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エンディング

 封印の洞窟は、封印というだけあって、かなりの封印がなされているらしい。

 まあ、当然、その通りなのだが。

 分からなかったので、これまた村長に聞いてみると、封印の洞窟の入り口を開けるためには、すべてのドラゴンをたおさなければいけないらしい。

 結局は、倒すことになるのかよ、と思いながら、右手、左手とゆうしゃソードをもってすべてのドラゴンをばっさばっさ倒していった。

 最後の、北の山にいるドラゴンをたおした瞬間、その山の向こう側が光った。

 思わず目をつぶり、再びあけるとそこには天高くそびえる塔が出現していた。

「封印の洞窟の封印をとくと魔王が復活する仕掛けになっていたのだった」

 よくわからない言葉がふと浮かび上がってきた。

どんな仕掛けだよ、とつっこみつつもとりあえずは封印の洞窟内に入った。

すると、たくさんのひかりのつぶが洞窟内を満たしていき、そのすべてが俺の体の中へと入っていった。

これで、多分呪文は手に入れたはずだ、と思う。

それでも結局”ジャックなんたらかんたら”のなんたらかんたらの部分は分からなかったのだけど。

とりあえず、魔王も復活してしまったみたいで、どうすればいいのかを村長に聞くために村へと戻った。


 だが、村にはなにもなかった。

 比喩的表現ではなく、村そのものが存在を消してしまったのようなかんじで、その部分には空白の部分があるだけだった。

 その場所に足を踏み入れようとすると、静電気のような衝撃が体全体に広がって動けなくなってしまった。

 急いで、足をその場所からだし、周りを見渡す。

 一瞬、俺は、自分の目を疑った。

 この世界には、ついさっき出現した天高くそびえる塔以外は全く存在していなかった。

 今までいた、人々もモンスターも山もフィールドも何もかもがなくなってしまっていて、それでそこにはただ塔へと向かう道がただ1本しか存在していなかった。

 まるで塔が俺に手招きをして、さも訪れてほしいと言うように、その塔はただそこにあった。

 多分、あそこには魔王がいる。

 なぜか、感情も昂ぶってきた。

 これも勇者補正なのかどうなのか分からないが、今まで、この世界の人を大事だと思ったこともないし、たくさん手にかけてきた。

 そもそもゲーム的なこの世界の構造が悪いのか、記憶を失う前の俺自身が悪いのかは全くもってわからないけれど、前がどうだろうと、未来がどうなろうと、いまのおれはこころの奥底にまで勇者補正をかけられたゆうしゃであることをふと自覚した。

 助けてと言われれば、どんな形であろうと助けるし、そこに魔王がいるのならば、それをたおすのは俺の役目だろう。

 深く意気込み、俺は剣を両手に持って、塔へと続く道をかけた。

 塔の入り口を思いっきり壊して、そのまま最上階を目指す。

 モンスターなどいない。

 俺の目には、今駆け上がっている階段しか目に入らないのだ。

 しばらく、叫びながらそのらせん状の階段をかけていると、ふとその段差が途切れ、大きな鉄製の扉が出現した。

 きっと、この奥に魔王はいる。

 そう確信した。

 だから、今までで一番重い気持ちで、そして背中にすべてのものを背負ったつもりで、その扉を両手で押しあけた。






 光はなかった。

 ただ漆黒の闇があった。

 周りの景色が白一色なのに対して、そこは黒一色だった。

「よく来たな、ゆうしゃよ」

 当然だ。

 モンスターも何も、まったくいないのだから。

「俺は魔王だ」

「そうか」

 なら、倒すしかないな。

 ついでに、この世界がどうなってしまったのかを説明してくれるとありがたいんだけども。

「お前はこの世界がなぜこうなってしまったか、知りたくはないか?」

「知りたいな」

「そうか」

「そうだ」

「なら話そう。お前は、そもそもこの世界の住人ではない」

 なんとなく、そんな気はしていたな。

「お前は、このゲームをプレイする側の人間だったのだ」

 まさかの展開だ。

「だが、お前はこのゲームの初期設定に腹を立て、奇跡的にも叫んだのだ。”ジャック、ジョン、ジャック”と」

 魔王の親切な説明によって、俺はだんだんと記憶を取り戻していった。

 そういえばそうだった。

 全く売れないゲームを買って、皆に布教しようと意気込んで俺はこのゲームをかった。

 だが、このゲームの主人公に着けられる名前は決まっていたのだ。

 それがジャックとジョンだった。

 どちらも似たような名前でまぎらわしくありきたりだった。

 それで俺はきれて叫んだのだ。

”ジャック、ジョン、ジャック”と。

 ちなみにジャックを2回言ったのは、実はジャックという名前の付けかたには2種類あって、少し感動したのだが、それが実はジャックのじゃの発音をじぇあというかじゃというかの違いだけだったので、そういうわけだ。

「お前の叫んだ言葉は、このゲームの中で見つけていく魔王を倒すためのキーワードだったのだ。おそらく、そこでお前の精神とこのゲームとがシンクロして、お前がこのゲームにやってきて、そしてさまざまな設定を変えることで、このゲームの出来を無理やりにでも面白くなおそうとしたのだ。無意識的にな」

「そうだったのか!」

 俺は歯ぎしりをした。

 まさか、そんな奇跡が起こっていたなんて。

 それにしても、まさか魔王を倒すための呪文のキーワードが、主人公につけられる名前なのはあまりにも安直過ぎではないのか。

 ちょっと、このゲームを作った人バカすぎるだろ。

 それを選んで買った俺も馬鹿なのだろうけど。

「それで、俺はどうしたら元の世界に戻れる?」

「まあ、落ち着け。それで、今この世界がこうなってしまったわけだが、それは……」

 それは……、なんだ。

「ゲームの充電が切れたのだ」

 沈黙だった。

 そこにはただの沈黙しかなかった。

「このゲームのハードは小型ゲーム機で単三の電池2本で動いている。今、お前がこの世界に来てから、この世界では2年が過ぎている。現実世界では数十分にもみたないだろうが、もともと使い古しの電池を使っていたのだろう。お前が封印の洞窟へ入って、ちょっとカラフルな感じになった途端、電池が切れた。だから、おれもこんな姿になってしまったのだ。本来ならば、ライオンのような顔に立派な角が生えていて、その牙は鋭く、身体は大きく、目は不気味に緑色に光っていたはずだ。手には大きな斧を持っていて、とても格好いいはずだったのだが、残念だ」

……。

……。

「なんでだよっ!」

「なんでって言われても、困る」

「困るじゃねえよ!じゃあ、一体どうすれば俺はこの世界から出られるんだよ」

怒りに、憤りを重ねたようにただどなりちらしていた。

そして、不意に叫んだ。

「ジャック!」

「ジョン!」

「ジャック!」


 すると、なにやら神々しい光が俺の体から炸裂して、一直線に魔王の元へ。

「ちょっ、まっ!おまっ、そりゃないよ!俺以上にこのゲームのことを知っている奴はいないんだぞ!ただでさえ少ない帰還の可能性を、自らの手で潰すというのか!」

 そう言われたが、もう俺はやめるつもりはない、つーかやめる方法を知らない。だって、

「俺はこの世界を書き換えることができるんだろ?だったらこの世界のことを一番よく知っているのは、お前じゃなくて俺のはずだ。主人公はジョンでもジャックでもなくて、勇者きしもとだ。登場人物も全員和名。しかも魔王はごつい感じじゃなくて、どちらかというと見た目弱そうな感じ。……これで本当にゲームが面白くなったと言えるか?いや、言えない。だから、まだ、俺の使命は終わっていない。このゲームを面白くして、他人に進められるレベルになるまでは、俺は帰れないんだよ……多分。俺が今になっても現実世界に帰れないのは、ただゲームが面白くなってないから、という一つの理由だけなんだよ……多分。大体、精神がゲームの中に混ざっちまったんだろ?精神は電池で動くものなのか?いや違う。だから、電池の残量関係なしに、きっと満足すれば帰れるはずなんだよ……多分!だから、まずはお前をたおしてこの1週目のプレイを終える!で、2週目はもっと面白くなるように真面目にやる!そう決めた!」


……魔王は消え行きながら思った。どうせこいつはいつまでたってもこのレベルの改変しかできずにループし続けて、俺は殺され続けるんだろうな~と。無限ループって怖くね?




「……という夢を見たんだ。どう思う?戦士たなかと武器職人の末裔たにぐちよ」

「他人の夢の話って、聞いてても面白くないものだというのがよくわかった」

「面白くないというか、不愉快だった」


 そうして、この物語は終わった。

 だけど、これはほんの大きな物語の序章でしかなかったのだ。

 この日、俺が夢見たことは、のちに現実のものとなって、そして……


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