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迷子の…  作者: 如月冬美
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 たまには綺麗な空気でも吸おう!と張り切って出かけたら大事にしているお気に入りの髪飾りを落としました。それを私より先にわんこに拾われました。

「返して。お気に入りなの。大事なの。だから返して」

 ちゃんとお願いしたのにわんこは返してくれませんでした。それどころか咥えて走り出します。

「待って!返して‼︎」

 私はわんこを追いかけました。わんこしか見てませんでした。だから見知らぬ森の中にいることに気付いたのはわんこを見失ってからです。ただいま絶賛迷子中‼︎

「…どうしよう」

 右を見ても左を見ても同じような木ばかり。方角すら判りません!サバイバル経験ゼロ。キャンプの経験数度。ただし最後まで指示待ちの他人任せ。そんな私がこの状況を自力でどうこうできるとは思えない。

 うん、考えるまでもなく無理。

「わんこ、戻ってこないかな?」

 わんこなら町まで帰れそうだし、飼い主さんに会えたら道を教えてもらうとか送ってもらうとかできるだろうし。

「はぁ…」

 疲れた。ちょっと休憩しよ。


 ん〜…風が気持ちいい…………






 ふっと意識が戻ると見知らぬ部屋でした。

「アレ?」

 えーと…確かわんこを追っかけて…わんこを見失って…疲れたから休憩して…………あと記憶ない…寝ちゃった?

 悩んでいるとカチャと小さな音がした。

「?」

 音のした方を見ると頭にうさ耳つけた可愛い子ちゃんと目が合いました。

「やっと起きた。よく寝てたね」

「…オハヨウゴザイマス?」

 とりあえず挨拶してみた。状況は全然わかってないけど。

「あなた面白いね」

「そう?ていうか私、森にいたはずなんだけど」

 何故見知らぬ人の家で寝てたの?

「お兄ちゃんが連れてきたの。「森で倒れてた」って」

 ひゃぁぁ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。今すぐ土下座して謝りたい。で、穴掘って埋まりたい!

「そ、そ、そのお兄さんは?」

 姿が見えませんが。

「お兄ちゃん?帰ったよ」

「帰った?」

「うん。もう夜だし」

「えっ⁈夜?」

「うん。ほら」

 バニーちゃん(うさ耳つけてるのでバニーちゃんと命名しました)がカーテンを開けると窓の外に月。真ん丸に輝いている。

 わー!凄い!満月綺麗〜!…………って違う!連絡しないとやばい!怒られる!スマホ…スマホ…あ、あった!てか圏外ってなに?どんだけイナカなの!

「あ、あの…」

「え?なに?どうしたの?」

「で、電話!電話貸して!連絡しないと怒られる!」

 ここ圏外なんだから家電あるよね?あるでしょ?バニーちゃん、なに不思議そうな顔してるの?

「あ、あの『デンワ』ってなに?」

「電話は電話だよ。ピッポッパの」

「『ぴっぽっぱ』?」

「え?まさかダイヤル?」

「『だいやる』?」

 な、なんか会話がかみ合わない。っていうか全然通じてない?

「………」

「………」

 落ち着け。落ち着け、私。まず、基本的なことから確認しよう。深呼吸を数回して。いざ!

「あの…今さらなんだけどココどこ?」

「?私の家だけど?」

「えーと、そうじゃなくて住所」

「『ジュウショ』?」

 うわぁ!なんかスッゴく変な顔された!

「だから…えーと、えーと…あ、町や村、国の名前!あと番地!」

「?ここはガバの森よ」

「ガバの森?」

「レイモン国のガバの森」

「………」

 レイモン国?そんな国あったっけ?地理、苦手だったんだよね。ちょっと方向音痴だし。って違う違う違う!私、隣の県に遊びに行っただけだよ?電車しか乗ってないし。つーかパスポートも持ってないのに!なんで外国?

「あ、そういえば連絡がどうとか言ってたね。どこに泊まってるの?」

「え?」

「休暇を楽しむために来たんでしょ?レイモンは景色の綺麗な所ばかりだし」

「休暇?」

「え?なに?まさか仕事?」

「へ?仕事?してないよ。うちの学校、バイト禁止だもん」

「………?」

「………?」

「えーと…ごめん。私も今さらなんだけどレイモンにはなんで来たの?」

「んと、わんこ追いかけて?」

「なにそれ?」

「え?いや、だから、わんこ追いかけてたんだけど途中で見失って。気が付いたら森の中だった」

「………」

「………」

 なんか話せば話すほど混乱してくるんだけど何故?

「お腹すいてない?」

 バニーちゃんがあからさまに話を変えました。ここは乗っかるしかないでしょ。

「言われれば…」

「じゃご飯にしよう」

「え?いいの?」

「うん。で、食べ終わったら話そう」

「あ、うん。その方がいいかも」

 親切なバニーちゃんに甘えることにしました。案内されてテーブルに着くとすぐに温かい料理を出してくれます。

「どうぞ」

「わー!美味しそう。いただきます」

 さっそく手を合わせて一口。

「ん〜〜〜!美味しいぃぃ!」

 メチャクチャ美味しい!シチューぽいけどなんて料理だろ?私もこんな美味しい料理作れるようになりたい‼︎

「え⁈本当?美味しい?」

「うん!もうメチャクチャ美味しい‼︎」

「た、沢山作ったからおかわりもあるよ」

「本当?嬉しい!」

 結局、三杯食べました。だって美味しかったんだもん。

「美味しかったぁ。ごちそうさま」

 満腹。満足。あー幸せ。うん、美味しいご飯は偉大だね。


 あれ?私、何か忘れてない?

気長にお付き合いいただけたら幸いです。

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