない。てっきり同じ年だと思ってた…ってこれじゃお互い様か。

「で、兎族の血が強いの」

「はい?」

兎族?

「兎族はこの長い耳が一番の特徴なの」

コニーのうさ耳がピクピク動く。

「う、動いた⁈」

「そりゃ耳だもん。動くのは当たり前じゃない」

本物の耳だったんだ。うさ耳カチューシャつけてると思ってたよ。

「あれ?そういえばサクラエミの特徴は何?」

「エミでいいよ。特徴って?」

「だから、耳とか尻尾とか角とか鱗とか…色々あるでしょ。何?」

何?と訊かれても…。尻尾とか角とか鱗とか当たり前じゃないから。むしろ何もないのが標準仕様だから。

「…何もないよ」

「え?何もない?」

「うん。何もない」

「………ちょっときて」

有無を言わさずバスルームに連行され、ひん剥かれました。


ギャーーーーーーーッ!






バスルームでひと騒ぎやらかした後、コニーとじっくりがっつり話をしました。

コニーによるとここは大陸の中央より南に位置するレイモン国。平地が多いので農業が盛ん。一年通して気温が安定しているので長期休暇を利用して滞在する人も多数。

地図を見せてもらったけど全く見覚えのない地形でした。日本らしき島もありません。

人種?も違います。こちらではコニーのようにほとんどの人がなんらかの特徴を持っているのだとか。一見持ってないように見えても瞳が猫みたいだったり、舌が蛇みたいだったり、背中に鬣があったり、とか。なかには嘴と水掻きとか複数の特徴を持つ人もいるらしい。…ホラー?

で、私のように特徴が全くない人もいるにはいるらしい。ただし超レア。そして大体が魔術師。

魔術師と聞いてテンション上がりました。でも詳しく訊くと漫画や小説に書かれているような呪文で攻撃ドーン!魔方陣で移動バーン!な感じではなく、占い師とか呪い師的な感じ。

ショボいな、魔術師。

「特徴のない人は割と魔力が高いの」

「なんで?」

「伝承だと特徴を持たない人は獣化出来ないから身を守る為に魔力を身につけたとかなんとか…」

「ケモノカ?」

「完全に獣の姿になること」

そ、そ、そ、それって変身するってことですか⁉︎

「見たい!見せて!」

ふわふわもこもこ大好き!三度のご飯より好きかも。

「あー、ごめん。無理」

コニーが視線を外しながら凄く申し訳なさそうに言う。

「えーと、それは簡単に誰にでも見せていいものじゃないってこと?」

家族とか恋人とか特別な人限定?仲良くなったらオッケー?コニーとなら親友になれそうなんだけど。

「違うの。獣化はお伽話なの」

「お伽話?」

「うん」

しっかり。きっぱり。頷かれてしまった。

えーと…?

「お伽話…ってことはケモノカする人はいないってこと?」

「獣化したって話も聞いたことない」

「都市伝説か…」

「『トシデンセツ』?」

「あー…つい信じたくなる噂ってこと」

この説明、間違ってないよね?

兎にも角にも。私が俗にいう異世界トリップしたことは確定のようです。はあ…。

「エミ?」

「あ、うん。やっぱりここは私のいた世界とは違うみたい」

正直にカミングアウトする。

「え?違う世界?」

「うん」

「え?え?え?じゃあエミは正真正銘、マロウドなのね?」

「マロウド?」

「違う世界から来た人のことをマロウドっていうの」

ふ〜ん。そうなんだ。

「って呼び名がつくほど異世界人いるの⁈」

あ、危ない。危うくスルーするところだったよ。

「エミ!」

いきなりコニーにガシッと両手を掴まれた。

「な、なに?」

なんか瞳がキラキラなんですけど?

「エミはマロウドで間違いない?」

「マロウドが違う世界の人のことなら私はマロウドだね」

「やっぱり?ひょっとしたらって思ってたけど…嬉しい〜〜!マロウドに会えた〜〜〜‼︎」

テ、テンションが!急にテンションが上がった!なんか憧れのアイドルに会ったみたいになってる!コニー、キャラ変わってるよ?っていうか私の質問の答えは?

「噂は本当だった…」

「う、噂?」

「マロウドは美男美女だって噂」

「はい⁈」

「エミは色も抜群に良いわ」

「い、色?」

色ってなに?

「念のため訊くけど…その髪って染めてる?」

「染めてないけど?」

「だよねぇ。染めたら傷みまくって悲惨だもん」

「いや、そんなに傷まないよ」

「そうなの?染料がいいのね」

異世界こっちはそんなに悪いの?

「はぁ…本当に夢みたい。マロウドに…黒髪のマロウドに会えるなんて…」

「黒髪がいいの?」

「うん。黒髪ってマロウドじゃなくても希少なんだ」

「そうなんだ」

「エミは肌も綺麗。スベスベだしいい感じ」

「………」

素直に喜べない。コニーの言ってることが本当だとすると、典型的な日本人ならみんな美男美女になる。

「あ!それよりこれからのことだね。どうする?」

どうするもこうするも全くノープランです。

「答えられるほど異世界こっちのこと知らないんだけど」

「あ、そっか」


コニーはちょっと天然さんのようです。

いろいろショボい異世界。

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