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ぼうけんのはじまり

「ジャック!」と俺は叫んだ。

「ジョン!」と立て続けに俺は友であるそいつの名前も叫んだ。

「ジャック!」

俺がその言葉を口にするのと同時に、緩やかな風が頬をなで、赤い夕陽が突如として出現した。

「俺は……」

その途端、確かにすべてを失った。

俺は、その場所で、今までに何が起きたのかも知らずに立ちすくんでいた。

本当に、何も覚えていないのだから、その言葉はその通りなんだろう。

その3単語を連続して叫んだその時から、俺は今までを記憶を失った。



……何か声が聞こえる気がする。だけど、体が重くて動かない。目を開けることがためらわれるほど体は疲労しているが、やけに頭だけは明瞭に働き、今何が起きているか、話しかけてきた人は誰なのか、そして今ここはどこかを自然と考えていく。

ここは……ベットの上らしい。しかし、なぜこんなところにいるのかはわからない。それを理解するには、おそらく何が起こったかを先に考えなければならないのだろうが、過去の記憶について考えようとすると、頭がズキズキと痛む。

だから、まずは現状理解に努めることとする。とりあえず自分はベッドの上にいて、誰かに話しかけられているところらしい。…… ならば、その誰に話しかけられているかを知ることが先決のイベントフラグ処理だろう。

ん?フラグ?使ったこともない言葉だったが、不思議としっくりくる。意味は「イベント進行に関わるしなければならない行動」ということだろう。……ちょっと待て。そもそもイベント進行ってなんなんだよ?つーか何で知りもしない言葉が自然と分かるんだろう?

……考えても仕方なさそうだ。まずは、目を開けることから始める事としよう。


「おはよう ございます。さくやは すっきり ねむれましたか?」

目を開けて最初に飛び込んできたのは、人のよさそうな、割烹着を着たおばさんだった。それ自体は、何もおかしいことはない。しかし、

「おはよう ございます。さくやは すっきり、ねむれましたか?」

……異常なのはおばさんが同じ言葉を、機械的に繰り返していることだ。しかも、異常なのはそれだけにとどまらない。なぜかおばさんの上に表示されている下向きの三角形みたいなマークや、頭の中になぜか浮かんでいる黒いウィンドウボックス。そのウィンドウにはひらがなでおばさんの言ったことのログが記録されていた。しかもその上、

「おはよう ございます。さくやは すっきり、ねむれましたか?」

あー、もううるさいな!今は現状理解が先!とりあえず無視してそのほかの異常を言ってみよう。たとえば、他の宿泊者たちも、しばらく観察していると、全員が全員一定の歩幅、リズムで歩いており、同じルートを歩き続けるか、ただ立ち止まっているか……といった感じで、動きが型にはまっていた。

「おはよう ございます。さくやは すっきり、ねむれましたか?」

……そろそろこのおばさんの問いにも答えてあげようか。ウィンドウボックス埋まっちゃいそうだし。ということで、適当に話を返すことにした。

「ええ。ぐっすり ねむれました。ところで、あなたは?」

自分の言ったこともウィンドウに全てひらがなでログされた。いったいこのウィンドウはなんなのだろうか?そう考えていると、おばさんからの返答が来た。

「そうですか。それはよかった。 わたしは やどやの おかみです。きのう あなたが いしきをうしなって かつきごまれてきたので しんぱいしていたのですよ。 あなたの なまえは?」

俺?俺の名前って……?そう考えたとき、新たなウィンドウが開き、そこには、「なまえを にゅうりょく してください」と書いてあり、五十音表と、濁点含めて4文字しか入らない入力ボックスがあった。

ここで名前を決めなければならないのか。記憶が戻る、とか普通は考えるはずなのだろうけど、不思議なことに俺は自分の名前を早く入れなきゃ、という意識が芽生えてきた。そこで仕方なく"きしもと"と入力した。

すると、なぜか口が動き始め、言葉が発せられた

「おれのなまえは きしもと。ひとばん とめてくれて どうもありがとう。 とつぜんだが、きのうまでの きおくが まったくない。なにがあったか しらないか?」

なるほど。これがフラグ処理か。こういう重要な会話は自由がないのね。適当に自己解決していると、おばさんがまた話し始める。

「さあ? わたしは ただ あなたを つれてきた そんちょうに たのまれて とめただけ ですから」

そうなのか……。ならば、その村長とやらに会えば何かわかるはずだな。自分でもよくわからないほどの順応能力を発揮しながら、とりあえず次のイベント……もとい、自分がやるべきことが決まったようだ。

「ありがとう。 では、おれは そんちょうに あってみることに するよ。」

 そう言うと、おばさんはお代は村長に先にもらってある、と言い暖かく俺の出立を見送ってくれた。

 ということで、俺は村長の所へ向かう。

 そうして宿の扉を出た瞬間に、そこにはドラゴンが火を吐いて、この村を巡回していた。


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