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彼はスター  作者: 夢遥
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彼はスター

智樹に頼まれて、ドラマの撮影になった鈴音。また、予想もつかない展開が……!?

続編になります。

 いよいよ、学校での撮影の日がやってきた。


「あはは~!鈴音、あがり症だもんな~。大丈夫か?」

 教室で、台本を見ながらセリフの練習をしていると、智樹と杏ちゃんと颯人役の森村卓君が教室に入ってきた。


 卓君は、智樹がモデルデビューと同じ時期に俳優デビューした。真部先輩と同じ高2の男の子。


「鈴音ちゃん。今日はよろしく!」

 卓君が、私に手を差し出した。

「よ、よろしくお願いします!」

 私は、慌てて卓君と握手を交わした。

「じゃあ、私達はもうすぐ出番だから行くね。行こう!智樹君」

 杏ちゃんは、智樹の腕のを掴んだ。

「あ、うん……。じゃあな、鈴音。落ち着いてやれば大丈夫だから」

「うん……。ありがとう」

 私は、ぎこちなく笑い返した。


「初めまして。俺、森村卓。自己紹介しなくても、知ってるかな~?」

 2人がいなくなった後、卓君は自己紹介を始めた。

「はい。ドラマとかで、よく観かけるし」


 智樹に負けないくらい、最近、卓君の人気が出てきている。

「鈴音ちゃんって、成瀬の幼なじみなんだって?」

 卓君が聞いてきた。

「はい」

 私はコクリと頷いた。

「そうなんだ~。だから、幼なじみとしての気持ちが

わかる君を一般人の中から抜擢したのか~」

「……」

 幼なじみとしてー。その言葉に、私の胸がズキッと締め付けられる。

「あとは、恋する気持ちだけど、成瀬に恋してればドラマにピッタリなんだけど、成瀬は杏とデキてるしな。想いを寄せてても、失恋確実だろうけど」

 私の気持ちを知らない卓君は、ズバッと言ってのけた。


 やっぱり、告白しても無理かな……。

ううん、せっかく私への気持ちを抑えて真部先輩が背中を押してくれたんだもん。この撮影が終わったら、告白する。


 私がしみりしていると、

「山城」

 真部先輩が教室に入って来た。

「真部先輩!?」

 突然、先輩が入って来たので、びっくり。

「どうして、先輩がここに?」

「僕も、エキストラで出るんだ」

 先輩は恥ずかしそうに、微笑んだ。


 先輩も出るんだ……。かっこいいから、エキストラでも目立ちそう。


「へぇ~。君、かっこいいね。一般人してるのはもったいないな~。芸能界には興味ない?」

 卓君がじ~っと先輩を見つめた。

「芸能界には興味はあるけど……。カメラマン志望なので」

「それは、残念だな~。カメラマン志望か~」

 卓君が、残念そうな顔をさせた。


「卓さ~ん!次、スタンバイお願いします」

 と、スタッフさんが呼びに来た。

「俺達の番だ!鈴音ちゃん、行こう」

 卓君が、私を促した。

「じゃあ、先輩。また、あとで」

「山城!」

 私の腕を掴むと、手に何か渡した。


 何だろう?


 私の手の中には、小さなメモがあった。


ー相手を成瀬だと思って、頑張れ!


「……!!」

 先輩の手紙を読んで、私はキュンとした。


 こんなに想ってくれているのに。どうして、私の好きな人は、先輩じゃないんだろうー。


「ふ~ん。どうやら、彼は鈴音ちゃんのことが好きみたいだね」

 卓君が、顔をニヤニヤさせた。

「そ、そうみたい~」

 私は、とぼけて見せた。


「卓君、お願いしま~す。山城さんは、凪が廊下の窓から校庭にいる颯人を見つめてる感じでお願いします」

 そう言われて、私は校舎に入って行くと廊下の窓から外を覗いた。


 放課後、部活でサッカーの試合をしている拓巳と颯人。それを、凪が颯人を見つめている場面と千紗役の杏ちゃんがマネージャー役で、拓巳を支える場面を撮る。


 あ!先輩は友達と帰る役みたいで、サッカーをしているグランドの横を歩いている。


 智樹はちょうど、シュートを決めたところみたいで、野次馬役の女子達がキャーキャー騒いでいる。


 智樹は小さい頃から、サッカーが上手だったから、女の子に人気があったことを思い出す。


 何だか、切なくなってきた。

「はい!OKで~す」

 智樹が一発で、シュートを決めたお陰で、すぐに合図がかかった。


「山城さ~ん!次の撮影があるから教室で待機しててくれるかな?」

 下でスタッフさんが、叫んでいる。

「わかりました~!」

 私は、窓を開けると大声で叫んだ。



 次は、屋上で智樹と練習した場面だ。


 言われた通り、教室で待っていると智樹が入って来た。

「鈴音。もう一度、セリフの練習しようぜ」

「う、うん」

 私は、台本を捲ると智樹と練習を始めた。


 2、3回練習すると、時間になってしまった。

「鈴音。今の調子でやれば、大丈夫だから」

 智樹が、私の頭をポンと叩いた。


 智樹にそう言われたものの、少ないセリフなのに、緊張していたせいか、NGを5回も出してやっとOKをもらった。


「はあ~」

 やっと撮影が終わって教室で独り私は、大きな溜め息をついた。

「鈴音。頑張ったな」

 智樹が、私の頭をクシャクシャと撫でた。

「智樹、ごめん。何回も、撮りなおしになっちゃって……」

「気にするなよ。最初は、俺なんか10回も失敗して、スタッフに迷惑かけたし」

 智樹は、苦笑いをした。

「え!智樹でも、そんなに失敗することあるんだ~」

「恥ずかしいから、他の人には内緒だからな~!」

 智樹の話を聞いて、少し落ち着いてきた。


 智樹とこんなふうに話すなんて、久し振りだな~。


「智樹く~ん。そろそろ移動するって!」

 杏ちゃんが智樹を迎えに来た。

「わかった。鈴音、明日も撮影よろしくな」

 智樹が杏ちゃんと教室から出て行こうとした。

「智樹、待って!家にはいつ帰ってくるの?」 もう少し、智樹と一緒にいたくて呼び止めた。

「まだ、事務所の許可がおりないから、もう少し時間がかかると思う」

「そうなんだ……」

「俺の方が一段落したら、もうすぐ帰れると思う。その時は、前にも言ったけど、鈴音に話があるんだ」

 智樹が、真顔で私に言った。

「智樹君、早く行こう。じゃあね、鈴音ちゃん~!」

 杏ちゃんは、智樹の腕に自分の腕を絡ませた。


 チクン……!


 2人の姿を見ると、胸が痛む。

 何日か撮影が続いて、明日で最終日。



「鈴音。ラスト急に変わったみたいだから読んでおいてだって」

 いつものように教室で待機していると、卓君が私に台本を持ってきた。


 卓君と話てみて、言葉にトゲがあって強引な所もあるけど、最初の頃より気さくに話せるようになって今では、呼び捨てで呼ばれてる。

「え!急に言われても……」

「あはは~!最後の頃も鈴音は、ほとんどセリフがないから、鈴音の頭でも大丈夫だって」

「それ、どうゆう意味よ!」

 私は、ポカポカと卓君の背中を叩く。

「イタタ……。ごめん!俺達の方はあまり、変わらないけど。セリフも演技も大きく変わるのは、成瀬達の方だし」

 卓君が、台本をペラペラと捲る。


 よく見ると、ラストに智樹と杏ちゃんのキスシーンに変わっていた。


 私は、台本を手に持ったまま、固まってしまった。


「どうした?鈴音」

 卓君が、私の顔を覗き込んだ。

「き、キスシーンあるんだなと思って……」

「それも、仕事のうちだからね。そりゃあ、あるさ。俺だって何回やったか~」

「……」


 卓君もしたのかー。


「でも、本当にキスする訳じゃないから。キスしているように、カメラマンが角度を

変えてー」

「……」

 智樹と杏ちゃんが顔を近づけると思うと、ショックもいいとこだった。


 虫がよすぎるかな?私だって、先輩とキスしたのにー。


「前から、思ってたんだけどさ。鈴音って、成瀬のこと好きなのか?」

「え……」

「やっぱりな。成瀬を見つめている鈴音、幼なじみとかじゃなくて何処か切ない感じだったから」

 卓君は、やっぱりと言う顔をさせた。

「あ、あの、卓君。私ね、この撮影が終わったら告白しようって思ってるの……。だから、智樹には言わないで……」

 必死に卓君にお願いした。

「俺、言う気はないけど。それに告白しても、相手が杏じゃな~」

「な、何よ。何が言いたいわけ?」

 私はムッとさせた。

「告白しないで、俺と付き合っちゃうってのはどうかな?」

「え!やだ~。冗談やめてよぉ~」

 私が苦笑いした瞬間、卓君が私を机の上に押し倒した。

「……!!」

 びっくりして、起き上がろうとした。

 でも、卓君の押さえつける力が強くてびくともしない。

「俺、本気なんだけど。成瀬なんかやめて、俺にしろよ!」  卓君が、私にキスをしようとした。

「嫌ッ!」

 私は、顔を横に向けた。


 でも、効果なし。卓君が、私の首筋にキスをした。

「……っ!」

 私は、声にならない声で、慌てて拒んだ。


 やだ!こうゆうことは、好きな人としたかったのに……。


 私の瞳から涙が溢れてきた。

「鈴音ー」

 卓君は、私の姿を見てハッとさせた。


 卓君が力を緩めたすきに、私は起き上がると教室を飛び出した。


「鈴音!」

 卓君が呼ぶのも、聞かずに廊下を駆け抜けると、屋上に行く階段を駆け上がった。

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