どらごんとそんちょー
なんなのだろう、この状況は。
思考は活発に働いているけれど、からだが動かない。
「たいへんだぁー。にしのやまにいるどらごんがこのむらをなぜだかしらないがおそってきたー」
村人らしき人がそこらじゅうを走り回りその言葉を頭の上に浮かべている。
「このむらはにしのやまとひがしのやまときたのやまとみなみのやまにかこまれていて、それぞれにどらごんがいったいずついるんだ」
頼んでもいないのに、その言葉がしぜんと目に入ってしまう。
なんだよ、その壮大な設定は。
と文句を言っていてもしょうがない。
とりあえず、人は襲っていないみたいだし、どうにかどらごんの目に見つからないように村長の所に行くか。
「たいへんだぁー。そんちょーが、そんちょーが、どらごんにくわえられたぞー」
村人曰く、そうらしい。
「たいへんだぁー。どらごんが、どらごんが、そんちょーをくわえたままとびたとうとしているー!」
なるほど、たしかに今、ドラゴンは口から火を吐くのをやめて、その背中についている、見事としか言いようのない翼をはばたかせて飛び上がろうとしている。
てか、それはやばいだろう!
俺は村長に話を聞かなくちゃいけなくて、それで村長がドラゴンにくわえられたままどこかにいってしまったら、俺は村長から話を聞くことができなくなってしまう。
「そんちょー!!!!!!!!!!!」
「いかないで、そんちょー!!!!」
「そんちょー、そんちょーがいなくなったら!!!!!」
「そんちょー!!!」
「そんちょー、そんちょー、そんちょー!!!!!!!!!!!!!」
どんだけ、人望あるんだよ村長。
驚きだよ本当に。
「わしのことは、わしのことは……」
これは、今度は村長の言葉か?
「わしは、おそらくこのどらごんにつれさられてでんせつのゆうしゃがあらわれるまでどらごんにつかまっているだろう。どらごんのすみかはおそらくにしのやまのさんちょうにあるどうくつだ。にしのやまのどらごんにはでんせつのゆうしゃのみがつかえるゆうしゃそーどでしかたおすことができない。おそらく、でんせつのゆうしゃとなるものははじめやどやできおくをうしなっているじょうたいでめざめているはずだ。もし、そのでんせつのゆうしゃがあらわれたらまずはひがしのやまへいって、ゆうしゃそーどをてにいれるのだ。ゆうしゃそーどは、ひがしのやまのどらごんのせなかにささっておる」
ながいせつめいありがとうございました、としかもういいようがない。
なんだよ、その説明は。
しかも、ありがちなひとつのことを達成するのにいくつものことを成し遂げなければいけないと言うめんどくささ。
一瞬、もう宿に戻って一生寝ていようかなとも思った。
だけども、それは、結局、村長から俺のことについていろいろと話を聞かなくてはいけない事態になりそうなので、とりあえずは村長が連れ去られるのを見てから、村長を助けに行くしかない。
「さらばじゃーーーーー!!!!!!」
そう、村長は最後に叫んだ。




