彼はスター
智樹のインタビューで、「杏ちゃんを守る」と、言葉を聞いてショックを受けた鈴音だったけど、真部先輩の励ましもあって、なんとか告白をしようと決意した鈴音。でも、新たなハプニングが……!?
『悪質な悪戯するようなことがあったら、彼女を守らないといけないなと思いました』
智樹が話したことは、すぐにテレビや雑誌にとり上げられた。
私といったら学校にも行く気になれず、休みがちになっていた。
「鈴音~。若菜ちゃん来てくれたわよ」
お母さんが、ドアを開けると、若菜が入って来た。
「鈴音。授業中のノート取ってきたよ~」
「ありがとう~。若菜」
ノートを受け取ると、お礼を言った。
「鈴音~。誰よ、あの子~?」 お母さんが、そわそわしている。
「……?」
私は、不思議そうな顔をした。
「ごめん、鈴音~。真部先輩が鈴音のことが心配だから、様子を見に来たいって言うから連れて来ちゃったの……。先輩、入ってもいいですよ」
若菜が、呼ぶと真部先輩が入って来た。
「オッス!山城、具合どうだ?」
「大丈夫です……」
「なら、よかった」
先輩は、ホッとさせた。
「わざわざ、心配して来てくれてごめんなさいね~。本当、智樹君に負けないくらい、イケメンね~」
お母さんがウキウキしながら、はしゃいでいる。
「もう!お母さん~。いいから、何か持ってきてよ」
お母さんのミーハーに、こっちまで恥ずかしくなる。
「はいはい」
私に言われて、渋々出て行った。
「若菜。学校の方はどう?」
「みんな、成瀬君の話題で持ちきりになってる……」
「そうなんだ……」
「あ、ほら。そろそろ、話題も落ち着くだろうし、明日は学校に来てみたら?」
若菜にそう言われたけど、まだ行く気にはなれない。
「そうだ!元気が出るように。山城に、プレゼントがあるんだった」
急に、真部先輩が1枚の写真をバックから取り出した。
写真を見ると、虹が写っていた。
「わぁ~。綺麗!」
1つ1つの色が、鮮明に写り出されていた。
「じゃあ、さっそく額に入れておきますね」
机の引き出しから額を取ろうと、ベットから下りて立ち上がろうとした時、布団の端に足を引っかけて、倒れそうになった。
「危ない!」
先輩が慌てて、私を受けとめようとしてくれたのに、思いっきり私達はひっくり返ってしまった。
イタタ……。ん?唇の辺りが温かい。
「……!!」
私、先輩とキスしてる!
「ご、ごめん!」
先輩は慌てて、私から離れた。
「せ、先輩。謝らないで。い、今のは事故だし。先輩は私を助けようとしてくれたわけだし……」
それに、若菜に見られるなんて恥ずかしい~。
「本当にごめん」
先輩は、すまなさそうな顔をした。
この間、またキスをしようとした人には思えない。
「ふふふ……。とりあえず、事故と言うことで。」
若菜が、ニヤニヤしながら言った。
なんか、誤解してない?本当に事故だったのに~。
翌朝、まだ学校に行く気分じゃなくて、部屋で、もたもたしていると、お母さんが呼びにきた。
「鈴音~!昨日の男の子が、お迎えに来たわよ」
昨日の男の子って、まさか真部先輩!?
窓の外を見てみると、先輩が玄関の前で立っているのが見えた。
私は着替えると、慌てて下に降りて行った。
「先輩、どうしたの?」
「学校、一緒に行こうと思って迎えに来たんだ」
ちょっと恥ずかしそうに、頭をかいた。
「あら~!よかったじゃないの。一緒に行ってらっしゃい」
ウキウキしながらお母さんは、私の背中を押した。
渋々、私は先輩の後をついて行く。
「山城のお母さんって。いつも、テンション高いのか?」
先輩が、興味津々に聞いてきた。
「うちのお母さんミーハーで。先輩が、かっこいいからかな~。智樹がうちに来た時も、テンション高くなるし」
そう言えば、智樹どうしてるかな……?
まだ、マンションの方にいるみたいだし。
智樹のことを想い出すと、胸が苦しくなる。
「まだ、時間あるし。寄り道していこうか?」
先輩が私の手を掴んだ。
「先輩。待ってください!どこに行くつもりですか!?」
私の声も無視したまま、先輩は引っ張って行く。
しばらく歩いて行くと、智樹のマンションにたどり着いた。
「先輩……。どうして智樹の所に?」
私は、呆然と立ち尽くす。
「ずっと、考えていたんだけどさ。山城が、成瀬に告白すれば、結果がどうあれ、気持ちがすっきりするんじゃないかなってー」
「……」
どうすればいいかわからずにいた。
「いつもの山城に戻ってほしいし、駄目でもその後は、僕が山城のこと……、受けとめるから」
そう言って、私の背中を押した。
いつも、先輩は私を優しく包んでくれて。何度、心が救われたかわからない。
それに、私のこと好きだって言ってくれた先輩が、どんな気持ちで私の背中を押してくれているのか痛いほどわかる。
先輩の気持ちを無駄にしないように、智樹の所に行こう!
「私、行ってきます」
決心すると、私はマンションの中に入って行った。
部屋の前まで行くと、少しためらいながらもインターホンを押した。
ピンポ~ン!
でも、返事はない。
何度か呼び出したけど、やっぱり返事はなかった。
留守かー。学校?それとも、仕事に行ったのかな?
最近、智樹は忙しくてメールも来ないからなー。
私は仕方なくマンションの外へ出た。
「山城、どうだった?」
外では、先輩が待っていた。「いませんでしたー」
「まだ、時間が早いから大丈夫だと思ったけど。駄目だったか~」
先輩は溜め息をつく。
「せっかく、先輩が気を使ってくれたのに……」
「ま、いないなら。仕方ないよ」
私と先輩は、このまま学校に行くことにした。
学校まで行くと、昇降口の所で智樹の噂をしている子達が2、3人いた。
「私、朝から見ちゃった~。成瀬君が中澤杏を学校まで送っているの」
「え~!付き合ってるからって朝から、そんなことする~?」
「でも、ちょっと羨ましいかも~。私も成瀬君みたいな彼氏が欲しい~」
「だよね~」
みんなで一斉に言うと、教室の方に向かって歩いて行った。
「……」
だから、さっきマンションに行っても、いなかったのか……。
「山城、大丈夫か?」
先輩も、さっきの子達の話が聞こえたのか、心配そうに私の所にやって来た。
「部屋にいなかったのは、杏ちゃんと一緒にいたからだったのか~」
これ以上、先輩に心配させたくなくて、私は明るく言ってのけた。
「山城……」
「わ、私。教室に行きますね!」
その場から、逃げるように身体を翻した。
「おはよ~、鈴音。もう大丈夫なの?」
教室に入ると、若菜がホッとした顔で私に声をかけた。
「う、うん……。ごめんね、心配かけて」
若菜に言った時、窓際にいた子達が、窓を開けると、
「おはよ~!成瀬君~」
ブンブン手を振った。
「今日は、成瀬君休みじゃないんだー。鈴音が休みの間は休みだったみたいだよ」
若菜が、外を覗きながら言う。
「そうなんだ……」
智樹がみんなに囲まれながら、こっちに手を振っているのが見えた。
今は、智樹の顔を見るのも辛い。同じクラスじゃないのが、せめてもの救いだと思っていたのに、智樹が教室に来たので、みんな大騒ぎになっていた。
やっぱり、話題は杏ちゃんとのことだった。
「成瀬君~。朝、杏ちゃんのこと学校まで送って行ったって本当?」
さっき、昇降口の所で話していた子達の話が、もう広まっている。
「ちょっと、事情があってね」
智樹がさらりと、言葉を返した。
何だろう、事情って……?
少し気になってしまう。
「成瀬君、鈴音に用があって来たんじゃないの?行ってきたら」
若菜が、私の隣で言った。
「う、うん……」
私は、頷くと智樹に近づいて行った。
「鈴音!」
智樹は、私に気がついて、声をかけたものだから、取り巻きの子達がジロッと私を見た。
杏ちゃんのことがあっても、智樹の人気は落ちないみたいだ。
智樹は、私の腕を掴むと、誰もいない視聴覚室に連れて行った。
「ど、どうしたの?智樹」
久し振りに智樹の顔を見たら、ドキドキしてしまう。
「今、撮影しているドラマで、うちの学校でも撮影場所に使うことになったんだ」
「そうなんだ~」
ますます、学校中、大騒ぎになりそう。
「それで、拓巳の友達の颯人の幼なじみ役の子を捜していて、一般人でも募集してたんだけど、なかなかいなくてさ。鈴音、やってみないか?」
突然、智樹が言い出した。
「え!私、無理だよ」
「ほとんど、セリフは少なくないし、エキストラみたいなものだからさ。それに、清水や他の人達もエキストラで出てもらうことになってるから」
智樹が懸命に言うものだから、つい引き受けてしまった。
「サンキュー、鈴音。さっそくだけど、今日の昼休み練習するから、屋上に来てくれないか?」
智樹はホッとさせながら言った。
「う、うん……」
私は頷いて見せたけど、自信がない。
私が演じる凪と言う女の子が、拓巳の友達の幼なじみの颯人に片思い中と言う設定だ。
さっそく昼休み、セリフの練習を始める。
いつも、颯人を見つめている凪を見て、拓巳はピーンと感ざるものがあって聞いてみる場面からだった。
「もしかして、凪ちゃんって颯人のことが好きなんじゃ?」
私はコクリと頷いた。
「やっぱり!そうなんじゃないかなと、思ってたんだ」
「なかなか、告白できなくて……」
幼なじみに、なかなか告白できないなんて私みたいだ……。
「じゃあ、それとなく颯人に聞いてあげようか?」
「本当に?ありがとう」
私が言った後、智樹が台本を閉じた。
「うまくできてるし、これならいけそうだな」
と、智樹が微笑んだ。
「本当?よかった~」
朝、告白しに行ったのに、どうしてセリフの練習をしているんだろう私ー。
「……あのね、智樹。話があるの」
私が、告白しようとした時だった。
「いたいた~、智樹!」 智樹と同じクラスの子達が、屋上のドアを開けて入って来た。
何で、告白しようとする時にタイミングが悪いのよ~!
「もう、予鈴なるよ!行こうよ」
女子達に連れて行かれそうになる。
「鈴音、話って?」
智樹が慌てて聞いてきた。
「あ、ううん。後でいい……」
こんな状態じゃ、告白もできやしない。
「じゃあ。俺、そろそろ行くから」
少し気にしながら智樹が、行ってしまった。
私は気が抜けたように、地面に座り込んだ。
今まで、告白するのに、こんなに勇気がいるなんて知らなかったー。
智樹が一般人なら、告白だって普通にできたのかな……?




