経験→→こくおうこうほ
町の探索を終わらし、(人間が珍しいのか…凄い数の視線が突き刺さったので、退散してきた)
城(たぶん城?)に戻ってきた。
「あ…真渚聖様…」
「よ、よう…」
ん~…重い…
「「あの…!!」」
あぁぁぁぁ…一気に重く…
「真渚聖様…これからの予定を…」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」
「ヒッ!?…」
あ、ヤバイ…空気を変えようとして叫んだんだけど
―チーン。
みいが固まっていた。
「お、お~い…みいちゃ~ん…?」
手を振るも応答なし……
じゃねぇよ!?本気でヤバイやつだよこれ!?
「みい!?起きろ!!起きろぉぉぉ」
「ふんっニャアアァァァァァァァァァァァァアア!!」
次は俺が固まる番だった。
「━ごめんなさい。大丈夫ですか…?」
みいが心配そうな目で見つめて来る。
「うん…大丈夫…てか、俺が悪いんだし…」
まぁ、お陰で重さは無くなった。
終わりよければ…何とやら!!だな。
「そうだ、予定だよな?」
「あっそうでした。実はですね、急なんですが…
明日に国王候補同士の対決をしようということになりまして…」
「あぁ…そうか、分かっ…た……んへっ!?」
声が裏返ってしまった。
急過ぎるだろ…おぃ
「…あの、ここだけの話なのですが…現・国王が少し体調を崩しているようで…国王を早急に決めたいとのことで…」
「そんなに悪いのか?国王さんは」
「…私はそこまでは…力不足です。」
シュン…
「あ、いや、別に責めてるわけじゃ…」
しかし…耳があるって、分かり易いな…
気分によって下がったり伸びたりするらしい。
可愛いな…
「…?耳が…どうかなされましたか?」
「んあっ!?…な、何でもねぇよ…何でも…ハハ…」
一人でに慌てる俺を不思議な目でみいが見ていた。
―しっかし…対決っつっても、何するんだ?
俺はみいと離れ、寝室向かっていた。
対決の内容は当日まで誰にも話さないのだという。
…人間でも出来るやつだといいんだがな。
でも、ここは『イセカイ』だ。
俺の知っている世界じゃない。
…はぁ~最初に奴隷行き決定かもな…シクシク。
対決は翌日ということなので、今日は早く寝ることにした。
━対決当日。
ドタバタ、ドタバタ…
「―真渚聖さまぁぁぁ!これを着てください!」
「―真渚聖様!お食事の準備が整っておりますので…早急にお願いいたします!」
「ーあぁぁぁ!!真渚聖さまっ髪型が…」
真渚聖様、真渚聖様、真渚聖様、真渚聖様、真渚聖様、真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖様真渚聖さまあぁぁぁぁぁぁぁぁあ
バンっ!!!!
「真渚聖様どうなされ…」
「ちょ、ちょっとストップっっ!!!!」
シ~ン…………
「あのぉ…」
「ちょっと待ってくれ…」
―俺が起きてからずっとこんななのだ。
忙しいったらありゃしない!!
もしかして…これが対決とかいうオチじゃねぇよなぁ…?
とにもかくにも対決前だというのに、俺の体力はすでに限界を突破していた。
「真渚聖様…」
「悪いが…もう少しゆっくりやってくれないか…」
「か、かしこまりました…」
こうして、準備を進めていくことにした。
―ふぅ…お、終わったぁ…
俺は、アクセサリーやマントの付いた、少し複雑な衣装を着ていた。
これは、俺に合わせ特注してくれた、王の衣装なのだという。
こういうの着ると、気持ちが引き締まるな…
「はぁ…でも、こんな服着たことねぇなぁ。」
少し、違和感を感じる。
そして、似合ってないと思う。
服に着せられてる…的な…
「なぁ…みい…本当にこの衣装じゃなきゃダメなのか?」
「はい。次期国王を決める祭典なので…」
みいは、少し顔を赤らめた。
…ん?
「あの…に、に、似合って…ますと思いますです!」
「お、おぉ…ありがと…」
みい…嬉しい言葉なんだが…語尾がスゴイことになってんぞ…
俺にはもったいなさすぎるお言葉を、心の中でツッコンでしまった。
おっとっと…
これは本人の前で絶対に言っちゃいかんな…
…うん。
ま、しょうがない。この衣装しか無いもんな。
準備を済ませた俺たちは会場へ向かうことにした。
「―すげぇな…」
その一言だった。
どんな、金持ちでもここまでは無理だろう。
というぐらい素晴らしい会場だったのだ。
「―こんな所で俺は…」
ヤ、ヤバイ緊張してきたっっ!!
―緊張でガクガクブルブル震えている俺の頭上に突然巨大な影ができた。
「お前か…人間…」
見上げてみると、そこには巨大な2本足で歩く熊がいた。
はぁぁぁぁぁぁぁあ………………
人間、驚きすぎると逆に冷静になるのだろうか…
俺の頭は案外、今の状況にも冷静でいた。
「…どちら様ですか?」
「…俺…ライアン。お前…対戦相手。」
あぁ…俺の対戦相手こいつか…へぇ~~~~~~…
ほぉ~~~~~~~ふぅ~~~~~~~~ん…
俺がフリーズしている間に、ライアンさんは恐ろしい決めゼリフを残していった
「…お前…弱そう…ぶっ潰す。」
そ、そんなセリフ残していくなあぁぁぁぁぁぁあ!?
―はぁ…どーしよ…
もっと勝てる気がしなくなったよぉ…
もう対決は始まっていた。
俺は、最後の方らしいからまだまだなのだが…
全くもって、心の準備というやつが出来ていなかった。
ガンッ!!ブシュッ!!ゴオォォォォォォオ!!!!
俺の前では激しい戦いが勃発している。
やはり、『イセカイ』…
魔法やら何やらが使える奴ばっかだ。
でも、全員が全員、熊さんではなかった。
人間っぽい奴もいた。
だが、やはり力は強い。
そして、戦い慣れしていた。
それに比べて俺は…はぁ…あの時、ポスターなんかに気を取られなかったらよかったのだ。
そう言ってしまうと、自業自得だなぁ…
そんなことを考えていると
「第三ラウンド終了!!勝者……」
おぉ…もう…終わったのか…
意外に早いぞ…勝負つくの…
「―次の対戦者、前へ。」
…あ。
初めて勝負を見る気になった。
俺と同じぐらいの年齢の男子がいたのだ。
そりゃ、人間ではないが…
ダチになれたらな…
今までもみいがいたのだが、やはり少々、心細かった。
まぁ、男のプライドが…―心細いなんて誰にも言わないが。
「おお…すげぇ…」
俺の興味を惹いた男子は(仮にA君)俺よりガタイが小さい感じ。
(一応俺だってスポーツはしていたので、筋肉はある…と思う…のだが…)
そんな体で、倍以上の相手と、A君は戦っていた。
まぁ、俺じゃ無理だわな…
A君はその小さな体を利用し、素早い剣術で相手を圧倒していた。
「ダチになってくれなんて、間違っても言えねぇな…こりや」
「―第四ラウンド終了!!勝者、ゼル・ナイト!!」
ゼル・ナイト…か
凄かったな。
俺も…あんなふうに…
『ドクンッ』
『力が…欲しいか…』
「―!?」
何だ?
誰か何か言ったか…?
周りを見渡したが、俺の周りには誰もいなかった。
空…耳か…
―冷静に考えていれば、
『イセカイ』に来たぐらいなんだ。
誰もいないところから声がするなんて別に不思議じゃないんじゃないか?
と思っていただろう。
この時、もしあの謎の声に返事をしていれば、
どうなっていたのだろうか。
ま、今頃考えても意味はないけどな。